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~密室~
珈琲
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「すみません、寒い中、お待たせしてしまって…」
「いやいや、全然… お邪魔します。」
私は杉崎さんをドアの中に招き入れた後、杉崎さんに背中から声を掛ける。
「あの… 狭い部屋ですけど、どうぞ…」
「ありがとう。」
高い、身長… 広い、肩幅と… 長い脚… サラサラの後ろ髪…
「… … … 」
杉崎さんの背中を見つめながら、いまだに、信じられない気持ちがしてくる。
どうして、ここに…
私の部屋に、杉崎さんがいるのだろう…。
やっぱり、いまだに信じられない。
「えっと… 」杉崎さんの少し戸惑ったような声にハッとして、
私は慌てて、再び声を発する。
「あ… えっと、すみません…コート、こちらにください。あと、あの…狭いんですけど、そこのソファに座っててもらえますか。珈琲…淹れますね…」
「あ、ありがとう…狭いなんてとんでもない…」
杉崎さんがそう言って、ゆっくりとソファに腰掛ける…。
やはり、信じられない…
いつもは拓海がくつろぐ、いつものソファに…
そこに、杉崎さんが座っている図に、どうしても違和感を覚えてしまう。
そう思いながらも、なんとか言葉を続ける。
「… あの… すみません、珈琲といっても…そんな、こだわりのある良い珈琲ではなくって…ごく普通の珈琲しかないんですけど…良いですか?」
私がキッチンの方からそう尋ねると、
「もちろん!ほんと、お構いなく…なんかごめんね、図々しく珈琲飲みたいなんて言っちゃって…今、自分の言動について、反省してるとこ…いきなり水無月さんの家に、お邪魔だなんてね…ほんと、申し訳ない…」
そう言いながら、杉崎さんが、少し申し訳なさそうに…それでいて、いつものような優しい表情で、ふわりと微笑みかけてくれる。
その笑顔に、密かにホッと胸を撫でおろす私…。
居酒屋では… 拓海の話を…拓海があの日、私の部屋に泊ったことを話した直後に…杉崎さんの様子がおかしくなったような気がした…。
杉崎さんのいつもの笑顔は消え去り…
何か、考え事をしているかのような顔つきになり…沈黙の時間もあったせいで…
ほんの少しではあるものの、杉崎さんのことを怖いと、感じる瞬間もあったほどだ…。
だけど、今は…
さっきとは打って変わって、ニコニコとした表情で私に笑いかけてくれる…。
でも… 油断すれば更に、拓海とのことを… 詳しい話を聞かれてしまいそうで…
私は多分、無意識に…自分から、他の話題を探そうと模索していた。
「… あの、お砂糖とミルクは…?」
「あ…えっと、そうだな…ブラックで大丈夫…。」
「了解です…もう少し、お待ちください。」
コポコポコポ…
コポコポコポコポ… …
珈琲マシン、特有の… 心地よい水音… 部屋いっぱいに広がる、珈琲の香り…
「… … …」杉崎さんは座ったまま何も、話さない…。
でも…なんだろう…
なんとなく…視線を感じてしまうのは…気のせい…? 自意識、過剰だろうか…
ふと、杉崎さんと正面から目が合い、ドキリとした…。
キッチンカウンターと、リビング…
距離にして、ほんの数メートル…。
「… … … … 」何か話さなきゃと思うのに…なぜだか、何も言葉が出てこない…
私は自分の部屋でありながら、… 段々と、自身の鼓動が早くなるのを感じた…。
密室だ… 半個室、どころではない、完全なる密室…。
さっきの居酒屋とは、全く違う空間…
密室に… 杉崎さんと2人きり… あの、ホテルの…出張の時以来だ…
ドキドキドキドキ…
どうしよう… 今更ながらに緊張してきた…
私はなんとか心を落ち着かせるべく、
