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~拓海~

焦燥感

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「… … … 」

智花が、黙り込んでしまった。

よほど、驚いたらしい…。
それでも、最初の反応は普通だった…
普通に俺の話を何事もなかったかのように受け流そうと努力していた…。

確か前にも同じようなことがあったと思い出す。

随分前に、偶然4人でマンション近くの居酒屋で、食事を囲んだあの夜のことだ…。

葉月とあの男が、社員旅行の下見に行ったという話を俺が持ち出した際に…
確かあの時も、この智花という女は、こんな表情をしていた…。

きっとあの時も、あの男は… 
杉崎という男は、葉月と下見に行ったことを智花に話していなかったに違いない…。

だが、考えてみれば葉月だって同じだ… 
確かあの時も、葉月がサラッと話した下見の内容に少しの違和感を覚え、俺の方から聞いて…その内容を、掘り下げたような気がする…。

胸の奥が、チクリと痛むような感覚

         じりじりとした焦燥感が俺を包み込む…。

大体、なんなんだ、あの二人は…  

そして、葉月のあの夜の、寝言…うわ言…。 

よりにもよって、俺がキスをしている最中に…舌を、絡めている最中に…

あいつは、間違いなく、「杉崎さん」と… 口にしやがった…  
目を閉じたままの、恍惚とした表情で…あの男の、名前を…恋人である俺の名前ではなくアイツの名を…。

おかしい…  

やっぱり、あいつらはおかしい… そして、今日聞いた智花の話…。
杉崎も、智花に話があるからとわざわざこっちに来ると言っているというあたり…

あまりに、タイミングが… 合い過ぎる…。

    まさかとは思うが…

      あの二人は、既に… デキて、いるのか…

「… あの、… 」

      その声に、ハッとして、現実に引き戻された…。











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