106 / 538
~彼氏~
拓海の問い
しおりを挟む
「葉月、最近どうなん?仕事とか…」
帰省した拓海と空港で合流して、私たちは近くのイタリアンの店に入った。
トマトベースの魚介のパスタを口いっぱいに頬張りながら、拓海が私に尋ねてくる。
「うん…まあまあ、かな…最近やっと仕事にも慣れてきて、残業も減ってきたよ。」
「そっか…良かったな。あの…前に会った…えっと杉崎さんって人も、良くしてくれてんの…?」
「うん…すごく親切だよ、杉崎さんは。年の離れた優しいお兄ちゃんみたいな感じ、…」
拓海に杉崎さんの話題を振られて一瞬ドキリとしたものの、拓海に変に思われないようにサラッと答える。
週末にドライブしたことも、杉崎さんが熱を出した日にお宅を訪問したことも…当然のことながらわざわざ拓海には言っていない。
土日のことを聞かれていないから…だから拓海に話していないだけ…私はそう、自分自身に言い訳をしていた。
「おまえさ…先週の土日、何してたの?」
再び、ドキリと心臓がなる。唐突に聞かれた。私のパスタを巻くフォークの動きが不自然に止まってしまう。
「え…何って…えっと… なんで?」私のその問いに、
「いや…何となく… ただ、おまえが土日、俺になんもラインとか電話とかしてこねーの、珍しいなって思っただけだよ。なんか、忙しかったんか?」
…少し、本当は迷った…
土曜日に、杉崎さんと …車で社員旅行の下見に行った。
そこでお風呂に入り、お昼を食べて、仮契約を済ませて、帰った…
拓海にその事実を伝えるべきか、やはり迷った。
何故なら…後ろ暗いからに決まっている。そこでハプニングがあり…結果的に裸を見せ合い…帰ったのだから。
「あの、土曜日に、会社の人と社員旅行会の下見に行ってきたよ、幹事だからさ…日曜日は疲れで、家でだらっとしてたくらいかな…拓海は何してたの?」
その先、拓海に何も聞かれなければ、そのまま終わろうと思っていた。
でも、拓海はやっぱり…聞いてきた。
「ふーん、下見…?どこに‥?会社の人って何人かで?…」
… もう、いいや…隠しても仕方ないし、隠すと余計に怪しまれる、そんな気がした…
「んー… うん、あの、杉崎さんと二人で、車で、花咲温泉まで…行ってきた。そこで下見して仮予約してきた」
「…へえ…二人だけでか… そっか… 車で二人で… … 」
拓海が、よくわからない表情で、アイスコーヒを口にする。
「職場で家庭があったり子供がいたりで、他に行ける人がいなくて…で、私はひとりで暇だったし、かといって杉崎さんだけに頼むのも申し訳なくて…」
少し、言い訳がましいかな…なんて思いつつ、そう、口にする。
「そ…だな。まあ、おまえはフリーだし、仕方ないか、お疲れ…あ、俺はさ、週末だらだらしてただけだよ…」
そう言って、デザートのタルトにザクリとフォークを突き刺す拓海。
…目に見えて、少し不機嫌になったような気がしたために、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
それ以降その話題には一切触れずに、ランチを終えた。
その日の帰宅後、やっぱり言うんじゃなかったと、私は後悔することになる。
夜、拓海の…お昼には抑えて見せなかった感情が…むき出しになった。
帰省した拓海と空港で合流して、私たちは近くのイタリアンの店に入った。
トマトベースの魚介のパスタを口いっぱいに頬張りながら、拓海が私に尋ねてくる。
「うん…まあまあ、かな…最近やっと仕事にも慣れてきて、残業も減ってきたよ。」
「そっか…良かったな。あの…前に会った…えっと杉崎さんって人も、良くしてくれてんの…?」
「うん…すごく親切だよ、杉崎さんは。年の離れた優しいお兄ちゃんみたいな感じ、…」
拓海に杉崎さんの話題を振られて一瞬ドキリとしたものの、拓海に変に思われないようにサラッと答える。
週末にドライブしたことも、杉崎さんが熱を出した日にお宅を訪問したことも…当然のことながらわざわざ拓海には言っていない。
土日のことを聞かれていないから…だから拓海に話していないだけ…私はそう、自分自身に言い訳をしていた。
「おまえさ…先週の土日、何してたの?」
再び、ドキリと心臓がなる。唐突に聞かれた。私のパスタを巻くフォークの動きが不自然に止まってしまう。
「え…何って…えっと… なんで?」私のその問いに、
「いや…何となく… ただ、おまえが土日、俺になんもラインとか電話とかしてこねーの、珍しいなって思っただけだよ。なんか、忙しかったんか?」
…少し、本当は迷った…
土曜日に、杉崎さんと …車で社員旅行の下見に行った。
そこでお風呂に入り、お昼を食べて、仮契約を済ませて、帰った…
拓海にその事実を伝えるべきか、やはり迷った。
何故なら…後ろ暗いからに決まっている。そこでハプニングがあり…結果的に裸を見せ合い…帰ったのだから。
「あの、土曜日に、会社の人と社員旅行会の下見に行ってきたよ、幹事だからさ…日曜日は疲れで、家でだらっとしてたくらいかな…拓海は何してたの?」
その先、拓海に何も聞かれなければ、そのまま終わろうと思っていた。
でも、拓海はやっぱり…聞いてきた。
「ふーん、下見…?どこに‥?会社の人って何人かで?…」
… もう、いいや…隠しても仕方ないし、隠すと余計に怪しまれる、そんな気がした…
「んー… うん、あの、杉崎さんと二人で、車で、花咲温泉まで…行ってきた。そこで下見して仮予約してきた」
「…へえ…二人だけでか… そっか… 車で二人で… … 」
拓海が、よくわからない表情で、アイスコーヒを口にする。
「職場で家庭があったり子供がいたりで、他に行ける人がいなくて…で、私はひとりで暇だったし、かといって杉崎さんだけに頼むのも申し訳なくて…」
少し、言い訳がましいかな…なんて思いつつ、そう、口にする。
「そ…だな。まあ、おまえはフリーだし、仕方ないか、お疲れ…あ、俺はさ、週末だらだらしてただけだよ…」
そう言って、デザートのタルトにザクリとフォークを突き刺す拓海。
…目に見えて、少し不機嫌になったような気がしたために、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
それ以降その話題には一切触れずに、ランチを終えた。
その日の帰宅後、やっぱり言うんじゃなかったと、私は後悔することになる。
夜、拓海の…お昼には抑えて見せなかった感情が…むき出しになった。
0
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる