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〜二人〜

余裕

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       「… … …」

私は杉崎さんに抱き締められたまま無言で…後ろを振り向くことも出来ずにいた。

緊張で…心臓の音が鳴り止まない…。
   ドクンドクンと…うるさいくらいに…

「水無月さん…こっち、…向いて…」

すぐ後ろから…杉崎さんの掠れたような低い声。
私を抱きしめている腕の力が、私を解放するかのように、少しだけ緩む…。

「は…い…」

ゆっくり振り向いて、…上を見上げる。
杉崎さんと眼が合う…

 眼鏡越しに…綺麗で…真っ直ぐな瞳が私を射抜くように見つめていて…まともに見ていられない…。
身体が…熱くなっていく…。

「杉崎さん…あの…私…」

「…何…? まさか…もう、帰りたい…?…」

杉崎さんが私をゆったりと抱きしめたまま、ふわりと笑って、私を見下ろす。

   良かった…いつもの杉崎さんだ…。

デッキで話したあたりから…なんとなくいつもよりも無口になってしまった杉崎さん…
いつもと違う杉崎さんの雰囲気に、私は密かに緊張していた…。

「いえ…そんな…こと…帰りたいだなんて…」
私が慌てて言いかけると

「もう…無理だけどね…さっき予告したはずだ…今ならまだ逃げられるよって…でも、そのままここへ来るなら、もう…逃さないってね?… …」

    しばしの、沈黙…。

穴が開きそうなほどに…杉崎さんに見つめられて、恥ずかしくなる…。

「…キス、…していいかな…?」

また…律儀に丁寧に…杉崎さんが尋ねてくる…。

面と向かってそんな風に聞かれると恥ずかしい…
こんなところまでついてきて…キスが…嫌だなんて…ダメだなんて…言うはずがないのに…。

私は思わず、クスリと笑ってしまう…。

「…ん…なに…?」杉崎さんの不思議そうな顔。

「いえ…杉崎さんはやっぱり、杉崎さんだなあって…思って…あの…聞かなくていいです…
…キスして…  … ください…  私もして欲し…  んっ…!」

突然、顎を指でクイッとあげられ、唇を塞がれる…

「んう…っ …ん… っ 」熱い… 

熱すぎる杉崎さんの唇…塞がれて息ができない…。


でもすぐに、杉崎さんの唇が離れる…

    私は驚いて、上を見上げる。

突然やめるなんて、どうしたんだろう… 

そして私は今…どんな顔を…していただろう…

唇を離された瞬間、寂しくなった…
だからもしかしたら…
物欲しげな…いやらしい顔をしていたかもしれない…

それほどに…幸せな瞬間、…だった…

「…笑う…なんて…水無月さんは…意外と余裕なんだね…それならもう、遠慮…しないよ…これからは俺のしたいようにするけど…   いいかな…?」

情欲に濡れた目で、私を見下ろす杉崎さん…

私の身体の中心が…
びくんと、疼いた…そんな、気がした。 

でも、余裕なんてある筈もない…私はただ…こんな時でも優しく律儀な杉崎さんが可愛くて…愛しくて…

わけを説明をしようと、慌てて口を開く…

「笑ったりしてごめんなさい…でもっ、余裕なんて、なっ… あっ…」

杉崎さんの手が…私の左胸にそっと触れる…。

まだ…触れただけ…

    でも…でも… やっぱり驚く…

「水無月さん…俺もこう見えて男…なんだよ…もう無理だ…我慢できない…君の全てに…触れたい…」

ぐっと…揉むように、少しだけ荒い手つきで触られ

    「あっ…ん、…」

     私は小さく、叫んだ。



















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