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見ていたのは
或いはこだわり
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執念、と表わすのは。
ちょっぴり物怖じして、二の足を踏んでしまうものだよね。だから、それはこだわりと言う方がいいのかもしれない。これだけは絶対に譲れないというこだわりなら、だれでもひとつやふたつはあるはずだよ。
例えばぼくはカレーに醤油を足す派だ。
これだけは絶対に譲れない。ソースを足したりするひとも中にはいるらしいけど、ぼくに言わせたらそれは邪道だね。もっと邪道なひとは驚いたことに、なんとマヨネーズを足したりもするらしい。
たちまちクリーミーな色と味に早変わりしてしまう。見た目はちょっとアレなんだけど、あれはあれで中々美味しくなるものなんだよ。でもどっちかと言えば、ぼくはソースを足した方が好みの味だなと思う。
ここだけの話なんだけど、辛いソースを混ぜるとぐっと味が引きしまることに気付いたんだ。オススメだよ。今度やってみてほしい。最近はね、辛いソースをこっそり足すのがマイブームになりつつあるんだ。
おや、なんだかすこし例えが悪かったかもしれないね。
ほかにもなにかこだわりはあったかな。そうだなあ。ちょっと待ってよ、いま思い出してる所なんだからさ。ああ、そうだ、そうだ。あった、あったよ。そういえば、ぼくにも譲れないこだわりがあったんだ。
謎は美しくあるべきだと思うんだよ。
それは探偵がうっかり惚れ惚れしてしまうくらいに。思わず前のめりになって、かぶりついて解きたくなっちゃうほどにね。
全ての謎はすべからく、探偵に解かれるべきものだけれど。謎を作る側も探偵が興味を持つように気を払わないといけない。それが黒幕としての、ぼくのこだわりだ。
このようにだね。
ぼくのように薄いこだわりしか持たない人間もいれば、一方ではぼくのように強いこだわりを持つ人間もいるわけなんだ。
こだわりをバカにしちゃいけない。
それは時に、ひとを狂わせてしまうこともあるものなんだからね。その狂った行動も傍から眺めてみると、それそのものが謎にみえてきたりすることもある。純粋な、混じりっ気のないピュアピュアな謎だよ。
謎ならそれは。ぼくも望む所だし、ぼくの大好物さ。大好物ではあるんだけど。
でもね、さすがにこれは──。
いつもよりすこし早く目が覚めていた。昨日は考え事をしながらうつらうつらとしていて、そのまま眠っちゃったみたいだ。だからそのせいなのかなと思う。考えていたのはもちろん、あの子のことだった。
鬼柳美保。
あのちいさな探偵はぼくが作りあげる、奇天烈怪奇で摩訶不思議な、自信作であるところの謎を難なく順調に紐解いていく。
匠の技が光る、こだわりのある謎に触れることによってだ。探偵として、おおきく成長してこれたんじゃないのかなと思う。素直に称賛の声をあげておくとしようか。
まあ、おおきく成長したとは言っても、ぼくから見ればまだまだちいさいものだ。主に背たけの辺りが。
そんな鬼柳ちゃんもそろそろ、推理することへの喜び。謎が目の前にあるという、その幸運。そして黒幕たるぼくへの感謝の気持ちと共に、事件を解決する面白さに気付きはじめた頃じゃないのかなと思う。
鬼柳ちゃんが自らに謎を求め出す日も、そう遠い日の話じゃないのかもしれない。それならその日が早く来ることを、ぼくは首を長くして待つとしようではないか。
どうか早めにねと、お願いしとこうか。
あまりにも長く待たせすぎたりしたら、ぼくの首は長くなるばかりだ。気付けば、キリンになっちゃってるのかもしれない。そうなる前にと願いたいものだ。
