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~二人~
昼食
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杉崎さんとは、職場では顔を合わせていたものの、その後、深い話はせずに数日が経過した。
いよいよ、約束の土曜日…
杉崎さんとのクルーズディナーを翌日に控えた週末のお昼に、突如主任が、愛妻弁当の卵焼らしきものを口に放り込みながら杉崎さんに話を振ってきた。
「そうそう、杉崎君!例のチケット…!使うあてはありそうか…?いや、…もう水無月さんの手に渡ったのかな…?」
私はドキリとする。
杉崎さんもそうに違いないが、杉崎さんはいたって普通の表情を維持したまま、ゆっくりと口を開く。
まさに明日がその日だ…
どのように答えるつもりなのか…聞かれてもいない私の方がドキドキしてくる。
「ああ…!そうそう、お伝えするべきでした。
主任…、チケット本当にありがとうございます。水無月さんも行ったことがないそうで…でも俺も興味があったので、明日、思い切って二人で行ってみようと話していたところです。ね…?水無月さん…!」
杉崎さんに突然、話を振られて驚く。
ウインナーごと、お箸を取り落としそうになった。
「はっ…はい!…そうでした!
しゅ…主任…!ありがとうございます。楽しみ…に、してました…明日行ってきます。」
無駄に、声が大きくなる…。
日本語も幾分おかしい気がするが口に出た後だ…
もう遅い…。
杉崎さんと違って、心の準備も、大人の余裕もない私のおかしな返答…主任の目には、かなり挙動不審に…映ったかもしれない…。
「おお!!そうなのかそうなのか…!そりゃ!良かったよ…!豪華な食事付きだし、使わないならそれはそれで少しもったいないなと思ってさ…聞いただけだよ。そうか!まさに明日か…!いいな~」
「はい。とても楽しみです…写真、撮ってきますね、景色が良ければ…」杉崎さんがいたって普通に答える。
「うんうん、よろしく頼むよ。」
少し間を置いて、主任が笑いをこらえるようにして続ける。
「いやーーしかしさ…
普通に、休みの日に杉崎くんと水無月さんが…船上でディナーなんてさ!面白いな…。もしも誰かに運悪く目撃されたら…速攻で噂が立つな…!
あいつらデキてるのか…!?あの歳の差でまさか…!ってな・・・!ははは!」
… … …
私はつい…無言になる。
確かに見られたら、まさか・・・の、まさかの噂…事態になる…だろう。
たちまち、人事の細野さんみたいな…人が…遠距離ではあっても、すぐに、彼女である林さんの耳に届けるに違いない…。
「… …」
私の表情を察してか、話を聞いていた石田さんが助け舟・・・みたいなものを出してくれる。
「いやいや…水無月さん…そんな顔しないで…大丈夫だよ…!ここの皆はさ…事情、わかってるんだし…」
石田さんが続ける。
「例の水無月さんの長年付き合ってる彼氏にはさ、ばれないように…いや、むしろ堂々と話して大丈夫だよ。なんか変なことになって必要とあらば、俺も割って入ってきちんと説明するからさ!はははっ…」
石田さん…
私の暗い表情を…そういう意味に取ったようで、必死にフォローしてくれようと笑う石田さんに、胸が痛んだ。
杉崎さんが最後に、まとめる…。
「明日、二人で行ってきて、来週報告しますね!もしかしたら場合によっては、社員の懇親会にも利用できるかもですし…。」
主任も答える。
「そうだな…確かに!
ま、明日はゆっくり楽しんでおいで。水無月さんも深く考えずにな!」
「はい…ありがとうございます。」
私は複雑な気持ちを抱えながら、
震えるようにして、お弁当箱の蓋を閉めた。
いよいよ、約束の土曜日…
杉崎さんとのクルーズディナーを翌日に控えた週末のお昼に、突如主任が、愛妻弁当の卵焼らしきものを口に放り込みながら杉崎さんに話を振ってきた。
「そうそう、杉崎君!例のチケット…!使うあてはありそうか…?いや、…もう水無月さんの手に渡ったのかな…?」
私はドキリとする。
杉崎さんもそうに違いないが、杉崎さんはいたって普通の表情を維持したまま、ゆっくりと口を開く。
まさに明日がその日だ…
どのように答えるつもりなのか…聞かれてもいない私の方がドキドキしてくる。
「ああ…!そうそう、お伝えするべきでした。
主任…、チケット本当にありがとうございます。水無月さんも行ったことがないそうで…でも俺も興味があったので、明日、思い切って二人で行ってみようと話していたところです。ね…?水無月さん…!」
杉崎さんに突然、話を振られて驚く。
ウインナーごと、お箸を取り落としそうになった。
「はっ…はい!…そうでした!
しゅ…主任…!ありがとうございます。楽しみ…に、してました…明日行ってきます。」
無駄に、声が大きくなる…。
日本語も幾分おかしい気がするが口に出た後だ…
もう遅い…。
杉崎さんと違って、心の準備も、大人の余裕もない私のおかしな返答…主任の目には、かなり挙動不審に…映ったかもしれない…。
「おお!!そうなのかそうなのか…!そりゃ!良かったよ…!豪華な食事付きだし、使わないならそれはそれで少しもったいないなと思ってさ…聞いただけだよ。そうか!まさに明日か…!いいな~」
「はい。とても楽しみです…写真、撮ってきますね、景色が良ければ…」杉崎さんがいたって普通に答える。
「うんうん、よろしく頼むよ。」
少し間を置いて、主任が笑いをこらえるようにして続ける。
「いやーーしかしさ…
普通に、休みの日に杉崎くんと水無月さんが…船上でディナーなんてさ!面白いな…。もしも誰かに運悪く目撃されたら…速攻で噂が立つな…!
あいつらデキてるのか…!?あの歳の差でまさか…!ってな・・・!ははは!」
… … …
私はつい…無言になる。
確かに見られたら、まさか・・・の、まさかの噂…事態になる…だろう。
たちまち、人事の細野さんみたいな…人が…遠距離ではあっても、すぐに、彼女である林さんの耳に届けるに違いない…。
「… …」
私の表情を察してか、話を聞いていた石田さんが助け舟・・・みたいなものを出してくれる。
「いやいや…水無月さん…そんな顔しないで…大丈夫だよ…!ここの皆はさ…事情、わかってるんだし…」
石田さんが続ける。
「例の水無月さんの長年付き合ってる彼氏にはさ、ばれないように…いや、むしろ堂々と話して大丈夫だよ。なんか変なことになって必要とあらば、俺も割って入ってきちんと説明するからさ!はははっ…」
石田さん…
私の暗い表情を…そういう意味に取ったようで、必死にフォローしてくれようと笑う石田さんに、胸が痛んだ。
杉崎さんが最後に、まとめる…。
「明日、二人で行ってきて、来週報告しますね!もしかしたら場合によっては、社員の懇親会にも利用できるかもですし…。」
主任も答える。
「そうだな…確かに!
ま、明日はゆっくり楽しんでおいで。水無月さんも深く考えずにな!」
「はい…ありがとうございます。」
私は複雑な気持ちを抱えながら、
震えるようにして、お弁当箱の蓋を閉めた。
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