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第28章 ノインキルヘン会談
第28章-② 会談 第2日目
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ノインキルヘン会談の2日目早朝、シュリアがホテル「ケーニッヒシュトゥール」に戻っている。
「シュリアさん、いかがでしょう。ブラッドリー大統領の身辺で、何かつかめたことはありましたか?」
「移動中の大統領の周囲は思ったより厳重に守られており、特に警護主任のラリー・シフという男がうまく部下を統制していて、なかなか思い通りに事は運びませんでした」
「シュリアさんをもってしても、ということですか」
「ただ、ホテルの裏手から大統領私室に隣接する壁まで穴を開け、一部ですが会話を盗み聞きすることはできました」
「何を話していましたか?」
「帝国のみんしゅか、と言っていました」
「みんしゅか……」
無学なシュリアにはこの言葉の意味が分からない。ただ大統領とその側近、恐らくトンプソン補佐官だが、壁越しに何度かその単語が聞こえたという。
クイーンにはしかし、これだけでも重要な情報であると言えた。いやむしろ、会話の内容がありありと浮かんでくるらしい。
「シュリアさん、さすがです!」
「何か、役に立てましたか」
「えぇ、素晴らしいです。ブラッドリー大統領が今回の会談で何を狙っているのか、さらに未来をどのように描いているのか、よく分かりました」
「それはよかったです。で、次の仕事は」
「シュリアさん、少し休んでください。働きづめではないですか。たまにはお昼寝をしたり、お散歩をしたりして、休むことも大切ですよ」
「なるほど、では昼に寝て、夜は帝都の裏社会に探りを入れてきましょう」
そういう意味ではない、と言いたいのであろう。クイーンは目を丸くしたが、しかし何も言わず、にこにこと笑った。仕事をしたい、と張り切る者を無理に止めることもあるまい。
シュリアが退出したあと、教国代表団の唯一の文官と言っていいエミリアに善後策を諮った。この日は会談2日目ということで、ちょうど帝国の今後の政体について話を始めることになる。
「合衆国は帝国を民主化させることを目論んでいる、ということですか。さすがブラッドリー大統領、食えない人物です」
「そうね。でもここはあえて彼の希望をかなえるのがいいかと思う」
「まさか、帝国の民主化をお認めになるのですか?」
エミリアは容易に肯ぜられなかった。理由はこうである。
まず、オクシアナ合衆国流の民主共和主義は急進的な一面がある。かの国はかつてローレンシア帝国という、現在の合衆国領全域、レガリア帝国の一部となっている旧コーンウォリス公国、そして王国の植民地となっている旧ブリストル公国領、これらにまたがる広大な領土を持つ古典的専制国家の一部であったが、飢饉と重税への不満が近代民主主義思想の勃興と結びついて革命運動が起こり、そのなかでスタンリー・グリフィスという革命家が率いる武力蜂起が最も拡大し、中途まで成功した。結局、ローレンシア帝国をすべて吞み込むまでには至らなかったが、その領土の半ばほどをかすめ取って独立することとなり、その流れで誕生したのが現在のオクシアナ合衆国である。すなわち、合衆国の源流は民衆が自ら武装して民兵となり、その民兵の力によって革命を起こし、王を倒し、王制を破壊し、身分のない平等な社会を築くという理想にある。
こうした思想は危険であった。ロンバルディア教国やオユトルゴイ王国、スンダルバンス同盟の王らは警戒を強めた。当然であろう。合衆国流の革命手段による民主共和思想などが広まりを見せたら、王朝にとっての脅威になる。実際、オクシアナ合衆国の隣国である当時のバブルイスク帝国は、合衆国による「革命の輸出」の影響を受け、結果として王朝は滅んだ。もっともこちらは革命運動自体は合衆国の例と類似しているものの、脱皮したあとの新国家の姿は民主主義ではなく社会主義であったが。
いずれにしても、民主共和思想が広がるのは、王制を敷く教国にとっては好ましくない。まして、隣国であるレガリア帝国が民主化すれば、思想の潮流が変わり、教国へと影響が波及するかもしれない。
もう一つの理由としては、帝国の新体制に対する影響力の問題である。帝国が民主化すれば、思想的には教国よりも合衆国に近しい。直近はともかく、将来的には教国の影響力が薄れ、合衆国へとすり寄っていくことが予想される。国家の運営に関しても、同じ支配体制を採用する合衆国の助言や指導を受けることは多いであろうし、場合によっては新帝国が合衆国の事実上の傘下に入ってしまう懸念がある。
少なくとも、帝国の民主化を狙っている以上は、合衆国にそうした野心があることは念頭に置いておかねばならない。
だからこそ、この件で安易に合衆国に譲歩するようなことは避けるべきだ、とエミリアは考える。
しかし、彼女が危惧する程度のことを、クイーンが検討材料に入れていないはずもない。
クイーンは、エミリアに自身の意図を伝えた。
会談の再開とともに、今後の帝国の統治体制について議することとなった。つまりこの日、新たな帝国の国家としての中心核、その成分が決定されることになる。
議論が紛糾することが予想された。
「我々のすべては、エスメラルダ女王とブラッドリー大統領の話し合い次第で決まる。ただただ、見守るほかはない」
会談の直前、帝国の全権であるモルゲンシュテルン臨時首相は諦観したように側近に漏らしている。帝国の新しい姿を決めるのは、帝国人ではない。戦勝国が決める。どのような結論が出ても、彼らは従うしかない。