なるべく違和感のないように、杉崎さんからゆっくりと視線を外し…
用意した珈琲カップに、ゆっくりと珈琲を注ぎ始めた。
「いやいや、全然… お邪魔します。」
私は杉崎さんをドアの中に招き入れた後、杉崎さんに背中から声を掛ける。
「あの… 狭い部屋ですけど、どうぞ…」
「ありがとう。」
高い、身長… 広い、肩幅と… 長い脚… サラサラの後ろ髪…
「… … … 」
杉崎さんの背中を見つめながら、いまだに、信じられない気持ちがしてくる。
どうして、ここに…
私の部屋に、杉崎さんがいるのだろう…。
やっぱり、いまだに信じられない。
「えっと… 」杉崎さんの少し戸惑ったような声にハッとして、
私は慌てて、再び声を発する。
「あ… えっと、すみません…コート、こちらにください。あと、あの…狭いんですけど、そこのソファに座っててもらえますか。珈琲…淹れますね…」
「あ、ありがとう…狭いなんてとんでもない…」
杉崎さんがそう言って、ゆっくりとソファに腰掛ける…。
やはり、信じられない…
いつもは拓海がくつろぐ、いつものソファに…
そこに、杉崎さんが座っている図に、どうしても違和感を覚えてしまう。
そう思いながらも、なんとか言葉を続ける。
「… あの… すみません、珈琲といっても…そんな、こだわりのある良い珈琲ではなくって…ごく普通の珈琲しかないんですけど…良いですか?」
私がキッチンの方からそう尋ねると、
「もちろん!ほんと、お構いなく…なんかごめんね、図々しく珈琲飲みたいなんて言っちゃって…今、自分の言動について、反省してるとこ…いきなり水無月さんの家に、お邪魔だなんてね…ほんと、申し訳ない…」
そう言いながら、杉崎さんが、少し申し訳なさそうに…それでいて、いつものような優しい表情で、ふわりと微笑みかけてくれる。
その笑顔に、密かにホッと胸を撫でおろす私…。
居酒屋では… 拓海の話を…拓海があの日、私の部屋に泊ったことを話した直後に…杉崎さんの様子がおかしくなったような気がした…。
杉崎さんのいつもの笑顔は消え去り…
何か、考え事をしているかのような顔つきになり…沈黙の時間もあったせいで…
ほんの少しではあるものの、杉崎さんのことを怖いと、感じる瞬間もあったほどだ…。
だけど、今は…
さっきとは打って変わって、ニコニコとした表情で私に笑いかけてくれる…。
でも… 油断すれば更に、拓海とのことを… 詳しい話を聞かれてしまいそうで…
私は多分、無意識に…自分から、他の話題を探そうと模索していた。
「… あの、お砂糖とミルクは…?」
「あ…えっと、そうだな…ブラックで大丈夫…。」
「了解です…もう少し、お待ちください。」
コポコポコポ…
コポコポコポコポ… …
珈琲マシン、特有の… 心地よい水音… 部屋いっぱいに広がる、珈琲の香り…
「… … …」杉崎さんは座ったまま何も、話さない…。
でも…なんだろう…
なんとなく…視線を感じてしまうのは…気のせい…? 自意識、過剰だろうか…
ふと、杉崎さんと正面から目が合い、ドキリとした…。
キッチンカウンターと、リビング…
距離にして、ほんの数メートル…。
「… … … … 」何か話さなきゃと思うのに…なぜだか、何も言葉が出てこない…
私は自分の部屋でありながら、… 段々と、自身の鼓動が早くなるのを感じた…。
密室だ… 半個室、どころではない、完全なる密室…。
さっきの居酒屋とは、全く違う空間…
密室に… 杉崎さんと2人きり… あの、ホテルの…出張の時以来だ…
ドキドキドキドキ…
どうしよう… 今更ながらに緊張してきた…
私はなんとか心を落ち着かせるべく、
なるべく違和感のないように、杉崎さんからゆっくりと視線を外し…
用意した珈琲カップに、ゆっくりと珈琲を注ぎ始めた。
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