心の休憩所

関塚衣旅葉

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イベント事

ジューンブライド

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 「今日みたいな天気ってね、狐の嫁入りって言うらしいの! 」
そう教えてくれたのは、私の大好きな人。
豊崎。
彼女は、昔から本を読むのが好きで、小中の頃の図書室で使ってた貸出カードはすごい数のタイトルが書かれていた。
高校に入ってからは、これまでに読んだ本で得た知識をたまに披露してくれるんだ。
そんなところがとても好きなのだ。
こんな関係が、大人になっても続くんだろうなと、豊崎と過ごす高校最後の夏休み前にぼんやりと思っていた。
2人とも、同じ大学に進学するために、面接練習を沢山して、頑張った。
だから、無事に2人とも合格して、春には楽しいキャンパスライフが始まると思っていたの。
しかし、それは妄想に過ぎなかった。
現実は厳しく、大学入学早々に豊崎に彼氏が出来た。
それはとてもめでたいことなんだけど、彼氏さんがあんまりいい人とは言えない人だった。
可愛い豊崎に彼氏が出来て悔しいからそう言ってる訳じゃなくて。
束縛が激しいのか、最初は学校にいる間めちゃくちゃ連絡が来てた。
その次はあんまり学校に来なくなって。
今では私から連絡しても返信が返ってこなくなった。
大学を卒業したあとも、彼女から連絡はなかった。
2人がどうなったのかとかは、仲のいい他の友達も聞いてないとのことだったし、彼氏さんの友達にも聞いたが、知らないと言われてしまった。
ただ、彼らの会話の中には少しだけ変な言葉が混ざっていた。
「あいつ薬もってるとか言ってなかった??」
なんて言っていたけど、それについて深くは聞かなかった。

 もしそれが事実だとしたら、今目の前にいる彼女が豊崎じゃない可能性が出てきてしまうしね。
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