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第28章 ノインキルヘン会談
第28章-⑥ ディナーへの誘い
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帝国においては帝都と呼ばれ、政治面、軍事面、経済面でも中心地となした都市ヴェルダンディは、人口規模においても国内で群を抜いている。ただ、都会地域の特徴として、多くの場合、食料消費が現地での生産を上回るという点が挙げられる。つまり、ヴェルダンディの人口を養うには、ヴェルダンディとその近郊だけで生産する食料だけでは足りないということだ。保存の利く食料などは、他地域からの輸送によって賄っていた。
帝都陥落の前後は、物流の状況も大きく悪化し、一時的に食料が不足する事態に陥った。もともとヘルムス政権の継戦政策の一環として大都市では食料を含む物資が大量に徴発されたため、在庫も乏しい。教国軍や合衆国軍が積極的に物資の開放を行っていなかったら、飢餓に陥った民は多かったはずである。
ただ、治安が早期に回復し、物流や物価の状況も安定化したことから、ヴェルダンディでは民衆が生活する上での大きな混乱はなく、レストランや酒場の類も品薄に悩まされつつ、営業しているところが多い。
シフがエミリアを伴って入店したレストランも、高級店ではないが、意外に活気があり、市民だけでなく教国兵や合衆国兵もちらほらと姿を見せ、敗戦直後とは思えない和やかな雰囲気で食事を楽しんでいる。
「帝都防衛隊のクメッツ中佐という者に聞きました。この街で素敵な女性を誘うなら、こういう落ち着いた店がいいと。正解だった」
「そうですか」
にこやかなシフに対し、エミリアの反応は冷淡を通り越して冷酷でさえある。
シフはそれでも、やわらかい態度を崩さない。
「この店は、シュニッツェルがいいそうです。ワインはいかがですか?」
「アルコールは遠慮します」
「ではレモネードにしましょうか」
石、というよりは岩のように表情の硬いエミリアを前に、シフは思わず苦笑いをした。
「ひどく警戒をなさっているようだ。無理もありませんが、私には真実、一人の男性として女性をお誘いした、それ以上の下心などはありません」
笑顔を見せて相手の警戒を解いた方が情報を得やすい、とクイーンが言っていたのを思い出し、エミリアは努力して口角を上げた。あまりに不自然で、きっと異様な表情になっているだろうと思ったが、効果はあったらしい。シフも例の爽やかな笑みで返した。
「私は片腕なので、作法にかなった食事ができません。お見苦しい際は、ご容赦ください」
「いえ、ご一緒できるだけでも光栄ですし、うれしく思っています。どうかお気を楽に」
できるものか、とエミリアは内心で毒づきながら、またしてもぎこちなく表情を明るくした。
(まったく、私は何をやっているのか)
誤解をされることが多いが、彼女は別に笑顔が苦手なわけではない。クイーンや、仲の深い者と一緒にいるときは、自然と笑みがこぼれることがある。ただ、長く近衛兵団の要職にあって、部下には常に厳格に、距離を保って接してきただけだ。
彼女の場合、女性として男性のもてなしを受けたこともなければ、相手の真意を探るためにその誘いを受け、ともに食事したこともない。仕事だ、と割り切ってはいるものの、どうも慣れない。
会話をしている限り、特に不自然な様子はない。クイーンとは私的なお話をされるのか、それはどのような話か、王宮はいずれ大統領とともに訪ねてみたいがどのようなところか、エミリア個人についても、趣味は何か、片腕でも乗馬に差支えはないのか、同盟領や共和国領の食事の味はどうかなど、当たり障りのないことばかりを聞いてくる。
(この男は、世間話をするために私を呼んだのか)
エミリアは分かっていないが、彼女のように日々のほぼすべての時間が公務に埋め尽くされている者というのはごくごく例外的で、世の男女というのは当たり障りのない世間話をしながら仲を深めていくものである。
だが、シュニッツェルを食べ終え、食後の余韻の時間のなかで、ある話題に触れられて、彼女の緊張感は一気にはね上がった。
