【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

報告

『え…？　奥さんが…　倒れた…？…』

俺は、出社する時間を待って、会社へ連絡した。

『奥さんが…？真由さんが…か…？倒れただって…？』

主任が震える声で、俺の報告を復唱する。

『はい…　昨夜、自宅で倒れ…今…病院に入院していまして…』

『はあ…　そ…　それで…大丈夫なのか…真由さんは…何かの、病気…なのか…？あ…いや…差し支えるなら理由は言わなくていい…』

主任の声が段々と小さくなっていく…。
詳細はもちろん、言えるわけがない…差し支えるに決まっている…。

妻が薬を大量に服用し、自殺を図りました…でも未遂に終わり、
それで今、昏睡状態です…などと、どの口が言えようか…。
『　それは…　…　…』
俺は無言になる…。

真由はもともとこの会社にいた社員で、とても人気があった。

あの美貌とスタイルの良さ…
そして、持ち前の明るさ…天真爛漫な性格…
男性社員はもちろん、女子社員にも…　好かれていた…

よく言えば人気者…少し悪く言えば、人たらし…

真由と知り合った人間はことごとく、真由のことを好きになると言っても過言ではない…。

俺ももちろんそうだったし、この主任も、しかりだ…。
真由と俺が二人揃って結婚報告をした時の、主任の驚いた顔と言ったら…

そして俺はすぐに気づいた…

俺と真由を交互に見つめる主任の目に見え隠れする、嫉妬心のようなもの…
決して驚きだけではない…　間違いなく、妬みのような目の光…

いや…それは過去の話だ…　今はとにかくも、報告だ…。