【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

愚痴

「はあぁ…　ご馳走様でした～　ほんと、美味しかった～　」
真由が満面の笑みで、隣に座る哲也を見上げる。

「本当に、美味しかったです。ここって、あのいつも行列ができてる店ですよね…？」
俺も箸を置いて哲也に声をかける。

「…そうそう…今日見たらたまたま列が短かったから、この程度なら待てるなと思ってね…確かに美味いね。二人に喜んでもらえて良かったよ。」

哲也はにこりと微笑んだ後、ゆっくりと赤ワインを口に運んだ。

「そういえば…　清春君、仕事の方はどうなんだい…？真由に聞いたけど、毎日遅くて大変みたいだね…身体の方は大丈夫なのかい…？」

真由が、俺の帰りが遅いと哲也に話しているのだろう…。
哲也にそんなことを聞かれるのは初めてのことだった。

でも、仕事が繁忙なのは事実だ…　
人の仕事まで背負っているため、とても定時に帰れる状況にはない。

ただ、英会話の日…

週に2日の教室の日だけは、違う…。
俺は自分の意志で、自分の心の安らぎのために、茉優子と食事に行っている…。

「ええ…そうなんです…ちょっと最近忙しくて…比較的帰りは遅いですね…」

帰りが遅い理由が純粋に仕事だけとは言えないため、心なしか語尾が小さくなっていく…

「お兄ちゃん聞いてよ！清春さん、普段は仕事大変なのはわかるけどさ…英会話の日はとっても楽しそうなの…い～な～真由は家で　ぼっちなのにな…」

真由が口をとがらせておどけたように言いながら俺に笑いかける。
普段は直接俺にそんなことを言わない真由…。

きっと、傍に兄の哲也がいるから俺には面と向かって普段言えない愚痴を、言いやすいのだろう…。