ぼくはちょっとばかし、ひとよりも強く探偵にこだわりがあったのかもしれない。そしてやっぱりそれは執念、と呼んだ方が相応しいのかもしれなかった。
ちょっぴり物怖じして、二の足を踏んでしまうものだよね。だから、それはこだわりと言う方がいいのかもしれない。これだけは絶対に譲れないというこだわりなら、だれでもひとつやふたつはあるはずだよ。
例えばぼくはカレーに醤油を足す派だ。
これだけは絶対に譲れない。ソースを足したりするひとも中にはいるらしいけど、ぼくに言わせたらそれは邪道だね。もっと邪道なひとは驚いたことに、なんとマヨネーズを足したりもするらしい。
たちまちクリーミーな色と味に早変わりしてしまう。見た目はちょっとアレなんだけど、あれはあれで中々美味しくなるものなんだよ。でもどっちかと言えば、ぼくはソースを足した方が好みの味だなと思う。
ここだけの話なんだけど、辛いソースを混ぜるとぐっと味が引きしまることに気付いたんだ。オススメだよ。今度やってみてほしい。最近はね、辛いソースをこっそり足すのがマイブームになりつつあるんだ。
おや、なんだかすこし例えが悪かったかもしれないね。
ほかにもなにかこだわりはあったかな。そうだなあ。ちょっと待ってよ、いま思い出してる所なんだからさ。ああ、そうだ、そうだ。あった、あったよ。そういえば、ぼくにも譲れないこだわりがあったんだ。
謎は美しくあるべきだと思うんだよ。
それは探偵がうっかり惚れ惚れしてしまうくらいに。思わず前のめりになって、かぶりついて解きたくなっちゃうほどにね。
全ての謎はすべからく、探偵に解かれるべきものだけれど。謎を作る側も探偵が興味を持つように気を払わないといけない。それが黒幕としての、ぼくのこだわりだ。
このようにだね。
ぼくのように薄いこだわりしか持たない人間もいれば、一方ではぼくのように強いこだわりを持つ人間もいるわけなんだ。
こだわりをバカにしちゃいけない。
それは時に、ひとを狂わせてしまうこともあるものなんだからね。その狂った行動も傍から眺めてみると、それそのものが謎にみえてきたりすることもある。純粋な、混じりっ気のないピュアピュアな謎だよ。
謎ならそれは。ぼくも望む所だし、ぼくの大好物さ。大好物ではあるんだけど。
でもね、さすがにこれは──。
いつもよりすこし早く目が覚めていた。昨日は考え事をしながらうつらうつらとしていて、そのまま眠っちゃったみたいだ。だからそのせいなのかなと思う。考えていたのはもちろん、あの子のことだった。
鬼柳美保。
あのちいさな探偵はぼくが作りあげる、奇天烈怪奇で摩訶不思議な、自信作であるところの謎を難なく順調に紐解いていく。
匠の技が光る、こだわりのある謎に触れることによってだ。探偵として、おおきく成長してこれたんじゃないのかなと思う。素直に称賛の声をあげておくとしようか。
まあ、おおきく成長したとは言っても、ぼくから見ればまだまだちいさいものだ。主に背たけの辺りが。
そんな鬼柳ちゃんもそろそろ、推理することへの喜び。謎が目の前にあるという、その幸運。そして黒幕たるぼくへの感謝の気持ちと共に、事件を解決する面白さに気付きはじめた頃じゃないのかなと思う。
鬼柳ちゃんが自らに謎を求め出す日も、そう遠い日の話じゃないのかもしれない。それならその日が早く来ることを、ぼくは首を長くして待つとしようではないか。
どうか早めにねと、お願いしとこうか。
あまりにも長く待たせすぎたりしたら、ぼくの首は長くなるばかりだ。気付けば、キリンになっちゃってるのかもしれない。そうなる前にと願いたいものだ。
ぼくはちょっとばかし、ひとよりも強く探偵にこだわりがあったのかもしれない。そしてやっぱりそれは執念、と呼んだ方が相応しいのかもしれなかった。
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