【BL・R18】優しくて残酷な男でも…幸せになれますか？

分析

４

「よーーし！終わった～～新名さん、今日は疲れましたね？会議…」
岡田がうーーんっと、伸びをしながら俺の方に顔を向ける。

「本当だな…久々に緊張したよ…」俺は笑って答える。

今日は商品の企画会議だった。
秋ごろに出す新製品の企画を各々が持ち寄ってプレゼンしていくもので、準備にはなかなかの期間を要する…

「さ…そろそろ帰ろうか？岡田。」
「はい…帰りにデパ地下あたりで、夕飯とか酒、買っていきましょうか？」
「いいね…俺はいつもコンビニ飯かデリバリーだからさ。たまにはデパ地下の料理もリッチでいいな。行こう。」

俺らは話しながら連れ立って会社を出た。

今日、真中と森下君は午後から子会社のヘルプに行っていて、出先から直帰…。
俺は真中が今このやり取りを見ていないことに内心ほっとする。

なにしろあのマイペースで強引な性格だ…。
もし奴が、岡田が今夜俺の家に来ることを聞きつけでもしたらと思うと怖かったのだ…。

真中は今のところ、会社ではありえないくらい猫を被って好青年を装っているが、

その真の姿を、俺も岡田も見ているものだから、
アイツは俺と岡田の前では少し緩んでいる気がするのだ…やはり油断はできない。

「…名さん‥新名さん！」
「あ…えっとごめん…何…」
「これとこれ、どっちにします…？サラダとメイン…　あと、せっかくだしちょっといいデザートも買っときましょうか！」
デパ地下で、ショーウィンドウの中身を指差しながら岡田が俺に尋ねる。

岡田が本当に、いつになくご機嫌な気がする…。

朝の段階では悩みがあると言っていたが、
こんなに明るい笑顔で今日の夕飯の話をするなら、きっとそこまで深刻な内容ではないのかもしれない…
俺は内心、ホッとしていた。
相談に乗るなんて、本当はあまり俺自身、自信がないし…。

ふと、
一瞬…俺をじっと見つめているような、そんな視線を感じた…。

違和感を感じて…　　横を見ると、　

「る…　…　留美…　」

「拓人…　」

そこにいたのは、
俺のことを…優しいけど残酷だと告げて去っていった、俺の…元、彼女だった…

そして彼女の隣には…俺の知らない、背が高くて逞しい男が…留美の腰に腕を回した状態で立っていた…。
もう、新しい彼氏が出来たのか…　　まあ、そうか…

俺は力なく、「久々だな…元気そうで良かった…」
そう言って、なんとかその場を取り繕うように、

　　　　　　　　　　　　　　　　微笑んだ…。