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〜二人きり〜

旅館へ

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「いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました」

旅館の女将さんらしき、たおやかな気品のある女性が入り口で笑顔で迎えてくれる。

「ありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。」杉崎さんが笑顔で応じる。

杉崎さんが事前に、訪問の目的を伝えてくれていたお陰で、待たずにすんなり部屋に通される。

畳の上にバッグを置いて勧められるままに座布団に座る。

「今日は天気も良くてよかったですね…まずは館内を先に見られてから、お食事とお風呂をゆっくり楽しまれませんか…?

本日はご予約のとおり、お昼のまったりプランのままのご利用でも良いですし、今日はちょうどこちらのお部屋ともう二つ三つ、空きもございますので、お泊まりいただくこともできますよ?
よろしければご検討ください。とにかく、下見とはいえ温泉ですから…ゆっくりされてくださいね」

女将さんがにっこりと微笑みながら、とんでもないことを口にする。

「へえ…そうなんですか…!いいなあ~…こんな素敵な部屋だと、確かにそのまま泊まりたくなってきますね…」杉崎さんが極上の笑顔で微笑み返す。

「考えてみます…ではまず、館内を見学させてもらっていいですか?それからお風呂に入ってとりあえずプランどおり、部屋で食事をいただきます。今日は宜しくお願いします。」
杉崎さんの丁寧な挨拶。私も慌てて頭を下げる。

杉崎さんは見た目も素敵で、誰に対しても対応がフラットで、話し方もソフトだ。広報係にはぴったりの人材だとつくづく思う。

そんなことはさておき、さっき…

泊まりたくなるとか…
考えてみます…とか…

しかもさっき、もしかして…

お風呂に入ってから部屋で食事をとる…と、言わなかったか…?
お風呂…つまり温泉につかってからお昼…ってこと?

もともとそんな風に聞いていなかった私は、地味に驚く。今日は旅館内の見学、部屋でランチ、最後に予約プランの検討…くらいのことだと思って来たのだ…

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