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~二人きり~
夢物語
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「いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました。ご予約のお客様でいらっしゃいますか?」
丁寧な口調で、フロントの女性が尋ねてくる。
「はい。杉崎と水無月で、二部屋予約しているかと…」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ。」
女性がにこやかに微笑み、続けて軽やかに端末を操作する。
ふと、その間に…浮かんだこと…
頭の中だけで考えてしまったことがある。
よくある、よく見る、シチュエーションだ…。
・・・・
お客様…大変申し訳ありませんが、お部屋が一つしか…ご予約、できていないようですが…
え… っ !?
あの… … 様、おひとり分…ツインの一室のみ、ご準備できている状況です。
ええ …!?嘘… 冗談、ですよね… ?
いえ… 冗談ではございません…
大変申し訳ありませんが、予約システム上、そうなっているようで…ご予約時の、何らかのトラブルか…手違いでしょうか…?あの…どういたしましょう…?
…どう、いたしましょうって…いきなり、そんなこと、言われても…
あ… あ、の…他に… 部屋は空いていないんでしょうか…?
シングルでも…この際、ダブルでも… 取れたら、どんな部屋でもいいんですけど…
…はい… 至急、お調べします…!少々、お待ちくださいね…
あ… 大変、申し訳ありませんが…他はあいにく、全て満室となっております…
え… !? … そ、んな…
可能であればですが、… … 様のお部屋にご一緒にお泊まりいただくか… もしくは…
ええ…!!? 一緒に…!!それは無理です… だって、異性です、よ…そんな…
あの…なんとかならないんですか…?どんな小さな部屋でも、エレベーター横の騒がしい部屋でも何でも…
お客様…大変申し訳ありませんがやはり…空いておりません…
大変申し訳ないという、お決まりの謝罪の言葉…深々としたお辞儀…
これで、何度目だろうか
…ただ、無理なものは無理らしい…
登場人物は、この場面で二人、困惑して顔を見合わせる…。
そして大抵、その二人…その男女は仕方なく、どちらかが他のホテルへ行くという手段はなぜか考えずに、
同じ部屋で一夜を過ごすことに…
そこで二人はぎこちなくも、接近し… 場合によっては、男女の関係になる…
そんな展開のドラマや漫画…小説を見るたびに、現実にあるわけない、夢物語だって…
そんな風に思っていた…。
だって、どんな手違いをしたら、一部屋しか取れていない事態になるんだろう…
たとえば出張で、会計課がからんでいるようなホテルの手配の場合、当然事前の決裁もあるだろう…
出張者が二人いて、一部屋取り損ねるなんて、およそあり得ない…
そんなことを思いながらも、あくまでフィクションだからと思いながら皆、展開を楽しんでいるだけだ…
・・・・・・・
でも、現実は…
「大変お待たせいたしました。確かにご予約承っております。お二人それぞれ、こちらに署名をお願いします。」
ほらね…きちんと二部屋分、予約は取れている…
だから、好きな人と突然同じ部屋に泊るシチュエーションなんて、架空の話だ…
「隣の部屋みたいで良かったね、さ、上がろう… 」
「はい… 」
妄想は、頭の中だけに…
私はそう自分に言い聞かせながら、エレベーターに乗り込んだ…。
丁寧な口調で、フロントの女性が尋ねてくる。
「はい。杉崎と水無月で、二部屋予約しているかと…」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ。」
女性がにこやかに微笑み、続けて軽やかに端末を操作する。
ふと、その間に…浮かんだこと…
頭の中だけで考えてしまったことがある。
よくある、よく見る、シチュエーションだ…。
・・・・
お客様…大変申し訳ありませんが、お部屋が一つしか…ご予約、できていないようですが…
え… っ !?
あの… … 様、おひとり分…ツインの一室のみ、ご準備できている状況です。
ええ …!?嘘… 冗談、ですよね… ?
いえ… 冗談ではございません…
大変申し訳ありませんが、予約システム上、そうなっているようで…ご予約時の、何らかのトラブルか…手違いでしょうか…?あの…どういたしましょう…?
…どう、いたしましょうって…いきなり、そんなこと、言われても…
あ… あ、の…他に… 部屋は空いていないんでしょうか…?
シングルでも…この際、ダブルでも… 取れたら、どんな部屋でもいいんですけど…
…はい… 至急、お調べします…!少々、お待ちくださいね…
あ… 大変、申し訳ありませんが…他はあいにく、全て満室となっております…
え… !? … そ、んな…
可能であればですが、… … 様のお部屋にご一緒にお泊まりいただくか… もしくは…
ええ…!!? 一緒に…!!それは無理です… だって、異性です、よ…そんな…
あの…なんとかならないんですか…?どんな小さな部屋でも、エレベーター横の騒がしい部屋でも何でも…
お客様…大変申し訳ありませんがやはり…空いておりません…
大変申し訳ないという、お決まりの謝罪の言葉…深々としたお辞儀…
これで、何度目だろうか
…ただ、無理なものは無理らしい…
登場人物は、この場面で二人、困惑して顔を見合わせる…。
そして大抵、その二人…その男女は仕方なく、どちらかが他のホテルへ行くという手段はなぜか考えずに、
同じ部屋で一夜を過ごすことに…
そこで二人はぎこちなくも、接近し… 場合によっては、男女の関係になる…
そんな展開のドラマや漫画…小説を見るたびに、現実にあるわけない、夢物語だって…
そんな風に思っていた…。
だって、どんな手違いをしたら、一部屋しか取れていない事態になるんだろう…
たとえば出張で、会計課がからんでいるようなホテルの手配の場合、当然事前の決裁もあるだろう…
出張者が二人いて、一部屋取り損ねるなんて、およそあり得ない…
そんなことを思いながらも、あくまでフィクションだからと思いながら皆、展開を楽しんでいるだけだ…
・・・・・・・
でも、現実は…
「大変お待たせいたしました。確かにご予約承っております。お二人それぞれ、こちらに署名をお願いします。」
ほらね…きちんと二部屋分、予約は取れている…
だから、好きな人と突然同じ部屋に泊るシチュエーションなんて、架空の話だ…
「隣の部屋みたいで良かったね、さ、上がろう… 」
「はい… 」
妄想は、頭の中だけに…
私はそう自分に言い聞かせながら、エレベーターに乗り込んだ…。
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