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見変える

慰め上手

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 そうこうしている内にこちらのコートでの試合は着々と進んでいたようで、いつの間にか点差がどんどんと開いていた。

 おお、これは本当に強いじゃないか。

 女の子に見守られるというのは、これほどまでに力を生むものなのかとすっかり感心してしまう。こんなことになるのなら、これから先もずっと見守っていて欲しいなと思っちゃうものだ。

 テスト、受験、面接、就職と。

 これからも見守っていてほしいと思うようなことは、山盛りにしてあるのだから。すぐ近くで。或いは真横で。それが無理なら真後ろでも見守ってくれたら御の字だ。

 でも彼女たちも自分のことで忙しくなるからあんまり無茶なことは言えない。しかたないな、母さんにでも頼むとしようか。

 はて、それは効果があるかしらと首をかしげる。そんなことを考えていると目の前をロングパスが通り過ぎていく。そしてすかさずにレイアップシュート。鮮やかだ。

 やはりというか、なんというか。

 運動部のメンバーがいい動きをしているようだった。バスケ部に、サッカー部、野球部と。運動神経とは真に不公平なもので、ひとつのスポーツを鍛えたひとはべつのスポーツでも通用するようであった。

 なるほどねと思う。ひとつのスポーツに通用しないぼくが、すべてのスポーツに通用しないのは道理にかなっているわけだ。

 ひとり深く納得する。

 あいつは野球部、こいつはサッカー部。ほらね、やっぱりと出場メンバーの部活をひとつずつ思いだしていきながら自分のことを慰めていく。

 おや、彼は。

 そんな中、とくに目立った動きをしている訳ではないけれど常にいいポジションにいる彼は、……坂本くんだったかな。

 なにやらドリブルをする手つきも手慣れているようにもみえるけれど、はて、彼はいったい何部だったかな。

 お喋りな友人にこっそり聞いてみると、
「あいつは、卓球部だよ」
 とすぐに返ってきた。

 へえ、意外と言えば失礼になるのかな。でもあの手さばきは妙に板についてるような気がした。ふたたび彼の姿を捉えたときには3Pシュートを華麗に決めていた。思わず目を奪われる。

「キャ~カッコいい」
 とは、まあ、言わないけど。

 その後、もう一試合していくかと先生はぼくらを脅かしてくるけれども、あいにくそこで時間切れとなった。

 ほっと胸をなで下ろし、
「さあ。終わった、終わった」
 と引き上げようとしていたら、先生からボールを倉庫に片付けておくようにという大役を仰せつかってしまった。

 なぜにぼくがと理由を求めると、真面目に試合しなかったからだと苦笑われる。

「そんなあ。あれでも本気なんだけどな」

「一番活躍してなかったからな」
 と、みんなからも満場一致で指名されてしまった。

 まったく、困ったものだね。

 どうやら天界どころの騒ぎじゃなく、この世がぼくには優しくないみたいだった。ふうとため息混じりに肩を落として、ふたつのボールカゴをゴロゴロと押しているとひとつのカゴが不意にフッと軽くなった。

 おや、と目をやるとちいさな人影。

「全然だめだったね」
 と毒を吐きつつも手伝ってくれる、鬼柳ちゃんの姿がそこにはあった。

 ありがたい、のかな。うん、毒がなければ尚のことだけれど。それでもひとり残って手伝ってくれる鬼柳ちゃんは優しい。

「ね、守屋くんは運動音痴なの?」

 ……はずだ。その含み笑いがなければ。

「声援があれば、ぼくもやれますとも」
 と熱弁を振るっていると、
「それ、順序が逆じゃないの」
 とあきれられてしまう。

 それはそうだったかもしれない。

 そのジト目で見守られていてもしょうがないものだ。一向に力も出てこなかった。

「不思議なものだね」
 と肩をすくめておく。

 そんな風に話しながら、体育館の入り口ちかくにあるちいさな倉庫へとボールカゴを運んでいった。パチリと電気をつけて、ひょいと中をのぞいてみる。
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