【完結・R18】鉄道の恐怖

もえこ

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清春編

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「あ…清春さん…?お帰りなさい…びっくりしちゃった!今日は早いのね…!」
「ただ…いま、…真由…」
「ああ…お帰り、清春君… お邪魔してます。」

真由の横に座っていたのは…やはり、真由の兄、哲也だった。

亭主の留守中に知らぬ男が家に上がり込んでいるというのは、不倫などでもない限り通常考えにくい。

玄関で男物の靴に気付いた瞬間から、哲也ではないかと察しがついていた。

「こんばんは。お兄さん…」

俺はリビングで、ソファに真由と並んで座っていた哲也にお辞儀をして、まず真っすぐに自室へ向かった。

また、兄が来ている…。
もしかしたら、俺の教室の日に、かなりの頻度で来ていたりするのだろうか…

ネクタイを取り去り、部屋着に着かえようかとも思ったが、哲也がいる手前、
あまりだらしのない格好で出て行くのは良くないと思った。

取り敢えずシャツのままがいいか… 
そう考え直してリビングへ戻り、2人を横目に冷蔵庫から2リットルのお茶のペットボトルを取り出し、コップに注ぐ。

「清春さん…英会話教室には行ったの?夕飯は…食べて来た?それともまだ…?」
真由が俺の方に首を向けて声を掛けてくる。

「ああ…教室には行ったけど、今日は食べずに帰って来たんだよ…」
何か食べる物あるかな…という言葉を、口に出す前に寸前で飲み込む。
真由にそんなことを言ったところで、期待できない…
そもそも哲也がいることで、言いづらいこと、この上なかった…。

「清春君…実は俺の職場近くにある中華料理の店の、美味しいと評判の餃子を買ってきたんだ…
チャーハンもあるし、一緒に食べないかい…?俺達も食事はまだなんでね…ついさっき来たばかりで…」
「そうなんですか…ありがとうございます…」

哲也の、俺達…という言葉に、少しの違和感を覚えた…。
俺達…
つまり、哲也と真由だ… 二人は両親がいない、たった二人きりの肉親…
わかる…わかるのだが…  なんとなく…
俺が蚊帳の外のように感じた… 

いや…そんな風に思う俺の方が、心が狭いというか、おかしいのかもしれない…。

「今から準備するね!待ってて、お兄ちゃん、清春さん」

真由は明るくそう言って立ち上がり、鼻歌を歌いながら、いそいそと皿を準備し始めた。


















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