【完結・R18】鉄道の恐怖

正体

「まあ、落ち着いてください…時間はまだまだたっぷりあります…もう少し飲みます…？」言いながら、男が私にワインを瓶ごと、差し出す。

「…もう…大丈夫です…」…ワインなど…もはや喉を通るはずもない…。

喫茶店のときと同様、男が長い脚を、大仰に組み直す。

「…では、そろそろ私自身の話をしましょうか…。
もうなんとなく、察しがついているかもしれませんがね…」

男が言葉を切って、私を探るように見る。

実のところ、私はまだ、この男の正体にたどり着いていない。
ただ、この男が清春の妻である真由を、とても大事に思っているということだけは、嫌でもわかる。

ひょっとしたら、真由とずっと前から付き合いのある親しい友人の一人…
いや…違う…。
もっと…真由に対してもっと深い…愛情のようなものを感じる…

もしかしたら…真由が過去に付き合っていた恋人みたいなものか…もしくは真由のことを一方的に好いている男…

そのような存在であるような…そんな気がした。
とにかくこの男が…真由にとっての絶大的な味方…きっとそれは間違いない…。


まだ、私が考えている最中に、男は突如、口を開いた。

「私は…真由の兄。

　…真由は７つ下の、私の可愛い妹です」


真由と…この男が…兄弟…？　兄…と、妹…　

…なぜだか…意外な気がした。

親族だとは思っていなかった…ただ、理解はできた。


真由がこの男に、清春とのことを…私生活だけではなく性生活についてまで、細やかに相談したこと…
この男が、真由のことのみならず、清春の職場やオフの時間の過ごし方…習い事に至るまで、熟知していたこと…

さらに、清春の性格的部分まで、細かく把握していたこと…


全て…つながった気がした。

　　　　ただ…少しの違和感を残して…