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探偵の裏側
探偵試験──追試
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あれから数日、ぼくたちは平和な時を過ごしていた。誘拐は連日おこなっていたので、本当に平和なのかは疑問だけどね。
琴音ちゃんから話は聞いていた。
「この間のお姉ちゃんが、小学校によく来るんです」
と。小学校に通う鬼柳ちゃんを想像すると、ランドセル姿になってしまうのはなぜだろうか。
さてさて、調査は捗っているのかな。
琴音ちゃんと家の前で別れ、ぼくも帰り道を行く。トトトッと後方から、聞き覚えのある歩幅の狭い靴音が聞こえてくる。そろそろ来る頃かな、とは思っていたけれども。
──随分と遅かったね。
おや? 前にもそんな事を思ったな。あれはいつだったか……。鬼柳ちゃんを試した時か。初めての謎だったね。あれからいくつもの謎で遊んできたものだ。
考えてみれば、そうだね。直接対決は初めての事かもしれないね。でも負けるわけにはいかないんだ。振り返ると予想通り、鬼柳ちゃんがいた。だがどうにもスッキリとしない顔をしている。
「さあ、推理を聞こうか」
「うん。でも、あのね」
鬼柳ちゃんはそのまま話し始めたが、ぼくの足にはすでに疲労が溜まっている。今日も小中学校をぐるっと周った後だ。
「ごめん、帰りながらでいいかな。足が疲れちゃってさ」
歩き始めたぼくの横にススっと並びながら、鬼柳ちゃんは言った。
「それが分からないのよ。小学校の周りだけで良かったんじゃないの?」
ふむ、そういう事か。にへらと笑うぼくを見て、鬼柳ちゃんはむすっとしてしまった。そして探偵は推理を口にし始めた。
「琴音ちゃんの小学校で、いろいろ聞き込んでみたの。すぐに分かったわ。彼女を良く思ってないグループがあるって事が」
「うん」
ぼくの目をじっと見上げて来た。
「琴音ちゃんは、いじめられているの?」
「『いた』だね。今は止まったみたいだ」
公園で琴音ちゃんと会った時、彼女は苦手な木登りをしていた。涙を目に溜めながら。帰らないのではなく、帰れなかったんだ。公園のシンボルとも言える樹木から、ランドセルが生えていたからね。
いじめの理由は詳しく聞いていないけれど、鬼柳ちゃんにぼくが蹴飛ばされた時のあの反応、震えていたね。それにお嬢さんと呼ばれるのを毛嫌いしてた所から察するに、想像に難くない。
鬼柳ちゃんはカバンを後ろ手に持ち、少し上を眺めながら呟いた。
「それで守屋くんが、彼氏のフリをしてたのね」
「まあ、そうだね」
ぼくの姿をじろじろと眺め、
「あんまり強くなさそうなのにね」
ふふっと、笑みをこぼした。
それは──ぼくもそう思う。
「小学生相手なら、ぼくでも抑止力になれるらしいよ」
情けない宣言だ。それに、そばに誰かがいるという事が大事なのだろう。
「見せつける為に、小学校周りを歩いてたのね」
そうだよと言う代わりに頷いておいた。ここまで順調に推理を披露してきた鬼柳ちゃんだったが、はたと止まってしまった。
「分かるのはここまでなの」
小さな肩を落とし、しょんぼりとしてしまった。力ない視線が飛んでくる。
「中学校も周っているのは、 頑なに誘拐犯だって言うのはどうしてなの? もう学校でも噂になって来てるよ」
答えるわけには、いかないな。
「探偵が犯人に聞いちゃあ、ダメだよ」
苦笑いで返しておく。今までは別に犯人がいたけれど、今回はぼくが犯人だ。なるしかなかった。意図があるからね。鬼柳ちゃんは知らなくても良いことだけど。