「そういえば、ぜひ聞いてみたかったのです。術者のこと」
ぎくりとしたが、彼女は目をぼんやりとさせて、心理を読まれぬよう注意した。
「私に何を聞きたいのでしょう」
「合衆国側の受け止め方は、おおよそ半信半疑といったところです。いや、どちらかというと信より疑の方が多数派かな。術者などいるわけがない、と断言する者はいるが、まるきり信じ込む者はいないので」
「そうでしょうね」
「ただ、教国政府の公式発表でもありますから、完全な虚構と断ずることも難しい。私としては、真実にとても興味があります」
この件こそ、この男の真の目的か、とエミリアは瞬間で察知した。術者の存在については、会談を含めた公式の場で話題にされたことは一度としてなかった。ブラッドリー大統領は恐らく、シフの言う疑の派閥に属しているのであろう。術者の話など、政治的交渉の材料にはなりえない、と思っているのかもしれない。一方で気にかかってはいて、こうして護衛担当者を使い、内情を探らせているのかもしれない。
不用意なことは言えない、とエミリアは思った。
「政府の発表がすべてです。盲人の術者が現れ、クイーンのお命を狙い奉ったが、たまたま宮殿内に別の術者がおり、暗殺を阻んだ。盲人の術者は近衛兵団が捕らえたものの、逃亡して現在は行方知れず、ということです」
「あなたは常に女王陛下と行動をともにされている。襲撃されたとは、具体的にどのような体験をされたのです」
「術を使われた、ということです」
「どのような術でしたか」
シフの執拗さに、彼の用件を確信する。術者について、彼は興味本位以上の動機でもって、知りたがっている。
エミリアはいよいよ表情をくもらせた。
「私もクイーンも必死でしたので、よく覚えておりません」
「何か覚えていることは」
「失礼ですが」
と、エミリアはすっくと席を立って告げた。
「私は帰ります」
唖然とした様子のシフを残して、エミリアは早足で店から去った。
(さて、どう出るかな)
シフの周辺には、シュリアが影のようにぴたりとついて、彼の一挙手一投足を監視しているはずだ。
その出方によっては、エミリア、というより教国側として動くべきように動かねばならない。内通の疑いがある近衛兵の件ともあわせて、最悪の場合、政治問題に発展するであろう。
いずれにしても、シュリアの報告を待つ必要がある。
帝都陥落の前後は、物流の状況も大きく悪化し、一時的に食料が不足する事態に陥った。もともとヘルムス政権の継戦政策の一環として大都市では食料を含む物資が大量に徴発されたため、在庫も乏しい。教国軍や合衆国軍が積極的に物資の開放を行っていなかったら、飢餓に陥った民は多かったはずである。
ただ、治安が早期に回復し、物流や物価の状況も安定化したことから、ヴェルダンディでは民衆が生活する上での大きな混乱はなく、レストランや酒場の類も品薄に悩まされつつ、営業しているところが多い。
シフがエミリアを伴って入店したレストランも、高級店ではないが、意外に活気があり、市民だけでなく教国兵や合衆国兵もちらほらと姿を見せ、敗戦直後とは思えない和やかな雰囲気で食事を楽しんでいる。
「帝都防衛隊のクメッツ中佐という者に聞きました。この街で素敵な女性を誘うなら、こういう落ち着いた店がいいと。正解だった」
「そうですか」
にこやかなシフに対し、エミリアの反応は冷淡を通り越して冷酷でさえある。
シフはそれでも、やわらかい態度を崩さない。
「この店は、シュニッツェルがいいそうです。ワインはいかがですか?」
「アルコールは遠慮します」
「ではレモネードにしましょうか」
石、というよりは岩のように表情の硬いエミリアを前に、シフは思わず苦笑いをした。
「ひどく警戒をなさっているようだ。無理もありませんが、私には真実、一人の男性として女性をお誘いした、それ以上の下心などはありません」
笑顔を見せて相手の警戒を解いた方が情報を得やすい、とクイーンが言っていたのを思い出し、エミリアは努力して口角を上げた。あまりに不自然で、きっと異様な表情になっているだろうと思ったが、効果はあったらしい。シフも例の爽やかな笑みで返した。
