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追憶の黒幕

(鬼柳)(守屋)犯人は

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──♡11

 つぎの日、全校生は朝から体育館に集まっていた。朝礼はいつもどおりに進行されて、校長先生のお話もあったけれど、職員室の割れた窓ガラスについては触れないみたいね。

 つづいて生徒会長交代の説明になったけど、家庭の事情だからと、軽くひと言で済まされてしまった。んー、くわしくは説明しないのかな。

 そしていま壇上には副会長があがり、新任の挨拶をしている。どうやら副会長が、生徒会長代理を兼任していくみたいだった。

 古越さんからの挨拶はとくにないようで、壇上に彼女の姿は見当たらなかった。そしてわたしは途中で気が付いた。もうひとり、その姿が見当たらないことに。

 守屋くんがいない。

 朝、登校してとなりの席に座るのはみたけれど、この朝礼の列に彼の姿がないように思う。見間違いかと思って何度かふり向いてみても、やっぱりいない気がする、かな。

 朝礼が終わり体育館から教室に戻ると、守屋くんの席には恵海ちゃんが座っていた。いつもなら、もう授業が始まるよとあきれるところだけど、今日はちがう。きっとわたしのお願いをきいてくれたんだと思う。

 わたしが近付くのに気付き、
「ちゃんと呼び出しましたの」
 と可愛らしい笑顔を投げかけてくれた。

「ありがとね、恵海ちゃん。ねえ、守屋くんみなかった?」

「帰りましたわ」

「え」

 言われてみると、たしかに机にはカバンが掛かっていない。

「朝礼の前に帰るのをみましたの。忘れ物をしたとか言ってましたわ」

「忘れ物?」

 恵海ちゃんは不思議そうに首をかしげる。

「三年ほど忘れてたそうですの」

 どこまで取りに帰る気なのよ。

 軽く頭を押さえる。まあ、いいや。教室を出ようとしたら、
「わたくしも行きましてよ」
 と恵海ちゃんがついてくる。

「もう授業、始まるよ?」

「みほ先輩こそ、ですのよ」
 と口をとがらせた。
 
 それも、そうねと頬がひきつる。

「急ごう、チャイムが鳴る前に」

 以前、守屋くんに教えてもらったひとの来ない場所。屋上へつながる上り階段へ向かう、そこにはもう彼が待っていた。恵海ちゃんに呼んでもらったその子に声をかける。

 ううん、探偵ポーズは恥ずかしいからしないの。

「呼び出してごめんね」

 そっと目を閉じて、考えたことを確認する。うん、だいじょうぶ。

 パッと目を開き、
「古越悠斗くん。あなたが犯人ね」
 そう言った。


──♧13

 通勤、通学のラッシュが終わった後に、制服で街を歩くのはなんだか背徳感があって高揚してしまうね。思わず、ハマってしまいそうだよ。

 ぼくは学校を抜け出して、トボトボと歩いていた。はて、もう朝礼は終わった頃だろうか。

 そろそろぼくのサボタージュがバレたかもしれないね。鬼柳ちゃん辺りはあきれてるかもしれないなと思うと、口もとが緩んでしまう。

 遠目ながら懐かしい建物がみえてきた。あまりの大きさに当時は圧倒されていたけれど、今となれば、すこし小ぢんまりと感じるものだね。

 懐かしき我が学び舎、『鱈夢小学校』だ。まさかふたたび訪れる日がこようとは思わなかったな。もう授業が始まっているのだろうか。校庭のグラウンドには、人影ひとつなかった。

 こちとら中学校をサボタージュしてきた身だ、中に入っていくわけにもいくまいて。ぐるりと学校の塀周りをトボトボと散歩していく。学校のすぐ脇にあった公園には、すくないながらも遊具があった。

 ちいさなシーソーに、ジャングルジム、クルクルと回る謎の遊具は使用禁止の貼り紙がしてあった。楽しい遊具なんだけど、危険とみなされたのかな。時代だね。

 そして、ブランコには見知った顔がひとつ。うつむき加減にゆらゆらと揺れている。なんとなく、ここにいるんじゃないかとは思っていた。

 ぼくが近付くと顔を上げ、その視線はみるみるうちに鋭くなった。

「……守屋っ」

 苦々しく放たれる言葉に、ぼくも思わず苦笑いになってしまう。

「小学校をみにきたのかな?」

 返事はない。

 ひと呼吸おく。探偵ポーズをすれば怒るだろうね。やめておこうか。

 そして浅く息を吐き、
「古越芽生さん、きみが犯人だね」
 そう言った。
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