上 下
49 / 224
~智花~

連絡

しおりを挟む
「… うん、わかった… また、詳しい日時は連絡する…おやすみ、なさい…」

私はスマホを小さなテーブルに置き、ボスンと音をたててベッドに横になる。

           「… … …」

一体、なんだろう…

珍しく、修哉さんから電話があった…。

大抵はメールでやり取りをすることが多いのに、今日は「今、電話できるかな?」という内容のメールが送られた後に、私のOKの返事を受けて、すぐさま電話がなった。

少しだけ…ほんの少しだけ、嫌な予感がした。

修哉さんが、九州に…

私の今住んでいる福岡に…こちらの都合が良い時に、来たいという…。

これまでは私が東京へ帰省したり、もしくはこちらから修哉さんに、たまには九州に遊びに来て欲しいと伝えたり…

そんなことは何度かあったものの、
修哉さんの方から積極的に福岡に来たいなどと、言われたことはなかった…。

      「… … … 」

じわじわと…不安な気持ちが胸の中に広がっていくような嫌な感覚を覚える…。

遠距離恋愛の状態になる前にはまだ…今よりもっと彼と気軽に飲みに行ったりして、デートをすることも出来た…もっと、コミュニケーションが取れた…。

でも、今はなかなか会うことも出来ず、互いに毎日、連絡を取り合うようなこともしていない…。

なのに、なぜいきなり… 福岡に来たい、なんて…?

理由を聞いてみたい気はしたものの、なぜだか聞くこと自体怖くなって、そのまま日程調整をすることになってしまった…。

まさかとは思うが、… 別れ話…などの、類ではないか… … … 。

前々から、うっすらと思っていた…。

ううん、… 本当は、最初からだ… 
私の二度目の告白を修哉さんが受け入れてくれて、彼と私の付き合いが始まった頃から…

本当に、最初の最初から、思っていた…。

彼は、私のことを、一度でも…好きだと思ってくれたことがあっただろうか、と…。

キスも… その先も…  彼との初めてのセックスでさえも…
私から、誘ったに等しい…。

自分で言うのはおこがましいかもしれないが、
顔だって…
スタイルだって、悪くはないはずだ…。

なのに、なんでいつも、彼は私に手を出してくれないのだろう…。
久々に会った時ですら、情熱的に、私を抱いてくれたことはないように思う…。

そういうことに、極端に淡白な人なのかなと、最初は思っていた…そう、思いたかった…。

だけど… きっと違うのだ…

相手が私だから、修哉さんは、あんな風に冷静でいられるのではないか…

相手がもしも、自分の好みに合致したら…彼は、もしかしたら、もっと、… …

       「… はあ… …」

突如、私の頭の中に思い浮かぶあの子… 

なんでだろう…やっぱり、あの子が気になって仕方ない…。

私という彼女がいることを知りながらも、さりげなく、修哉さんにアプローチをかけている細野さんじゃない… 

あの子…  白くて、華奢なあの子…

あの子が、気になって仕方ない…。

         水無月、葉月… 

でも、あの子には彼氏がいる… 
あんなに男らしく、明るくて楽しい性格の彼氏がいるのだ…。

なのに、私があんな子を気にしてどうする…。

修哉さんだって、馬鹿じゃない… 
彼は、理性のある、分別のある…大人の、男性なのだ…。

あんなにも年が離れた彼女に…

ましてや、既に長年付き合っている彼氏がいる彼女に、想いなんて…寄せるはずがない…。
ましてや、手を出すなんて、あり得ない… 

でも…  私がまだ、東京にいた時の…

彼の、彼女を見る目が…

彼の、彼女のことをかばう姿が…

彼の、彼女の仕事ぶりを話す様子が… 

その時の、何とも言えない彼の柔らかな表情が…なぜだか、気になって、仕方なかった…    

「違う… きっと、思い違いだ… もう、寝よう… 」思わず、声に出ていた…。

目を閉じた瞬間…

 
     ・・・ピンポーン・・・

家のチャイムが鳴る…。
もう、夜の10時を過ぎている…
さすがに、宅配などではない… 

      もしかして、また…? 


私はゆっくりと、重たい身体を起こした…。






























 





















































しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

ずっと君のこと ──妻の不倫

家紋武範
大衆娯楽
鷹也は妻の彩を愛していた。彼女と一人娘を守るために休日すら出勤して働いた。 余りにも働き過ぎたために会社より長期休暇をもらえることになり、久しぶりの家族団らんを味わおうとするが、そこは非常に味気ないものとなっていた。 しかし、奮起して彩や娘の鈴の歓心を買い、ようやくもとの居場所を確保したと思った束の間。 医師からの検査の結果が「性感染症」。 鷹也には全く身に覚えがなかった。 ※1話は約1000文字と少なめです。 ※111話、約10万文字で完結します。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

彼女は処女じゃなかった

かめのこたろう
現代文学
ああああ

処理中です...