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〜2人の距離〜
気持ち
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「水無月さん!こっちこっち!」
自宅近所の居酒屋に入ると、杉崎さんの声。
店内、一番奥の目立たない半個室席に座っていた彼が少し通路に顔を出し、私に手を振る。
「あ…お疲れ様です。すみません、お待たせして…」
実は仕事が終わってすぐに、人事の細野さんに会い、話しかけられて少し時間を割いてしまった。
急ぐことに気付かれでもして、その後の予定を聞かれたり勘繰られたりしたくなかったから、急ぐ素振りをせず、普通に受け答えをした。
すぐに杉崎さんに一報しこちらに向かったが、待ち合わせ時間を10分ほど過ぎてしまっていた。
「これくらい全然いいよ。仕事で何かあったとかじゃないよね?」
少し気になったらしく、杉崎さんに聞かれる。
「いえ、そんなんじゃないです。会社を出ようとしたら細野さんに会って…すみません、すぐには抜け出せず…でした」私がそう答えると、
「ああ!細野さんか!…彼女はかなりお喋りだからそれは仕方ないね…俺もよく、捕まる…なんて言ったら怒られそうだけど…。そういえば君らは、同世代だよね? …んー…でも、タイプは全然違うか…。」
杉崎さんが笑いながら私にメニューを差し出す。
「さ…まずはお酒を選んで…あとは適当に好きなものを…」
その後、杉崎さんは私の希望を聞きつつ、スマートに飲み物と食べ物を見繕って注文する。
注文を取りに来た女性店員さんがメモをしつつも、杉崎さんをチラチラと見やる。
杉崎さんに見惚れているのが、雰囲気でわかる…。
対する杉崎さんはいたって普通。
いつも思うことだが、杉崎さんは自分がモテていることに無自覚だ…きっと、慣れているのだろう…
「さ…とりあえず乾杯…!名目は、社員旅行の無事の終了を祝って…で、良いかな?…かんぱい!」
カツンと、グラス同士が触れる音。
「はい…お疲れ様でした…!」
私は一口、カンパリオレンジを口にして、グラスを置く。甘く冷たい液体が喉を通っていく…美味しい…。
「さて…建前はいいとして、…水無月さん…最近ちょっと…大丈夫かなって…ごめんね、俺のせいか…そりゃ、俺のせいだよね?…あの夜、あんなこと…したから…。」
ゴトリと生ビールのグラスを置き、突然、杉崎さんが…真っ直ぐに私を見つめてくる。
半個室…周りに誰もいない…空間。
目を、職場の時のように逸らすことが出来なかった。
杉崎さんの眼鏡の奥の…綺麗な目が、妖しげな雰囲気をまとって…私を正面から射抜く…。
ぞくりとした…。
「あ…の…私…すみません…態度があまりに、あからさまでしたよね…どうしても、杉崎さんのことを…意識…、してしまってか…全然普通にできなくて…石田さんにすら…」
そこで、杉崎さんが吹き出す。
「…そうそう!あの、石田さんですら、君の異変に気付いたくらいだから…よほどだよ…ははっ」
「…ですよね?私も、このままの態度じゃいけないと、思ってしまいました…!」
杉崎さんが笑う…
私も笑う…
ああ…
やっぱり私は、好きだ…
この人の笑顔が…
くしゃっと笑う、この表情が…
隠しようもない…今この瞬間、私は…あなたが…
「…好き…」
気付けば、
声に…出ていた。
自宅近所の居酒屋に入ると、杉崎さんの声。
店内、一番奥の目立たない半個室席に座っていた彼が少し通路に顔を出し、私に手を振る。
「あ…お疲れ様です。すみません、お待たせして…」
実は仕事が終わってすぐに、人事の細野さんに会い、話しかけられて少し時間を割いてしまった。
急ぐことに気付かれでもして、その後の予定を聞かれたり勘繰られたりしたくなかったから、急ぐ素振りをせず、普通に受け答えをした。
すぐに杉崎さんに一報しこちらに向かったが、待ち合わせ時間を10分ほど過ぎてしまっていた。
「これくらい全然いいよ。仕事で何かあったとかじゃないよね?」
少し気になったらしく、杉崎さんに聞かれる。
「いえ、そんなんじゃないです。会社を出ようとしたら細野さんに会って…すみません、すぐには抜け出せず…でした」私がそう答えると、
「ああ!細野さんか!…彼女はかなりお喋りだからそれは仕方ないね…俺もよく、捕まる…なんて言ったら怒られそうだけど…。そういえば君らは、同世代だよね? …んー…でも、タイプは全然違うか…。」
杉崎さんが笑いながら私にメニューを差し出す。
「さ…まずはお酒を選んで…あとは適当に好きなものを…」
その後、杉崎さんは私の希望を聞きつつ、スマートに飲み物と食べ物を見繕って注文する。
注文を取りに来た女性店員さんがメモをしつつも、杉崎さんをチラチラと見やる。
杉崎さんに見惚れているのが、雰囲気でわかる…。
対する杉崎さんはいたって普通。
いつも思うことだが、杉崎さんは自分がモテていることに無自覚だ…きっと、慣れているのだろう…
「さ…とりあえず乾杯…!名目は、社員旅行の無事の終了を祝って…で、良いかな?…かんぱい!」
カツンと、グラス同士が触れる音。
「はい…お疲れ様でした…!」
私は一口、カンパリオレンジを口にして、グラスを置く。甘く冷たい液体が喉を通っていく…美味しい…。
「さて…建前はいいとして、…水無月さん…最近ちょっと…大丈夫かなって…ごめんね、俺のせいか…そりゃ、俺のせいだよね?…あの夜、あんなこと…したから…。」
ゴトリと生ビールのグラスを置き、突然、杉崎さんが…真っ直ぐに私を見つめてくる。
半個室…周りに誰もいない…空間。
目を、職場の時のように逸らすことが出来なかった。
杉崎さんの眼鏡の奥の…綺麗な目が、妖しげな雰囲気をまとって…私を正面から射抜く…。
ぞくりとした…。
「あ…の…私…すみません…態度があまりに、あからさまでしたよね…どうしても、杉崎さんのことを…意識…、してしまってか…全然普通にできなくて…石田さんにすら…」
そこで、杉崎さんが吹き出す。
「…そうそう!あの、石田さんですら、君の異変に気付いたくらいだから…よほどだよ…ははっ」
「…ですよね?私も、このままの態度じゃいけないと、思ってしまいました…!」
杉崎さんが笑う…
私も笑う…
ああ…
やっぱり私は、好きだ…
この人の笑顔が…
くしゃっと笑う、この表情が…
隠しようもない…今この瞬間、私は…あなたが…
「…好き…」
気付けば、
声に…出ていた。
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