【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

声

「はあ…美味かった…」

手作りの食事に飢えていた俺は、久々に温かな食事をゆっくりと楽しんだ。

「ここは、リピート決定だな…」

ああ…また、独り言が…。

ふと、窓の外を見ると、
やけに身体を密着して歩く恋人同士や、仕事帰りのサラリーマンの群れ…楽しそうに笑いながらじゃれつく学生達…

皆…それぞれに生活を楽しんでいるように、俺の目には映る。

食後の珈琲を飲みながら、俺はしばらくぼうっと外を眺める…。

ああ…　真由のことはもちろん好きで、結婚した…。

可愛くて奔放で、なにより元気いっぱいの真由…
会社でも人気者で、仕事も普通にでき、将来も有望視されていたほどだ。

なのに、あっさりと寿退社をし、家庭に入ってしまった…。

結婚したら俺の生活のサポートをする、料理も掃除も全て頑張ると、最初の頃は目をキラキラさせながら意気込んでいた真由だが、ふたを開けば…。

料理をすること自体好きではなく、掃除なんてもってのほか。
洗い物はほぼ、テーブルに放置…良くてシンクの中、だ。　

洗濯だってそうだ。
なんとか洗濯機を回すことはできるが、その後は洗濯物が洗濯槽の中に放置されていることだってある。

「はあっ…　…」

結婚は…　
好きな人と一生を共に…暮らす…結婚という形態は…　
もっと幸せなものだと、俺は、思っていた…。

好き…　？　

そもそも俺は…　　本当に真由のことを、好きなのだろうか…　…

「…あの…　　すみません…　」

「…　…　…」

「あの、すみません…今何か、落とされましたよ…」

少し遠くで女の声…が、した。