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1.再会と2人の初恋編
10.約束の日①
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私がおばあちゃんの畑の手伝いを終えて、家に帰ってから時計を見ると、時刻は4時半。
約束の時間まで、もう少しだった。
私は慌てて着替えて、有里ねぇの待っているという神社の方へと向かう。
言い忘れていたかもしれないので……一応、今日は有里ねぇとの約束の日なのだ。
有里ねぇが私に大切な話ってなんだろう?
なんて思うほど私も野暮じゃない。
きっと、彼 優太のことに違いない。
この際、ハッキリ言っておくと私、美鈴凛津は彼のことが……好きだ。
そして、私の他にもう1人彼のことを強く想っている人がいる。
それが、有里ねぇ、椿有里香だ。
彼女も優太のことを好きだと知ったのは、優太が島から出て行ってすぐのことだった。
―――――――――――――――――――――――
『優太……行っちゃったね』
『……うん』
私はどんどん離れていく船を見ながらそう言った。
『あのさ……凛津』
『なに?』
『凛津って優太のこと好き?』
『……うん。大好き。友達じゃなくて……男の子として……』
私がそう言ってからしばらくして有里ねぇは口を開いた。
『凛津……実はね……私も好きな人出来たんだ』
その言葉に私はドキッとした。
私もその人に心当たりがあったから……
『私も……』
『優太が好きなんでしょ?』
私は有里ねぇが全て話す前にそう言った。
有里ねぇは気づかれていないと思っていたからか、私がそう口にすると、
『なっ……な、な、な、なんでわかったの!?』
なんて言いながらとても狼狽していた。
何でわかったかなんてそれは、私が有里ねぇと長い付き合いだからだ……
と言いたいところだけど、正直、誰が見てもそうだと分かったと思う。
もっとも、その相手の優太は全く気が付いていなかったっぽいけれど……。
『あのさ……有里ねぇ』
私はまだ顔を真っ赤にして「なんで分かったの!?」を連呼している有里ねぇに呼びかけた。
『なっ、何かな? 凛津?』
『私……渡さないから』
有里ねぇは、私が何を言っているのかすぐに分かったのだろう。
しばらくジタバタしていた有里ねぇは私の顔を一度見てから
『そうだね……。 私は凛津の嫌がる事はしたくない……な』
真剣な顔でそう言った。
『じゃあ、有里ねぇは諦めるの?』
私がそう言おうとした時に
『でも……』
と有里ねぇは口にした。
『でも……私も……優太が……好きで……だから。ごめん。私、今回は、お姉ちゃんとして凛津のこと応援できないや……』
『そう……だよね』
有里ねぇとこんなに真剣に話したのは初めてかもしれない。
きっと、有里ねぇも本当に優太のことが好きなんだ。
私がそう思っていると
『だからさ』
と有里ねぇが口を開いた。
『勝負……しない? 私と……凛津で』
『勝負?』
私は急に勝負と言われても何の勝負なのか分からなかったので聞き返した。
すると、有里ねぇは
『そう。勝負。私と凛津の優太をかけた勝負』
と口にした。
けど……もう、優太はここにはいないわけで……
そんな私の考えを見透かしたように有里ねぇは続けた。
『別に、今ってわけじゃないんだ。勝負するのは……そう。優太がこの島にもう一度戻ってきた時』
そんなのいつになるか分からないじゃん!それに……優太が帰ってくる確証は……
『帰ってくるよ。優太は……だって、ここには私達との思い出がたくさん詰まってるだもん』
再び有里ねぇは私の考えていることを見透かしたように言った。
『だからさ……』
『それまで待とう。ってことか……。うん、いいよ』
今度は私が、有里ねぇが全て言い終わる前にそう口にした。
それから有里ねぇは頷いて
『だから……』
それから有里ねぇはまたいつものように明るい口調に戻って、ニコッとしながら
『それまでは、いつものように私がお姉ちゃんで凛津は妹だからね!!』
そう言ったのだった。
―――――――――――――――――――――――
私が神社に着くと、有里ねぇは少し前に着いていたらしくニコニコしながら、私に手を振った。
「おーい! 凛津!」
「……」
なんというか……私は少し拍子抜けしてしまった。
昨日のメールを見た限りでは、今日はとても真剣な雰囲気で話すと思っていたのだが……
「ほらほら~! はやく!」
どうやら違っていたらしい。
私は渋々有里ねぇのいる方へと向かった。
そして、
「今も優太の事好き?」
私が有里ねぇのすぐ近くまでくるやいなや、突然そんなことを尋ねてきた。
「うん」
少々突然のことで驚いたけれど、私は有里ねぇの質問に淀みなく答えた。
それから、有里ねぇは「そっかそっか~!」なんて言いながら私の方を見て
「私も、今も好き」
と言った。
分かっていたけれど、やっぱり有里ねぇはまだ優太の事好きなんだ……
私がそう思っていると、有里ねぇは続けて
「だから……ここからは、勝負……だね」
とさっきのおちゃらけた様子から一転、静かにそう言った。
約束の時間まで、もう少しだった。
私は慌てて着替えて、有里ねぇの待っているという神社の方へと向かう。
言い忘れていたかもしれないので……一応、今日は有里ねぇとの約束の日なのだ。
有里ねぇが私に大切な話ってなんだろう?
