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~杉崎~
機内
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「えっと… ここかな、席は… 水無月さん…窓側と手前、どっちがいい…?」
「あ、どちらでも…大丈夫です…」
同じ列の中央の通路側に、既に若い男が脚を組んで座っているのを見て、俺は彼女に窓側を促した。
「じゃあ…奥に、座ってもらってもいいかな?」
「はい。」
彼女は素直に頷き、奥の窓側の席にゆっくりと座った。
俺は無言で彼女の横の席に腰掛ける。
「… … … 」
座った途端、横からふわりと香る…彼女のいつもの、花のような香り。
香水だろうか…
主張し過ぎない、淡く、ささやかな香り…好きな香りだな… 俺はゆっくりと目を閉じる。
ふと、あの社員旅行の日のことを…思い出した…。
あの日、バスの中で…俺は彼女の手を握った…。
しかも、握っていいか?などと、伺うこともせず…
本当に自分勝手に、いきなり、彼女の手に触れて、その手をぎゅうと…握り締めた。
さっきのカフェの時のように…
彼女はビクンと一瞬、震えるような動きを見せたものの…
無理に俺の手を振り払おうとはせずに、そのまま…顔を赤くしながらも…
静かに、俺の好きにさせてくれたんだった…。
彼女はもしかしたら性格的に、押しに…ものすごく、弱いのかもしれない…
拓海という男は、見るからに強気で、強引そうな男だ…
想像できる…。
間違いなく、交際もあの男からの申し出なのではないか…
事実はどうであれ、彼女の控えめな性格が、俺にそう思わせた…。
だが、俺も…奴と変わらないのかもしれない… 思えば最初からだ。
あの、彼女が入社してすぐに開催された歓迎会の夜も…
彼女が主任にセクハラ発言を受けて泣きそうになっているのを見ていられず、俺がしたこと…。
本当は、自分でも驚きだった…。
俺は、かなり強引に…固まるように立ったままの彼女の華奢な手を、引いた…。
「あ、どちらでも…大丈夫です…」
同じ列の中央の通路側に、既に若い男が脚を組んで座っているのを見て、俺は彼女に窓側を促した。
「じゃあ…奥に、座ってもらってもいいかな?」
「はい。」
彼女は素直に頷き、奥の窓側の席にゆっくりと座った。
俺は無言で彼女の横の席に腰掛ける。
「… … … 」
座った途端、横からふわりと香る…彼女のいつもの、花のような香り。
香水だろうか…
主張し過ぎない、淡く、ささやかな香り…好きな香りだな… 俺はゆっくりと目を閉じる。
ふと、あの社員旅行の日のことを…思い出した…。
あの日、バスの中で…俺は彼女の手を握った…。
しかも、握っていいか?などと、伺うこともせず…
本当に自分勝手に、いきなり、彼女の手に触れて、その手をぎゅうと…握り締めた。
さっきのカフェの時のように…
彼女はビクンと一瞬、震えるような動きを見せたものの…
無理に俺の手を振り払おうとはせずに、そのまま…顔を赤くしながらも…
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