ある女の苦悩

もえこ

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夫婦

夫の安堵

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パタン…

静かに、寝室のドアが閉まった。

妻が、俺の返答を受けて、静かに頷き、部屋を出て行った。

俺は、妻の姿がドアの向こうへ消えてしまったことに、心の底から安堵する。

どちらかと言えば性に消極的な妻が、
ありえないことだが、仮に服を脱ぎ俺の上にのしかかってきても、俺のそれは役に立たなかった可能性がある。
いや、きっとそうに違いない…。

俺の身体は一体、どうしてしまったのだろうか…
最近全く、妻に…妻の身体に、興奮しなくなっていた。
わざわざ妻を誘って、抱きたいとは思わない… 思えないのだ… 

年齢によるものか… 
いや、だがしかし、まだ30代後半だ…
完全にそのような欲が枯れ落ちるにはまだ、かなり早い気がする。
まさか、… …  この歳で… ?

男としての不安が頭をよぎるが、必死にその考えを振り払う。

やはり、疲れがたまり過ぎているのかもしれない。

しかし、先ほどの妻の表情には驚いた。

一瞬、泣き出しそうにも見えたほどに、悲しみが…その表情から見て取れた。

表現しようもない罪悪感のような感情が俺の胸の中に渦巻きそうになるのを、必死に抑える。

ごめん… 
すまない…

仕事が落ち着くまで、もう少し… 待ってくれ…

仕事が落ち着けば… 繁忙な時期を乗り切れば…
そうすればきっと、俺も…前のように戻るはずだ…

俺は脳内でそんなことを考えながらも、妻の出て行ったドアを、静かに見つめた…。

今思えば、この日を境に妻は変わったのだ…
この夜、身体の調子はともかくも何とか妻の誘いに応じていれば何かが変わったのだろうか…

俺は後になって、そんなことを思うようになった。











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