鬼柳ちゃんは言葉につまっているようだ。どうやらこの勝負、ぼくの勝ちのようだね。そう思ったとき、思わぬところから斬りかかられた。
琴音ちゃんから話は聞いていた。
「この間のお姉ちゃんが、小学校によく来るんです」
と。小学校に通う鬼柳ちゃんを想像すると、ランドセル姿になってしまうのはなぜだろうか。
さてさて、調査は捗っているのかな。
琴音ちゃんと家の前で別れ、ぼくも帰り道を行く。トトトッと後方から、聞き覚えのある歩幅の狭い靴音が聞こえてくる。そろそろ来る頃かな、とは思っていたけれども。
──随分と遅かったね。
おや? 前にもそんな事を思ったな。あれはいつだったか……。鬼柳ちゃんを試した時か。初めての謎だったね。あれからいくつもの謎で遊んできたものだ。
考えてみれば、そうだね。直接対決は初めての事かもしれないね。でも負けるわけにはいかないんだ。振り返ると予想通り、鬼柳ちゃんがいた。だがどうにもスッキリとしない顔をしている。
「さあ、推理を聞こうか」
「うん。でも、あのね」
鬼柳ちゃんはそのまま話し始めたが、ぼくの足にはすでに疲労が溜まっている。今日も小中学校をぐるっと周った後だ。
「ごめん、帰りながらでいいかな。足が疲れちゃってさ」
歩き始めたぼくの横にススっと並びながら、鬼柳ちゃんは言った。
「それが分からないのよ。小学校の周りだけで良かったんじゃないの?」
ふむ、そういう事か。にへらと笑うぼくを見て、鬼柳ちゃんはむすっとしてしまった。そして探偵は推理を口にし始めた。
「琴音ちゃんの小学校で、いろいろ聞き込んでみたの。すぐに分かったわ。彼女を良く思ってないグループがあるって事が」
「うん」
ぼくの目をじっと見上げて来た。
「琴音ちゃんは、いじめられているの?」
「『いた』だね。今は止まったみたいだ」
公園で琴音ちゃんと会った時、彼女は苦手な木登りをしていた。涙を目に溜めながら。帰らないのではなく、帰れなかったんだ。公園のシンボルとも言える樹木から、ランドセルが生えていたからね。
いじめの理由は詳しく聞いていないけれど、鬼柳ちゃんにぼくが蹴飛ばされた時のあの反応、震えていたね。それにお嬢さんと呼ばれるのを毛嫌いしてた所から察するに、想像に難くない。
鬼柳ちゃんはカバンを後ろ手に持ち、少し上を眺めながら呟いた。
「それで守屋くんが、彼氏のフリをしてたのね」
「まあ、そうだね」
ぼくの姿をじろじろと眺め、
「あんまり強くなさそうなのにね」
ふふっと、笑みをこぼした。
それは──ぼくもそう思う。
「小学生相手なら、ぼくでも抑止力になれるらしいよ」
情けない宣言だ。それに、そばに誰かがいるという事が大事なのだろう。
「見せつける為に、小学校周りを歩いてたのね」
そうだよと言う代わりに頷いておいた。ここまで順調に推理を披露してきた鬼柳ちゃんだったが、はたと止まってしまった。
「分かるのはここまでなの」
小さな肩を落とし、しょんぼりとしてしまった。力ない視線が飛んでくる。
「中学校も周っているのは、 頑なに誘拐犯だって言うのはどうしてなの? もう学校でも噂になって来てるよ」
答えるわけには、いかないな。
「探偵が犯人に聞いちゃあ、ダメだよ」
苦笑いで返しておく。今までは別に犯人がいたけれど、今回はぼくが犯人だ。なるしかなかった。意図があるからね。鬼柳ちゃんは知らなくても良いことだけど。
鬼柳ちゃんは言葉につまっているようだ。どうやらこの勝負、ぼくの勝ちのようだね。そう思ったとき、思わぬところから斬りかかられた。
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