なんて思うほど私も野暮じゃない。
きっと、彼 優太のことに違いない。
この際、ハッキリ言っておくと私、美鈴凛津は彼のことが……好きだ。
そして、私の他にもう1人彼のことを強く想っている人がいる。
それが、有里ねぇ、椿有里香だ。
彼女も優太のことを好きだと知ったのは、優太が島から出て行ってすぐのことだった。
―――――――――――――――――――――――
『優太……行っちゃったね』
『……うん』
私はどんどん離れていく船を見ながらそう言った。
『あのさ……凛津』
『なに?』
『凛津って優太のこと好き?』
『……うん。大好き。友達じゃなくて……男の子として……』
私がそう言ってからしばらくして有里ねぇは口を開いた。
『凛津……実はね……私も好きな人出来たんだ』
その言葉に私はドキッとした。
私もその人に心当たりがあったから……
『私も……』
『優太が好きなんでしょ?』
私は有里ねぇが全て話す前にそう言った。
有里ねぇは気づかれていないと思っていたからか、私がそう口にすると、
『なっ……な、な、な、なんでわかったの!?』
なんて言いながらとても狼狽していた。
何でわかったかなんてそれは、私が有里ねぇと長い付き合いだからだ……
と言いたいところだけど、正直、誰が見てもそうだと分かったと思う。
もっとも、その相手の優太は全く気が付いていなかったっぽいけれど……。
『あのさ……有里ねぇ』
私はまだ顔を真っ赤にして「なんで分かったの!?」を連呼している有里ねぇに呼びかけた。
『なっ、何かな? 凛津?』
『私……渡さないから』
有里ねぇは、私が何を言っているのかすぐに分かったのだろう。
しばらくジタバタしていた有里ねぇは私の顔を一度見てから
『そうだね……。 私は凛津の嫌がる事はしたくない……な』
真剣な顔でそう言った。
『じゃあ、有里ねぇは諦めるの?』
私がそう言おうとした時に
『でも……』
と有里ねぇは口にした。
『でも……私も……優太が……好きで……だから。ごめん。私、今回は、お姉ちゃんとして凛津のこと応援できないや……』
『そう……だよね』
有里ねぇとこんなに真剣に話したのは初めてかもしれない。
きっと、有里ねぇも本当に優太のことが好きなんだ。
私がそう思っていると
『だからさ』
と有里ねぇが口を開いた。
『勝負……しない? 私と……凛津で』
『勝負?』
私は急に勝負と言われても何の勝負なのか分からなかったので聞き返した。
すると、有里ねぇは
『そう。勝負。私と凛津の優太をかけた勝負』
と口にした。
けど……もう、優太はここにはいないわけで……
そんな私の考えを見透かしたように有里ねぇは続けた。
『別に、今ってわけじゃないんだ。勝負するのは……そう。優太がこの島にもう一度戻ってきた時』
そんなのいつになるか分からないじゃん!それに……優太が帰ってくる確証は……
『帰ってくるよ。優太は……だって、ここには私達との思い出がたくさん詰まってるだもん』
再び有里ねぇは私の考えていることを見透かしたように言った。
『だからさ……』
『それまで待とう。ってことか……。うん、いいよ』
今度は私が、有里ねぇが全て言い終わる前にそう口にした。
それから有里ねぇは頷いて
『だから……』
それから有里ねぇはまたいつものように明るい口調に戻って、ニコッとしながら
『それまでは、いつものように私がお姉ちゃんで凛津は妹だからね!!』
そう言ったのだった。
―――――――――――――――――――――――
私が神社に着くと、有里ねぇは少し前に着いていたらしくニコニコしながら、私に手を振った。
「おーい! 凛津!」
「……」
なんというか……私は少し拍子抜けしてしまった。
昨日のメールを見た限りでは、今日はとても真剣な雰囲気で話すと思っていたのだが……
「ほらほら~! はやく!」
どうやら違っていたらしい。
私は渋々有里ねぇのいる方へと向かった。
そして、
「今も優太の事好き?」
私が有里ねぇのすぐ近くまでくるやいなや、突然そんなことを尋ねてきた。
「うん」
少々突然のことで驚いたけれど、私は有里ねぇの質問に淀みなく答えた。
それから、有里ねぇは「そっかそっか~!」なんて言いながら私の方を見て
「私も、今も好き」
と言った。
分かっていたけれど、やっぱり有里ねぇはまだ優太の事好きなんだ……
私がそう思っていると、有里ねぇは続けて
「だから……ここからは、勝負……だね」
とさっきのおちゃらけた様子から一転、静かにそう言った。
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