「私は片腕なので、作法にかなった食事ができません。お見苦しい際は、ご容赦ください」
「いえ、ご一緒できるだけでも光栄ですし、うれしく思っています。どうかお気を楽に」
できるものか、とエミリアは内心で毒づきながら、またしてもぎこちなく表情を明るくした。
(まったく、私は何をやっているのか)
誤解をされることが多いが、彼女は別に笑顔が苦手なわけではない。クイーンや、仲の深い者と一緒にいるときは、自然と笑みがこぼれることがある。ただ、長く近衛兵団の要職にあって、部下には常に厳格に、距離を保って接してきただけだ。
彼女の場合、女性として男性のもてなしを受けたこともなければ、相手の真意を探るためにその誘いを受け、ともに食事したこともない。仕事だ、と割り切ってはいるものの、どうも慣れない。
会話をしている限り、特に不自然な様子はない。クイーンとは私的なお話をされるのか、それはどのような話か、王宮はいずれ大統領とともに訪ねてみたいがどのようなところか、エミリア個人についても、趣味は何か、片腕でも乗馬に差支えはないのか、同盟領や共和国領の食事の味はどうかなど、当たり障りのないことばかりを聞いてくる。
(この男は、世間話をするために私を呼んだのか)
エミリアは分かっていないが、彼女のように日々のほぼすべての時間が公務に埋め尽くされている者というのはごくごく例外的で、世の男女というのは当たり障りのない世間話をしながら仲を深めていくものである。
だが、シュニッツェルを食べ終え、食後の余韻の時間のなかで、ある話題に触れられて、彼女の緊張感は一気にはね上がった。
「そういえば、ぜひ聞いてみたかったのです。術者のこと」
ぎくりとしたが、彼女は目をぼんやりとさせて、心理を読まれぬよう注意した。
「私に何を聞きたいのでしょう」
「合衆国側の受け止め方は、おおよそ半信半疑といったところです。いや、どちらかというと信より疑の方が多数派かな。術者などいるわけがない、と断言する者はいるが、まるきり信じ込む者はいないので」
「そうでしょうね」
「ただ、教国政府の公式発表でもありますから、完全な虚構と断ずることも難しい。私としては、真実にとても興味があります」
この件こそ、この男の真の目的か、とエミリアは瞬間で察知した。術者の存在については、会談を含めた公式の場で話題にされたことは一度としてなかった。ブラッドリー大統領は恐らく、シフの言う疑の派閥に属しているのであろう。術者の話など、政治的交渉の材料にはなりえない、と思っているのかもしれない。一方で気にかかってはいて、こうして護衛担当者を使い、内情を探らせているのかもしれない。
不用意なことは言えない、とエミリアは思った。
「政府の発表がすべてです。盲人の術者が現れ、クイーンのお命を狙い奉ったが、たまたま宮殿内に別の術者がおり、暗殺を阻んだ。盲人の術者は近衛兵団が捕らえたものの、逃亡して現在は行方知れず、ということです」
「あなたは常に女王陛下と行動をともにされている。襲撃されたとは、具体的にどのような体験をされたのです」
「術を使われた、ということです」
「どのような術でしたか」
シフの執拗さに、彼の用件を確信する。術者について、彼は興味本位以上の動機でもって、知りたがっている。
エミリアはいよいよ表情をくもらせた。
「私もクイーンも必死でしたので、よく覚えておりません」
「何か覚えていることは」
「失礼ですが」
と、エミリアはすっくと席を立って告げた。
「私は帰ります」
唖然とした様子のシフを残して、エミリアは早足で店から去った。
(さて、どう出るかな)
シフの周辺には、シュリアが影のようにぴたりとついて、彼の一挙手一投足を監視しているはずだ。
その出方によっては、エミリア、というより教国側として動くべきように動かねばならない。内通の疑いがある近衛兵の件ともあわせて、最悪の場合、政治問題に発展するであろう。
いずれにしても、シュリアの報告を待つ必要がある。
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