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~答え~
パーセント
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ワインは甘めの白ワインだった。
私の好みに合わせて杉崎さんが選んでくれたに違いない。
「美味し…」私は独り言のように、呟く。
「そういえば、水無月さん…今日はどうだった?一日…」
不意に、杉崎さんに尋ねられる。
杉崎さんは、私が部屋に来た時には荷物で塞がれていた椅子に、長い脚を組んで腰かけていた。
最初にベッドに座るように促された時、杉崎さんと横並びになるかもと一人でドキドキしていたが違った。
「…今日、凄く…勉強になりました…でも緊張しっぱなしで…リラックスはできなかったですね、やっぱり…」
「そうだね…見ててわかったよ、最初の方、ちょっとぎくしゃくしてたよね?でも後半は打ち解けてすごく頑張ってたよね?広告の意見とか、出していたし」
「いえ、全然…実はあれでも、言いたいことの3割くらいしか、言えてません…デザインとか色々、気になるところあったんですけど…自信をもって発言できなくて…ちょっとそこが、まだまだだなっ、て…」
「そうなの…?それなら会社に持ち帰って、その残りの意見、是非ミーティングの時にでも、それか書面でもいいから挙げてみて?まだ期限まで間に合うし、思ってることは全て言った方がいいよ、全て絞り出してから、揉んでからの結論が、成功の秘訣…仕事ではね?」
「はい… ありがとうございます…。そうします」
仕事ではというより…プライベートですら、
私は思っていることを100パーセント、出したことがない。
家族に対しても…
長年付き合ってきた拓海に対しても…100パーセントではない…
いつもどこか、気を遣っている…
自分の言いたいことを飲み込んで、なんとなく我慢する癖が、身についてしまった。
それが私であり、この歳になっても、なかなか変わらない…
ある意味で…いや、完全に…マイナスの性格だとは思うが、自分では変えようもなく、どうしようもない…。
「…あとさ、あれは、大丈夫だった…?」杉崎さんが言葉を続ける。
あれとは、なんだろう…
思い当たることがなく、私は思わず首を傾げて杉崎さんを見る。
「あれって… …?」
「ああ…あの、近藤って、人…」
「近藤…さん… ですか… 」
近藤さんは私と一つしか年が変わらない男性社員。
普通に、親切な男性だった。
廊下でキョロキョロしていると、どうしたの、迷った?と声を掛けてくれたり、会社の案内を笑顔でしてくれたり…
大丈夫とは…? 私は今日一日の行動を振り返る。
でも、一つだけ思い当たることがある…あった…
もしかして… 杉崎さんは…
たびたび彼が、私の身体に触れてきたことを、言っているのかもしれないと、そう思った…。
「あの男、やたら水無月さんの身体に触れてなかった…?肩とか、色々…飲み会の席も隣だったし…大丈夫だったかなって…ごめん、後になって…」
やはり、そのことか… それしか、思い浮かばなかった。
私の好みに合わせて杉崎さんが選んでくれたに違いない。
「美味し…」私は独り言のように、呟く。
「そういえば、水無月さん…今日はどうだった?一日…」
不意に、杉崎さんに尋ねられる。
杉崎さんは、私が部屋に来た時には荷物で塞がれていた椅子に、長い脚を組んで腰かけていた。
最初にベッドに座るように促された時、杉崎さんと横並びになるかもと一人でドキドキしていたが違った。
「…今日、凄く…勉強になりました…でも緊張しっぱなしで…リラックスはできなかったですね、やっぱり…」
「そうだね…見ててわかったよ、最初の方、ちょっとぎくしゃくしてたよね?でも後半は打ち解けてすごく頑張ってたよね?広告の意見とか、出していたし」
「いえ、全然…実はあれでも、言いたいことの3割くらいしか、言えてません…デザインとか色々、気になるところあったんですけど…自信をもって発言できなくて…ちょっとそこが、まだまだだなっ、て…」
「そうなの…?それなら会社に持ち帰って、その残りの意見、是非ミーティングの時にでも、それか書面でもいいから挙げてみて?まだ期限まで間に合うし、思ってることは全て言った方がいいよ、全て絞り出してから、揉んでからの結論が、成功の秘訣…仕事ではね?」
「はい… ありがとうございます…。そうします」
仕事ではというより…プライベートですら、
私は思っていることを100パーセント、出したことがない。
家族に対しても…
長年付き合ってきた拓海に対しても…100パーセントではない…
いつもどこか、気を遣っている…
自分の言いたいことを飲み込んで、なんとなく我慢する癖が、身についてしまった。
それが私であり、この歳になっても、なかなか変わらない…
ある意味で…いや、完全に…マイナスの性格だとは思うが、自分では変えようもなく、どうしようもない…。
「…あとさ、あれは、大丈夫だった…?」杉崎さんが言葉を続ける。
あれとは、なんだろう…
思い当たることがなく、私は思わず首を傾げて杉崎さんを見る。
「あれって… …?」
「ああ…あの、近藤って、人…」
「近藤…さん… ですか… 」
近藤さんは私と一つしか年が変わらない男性社員。
普通に、親切な男性だった。
廊下でキョロキョロしていると、どうしたの、迷った?と声を掛けてくれたり、会社の案内を笑顔でしてくれたり…
大丈夫とは…? 私は今日一日の行動を振り返る。
でも、一つだけ思い当たることがある…あった…
もしかして… 杉崎さんは…
たびたび彼が、私の身体に触れてきたことを、言っているのかもしれないと、そう思った…。
「あの男、やたら水無月さんの身体に触れてなかった…?肩とか、色々…飲み会の席も隣だったし…大丈夫だったかなって…ごめん、後になって…」
やはり、そのことか… それしか、思い浮かばなかった。
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