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入室

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店を出て歩きながら、あたりを見渡す。

周辺は比較的閑散としているが、少し歩いたら夜の街が少しづつ顔を出す場所…。
煌びやかなネオン…バーやカラオケ店…そこを抜けると、ホテル街に変わる。

人通りは、まあまあ、あって…どこにしようか目移りもするが、あまり迷ってウロウロしていると、どうしても人目についてしまう。

俺と普通の彼女だったりが二人いるところを目撃されるのは構わないが、由良さんと俺がこのあたりで職場の奴らなんかに目撃されるのは絶対にヤバい…。

俺は素早く視線を走らせ、立ち並ぶホテルの中でも一番シックというか、地味な…ギラギラしていないホテルの入り口に向かう。

その俺の何歩か後ろを、まるで子供のようにトコトコとついてくる由良さん。本当にこの人…わかってるんだろうな…と、少し不安になるほど無防備な動きだ。

今だ…今なら人がいない…。そう思ってそのホテルの入り口付近にサッと入り込む。由良さんが続く。

俺も長いこと、こういう所にはきていなかったので、まごまごしながらもなんとか画面の操作パネルをいじって、部屋を決める。
はっきりいって、値段とか設備とかほとんど見ずに…即決した。

とにかくどこでも良いから、人目につかない部屋に入ってしまわないと…気が気じゃない…

6階、603号室…目を泳がせながらやっとその部屋のドアを見つけ、息をつく暇がないほどの速さでドアの鍵穴に鍵を差し込む。今時は逆に珍しいカードキーじゃないタイプで少しもたつくが、ガチャリと鍵がまわる。

部屋に滑り込み、内鍵を閉めて、ホッと息をつく。由良さんは個室に入ったことに安心したのか、同様に、ホッとしたような表情だ。

部屋の入り口は狭いが、進んでいくと、ベッドとテレビ、テーブルがあり、なにやらゲーム機やカラオケの機械みたいなものも設置されているようだ。

それにしても…あまりにデカいダブルベッドの…存在感が凄すぎて…一瞬、面食らう。

ラブホって…こんな感じ…だったかな…。

俺はドギマギする心臓をなんとか抑えながら、由良さんを振り返った。

              つづく

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