議題の冒頭、多くの者が予想したように、ブラッドリー大統領は自国と同様の民主共和主義を採用することを提案した。新しい帝国の指導者を決め、新国家の行く末を決めるのは、まさに人民自身であるべきで、それを最も過不足なく体現できるのは民主主義である。また君主や貴族といった存在を含む旧態依然とした身分社会はこの際、明確に否定し、人民自身が権力者として君臨する市民社会こそが新たな国家像にはふさわしい、と説いた。
こうしたスピーチは2時間近くにわたって繰り広げられたが、その言説には教国の絶対王政主義を陰に陽に批判する文脈が多く含まれている。このため議場は徐々に緊張の度を高めた。さながら、交渉の場は教国と合衆国による思想的対決の場へと変容しつつあるように人々には思われた。
ただ、クイーンは不快そうな表情は一切見せず、実に真剣に様子でブラッドリーの言葉に耳を傾け、しばしば手元にメモをとり、そして要所で質問を挟んだ。多くは、民主主義の欠陥や危険性、思想や体制の意義に関する疑問であった。例えば、無知な人民や主体性のない人民が政治に参加することにより引き起こされる問題、すなわち衆愚政治の構造的欠陥や、国王や貴族の存在を否定し、人民に主権が存するという点では同じでありつつも、人民自身の選挙によって選ばれた代表者が権力を執行するという民主主義が、一部のエリートの手で多数の人民を支配し管理するというバブルイスク連邦流の社会主義に対しどう優越しうるのか、といった点である。
ブラッドリーはそうした切れ味の鋭い本質的な疑問に対し、ときには思わず舌を巻きつつ、冷静さを保って回答を示した。
一通りの質疑が終わり、トンプソン合衆国大統領首席補佐官の提案で休憩を挟み、再開して開口一番、クイーンは改めて考えを述べた。
「ブラッドリー大統領、先ほどは非常に有意義なご提案、ありがとうございました。とても興味深く拝聴しました。私としては、帝国の民主化に賛成です」
エミリアを除く議場の全員が、この言葉に驚愕の色を表し、低いどよめきが室内に広がった。
ブラッドリーやトンプソンでさえ、唖然としている。顔色に出してしまうというのは、よほど予想外のことであったらしい。
だが、両者はクイーンの次の言葉に警戒感を強め、身を乗り出して聞き逃すまいとした。
「ただ、私としては民主化そのものの方向性には異存はないものの、あまりに急進的に運用すると帝国に大きな混乱が及ぶ可能性があると懸念しています。立法、行政や司法の仕組みなど、大枠は以前の姿を踏襲しつつ、一部に変更を加えて新政権を発足させ、漸進的に改革を新帝国の人民の手で進めていくのがよろしいかと思います」
(つまり、民主化は了承するが、すぐには我が国の好きにはさせぬ、ということか)
ブラッドリーは注意深く思考を整理しつつ、真意を探るため問いを投げた。
「一部に変更を加えて、と陛下はおっしゃいましたが、どの部分を残し、どの部分を変えて新政権を始められるのがよいと?」
「あくまでも腹案ですが、まずは選挙制度とその運用方法が定まるまでは、政権首座としてモルゲンシュテルン殿に引続きお願いしたいこと」
モルゲンシュテルンは意外な展開に口を大きく開けた。彼としては、旧ヘルムス政権の重要メンバーの一人で戦争指導にも深く関わっていただけに、時期がきたらその罪を追及されるのではないかとすら思っていたところだ。
「またヘルムス体制で人民の抑圧やさまざまな犯罪行為に関わっていた憲兵隊や特務機関といった組織を解体すること。新政権の支配権が国土の全域に浸透するまでは、体制の安定化に我が国と合衆国が協力して尽力すること。といったあたりと考えます」
しばらく考えたあと、ブラッドリーは小さく何度か頷いた。
「いいでしょう。大筋で合意します」
この瞬間、帝国の命運は定まった。いくつかの変更を加えた上で、当面は従来の体制を維持し、そしてゆくゆくは民主共和主義国家への変貌を目指していく。
会談2日目の最後は新国家の名称が検討され、「ノルン共和国」に決められた。
ノルンとは、レガリア帝国領内の広い地域に伝わる神話に登場する、運命の女神のことである。帝国人民にとっては耳に親しんでいる名前である。
旧国名であるレガリアが外されたのは、そもそもレガリアが王権の象徴となる物、例えば王冠や権杖のことを指す言葉であり、共和政体に移行するにあたってふさわしくないと判断されたからである。
ただし国名の変更などについては、本会談の終了後、新政権の発足とともに布告されることとなった。
2日目は前日よりも長丁場となり、多くの参加者に疲労が見られた。
散会後、ブラッドリー大統領でさえ肩をぐったりと落とし、しばし呆然とした。
「シュリアさん、いかがでしょう。ブラッドリー大統領の身辺で、何かつかめたことはありましたか?」
「移動中の大統領の周囲は思ったより厳重に守られており、特に警護主任のラリー・シフという男がうまく部下を統制していて、なかなか思い通りに事は運びませんでした」
「シュリアさんをもってしても、ということですか」
「ただ、ホテルの裏手から大統領私室に隣接する壁まで穴を開け、一部ですが会話を盗み聞きすることはできました」
「何を話していましたか?」
「帝国のみんしゅか、と言っていました」
「みんしゅか……」
無学なシュリアにはこの言葉の意味が分からない。ただ大統領とその側近、恐らくトンプソン補佐官だが、壁越しに何度かその単語が聞こえたという。
クイーンにはしかし、これだけでも重要な情報であると言えた。いやむしろ、会話の内容がありありと浮かんでくるらしい。
「シュリアさん、さすがです!」
「何か、役に立てましたか」
「えぇ、素晴らしいです。ブラッドリー大統領が今回の会談で何を狙っているのか、さらに未来をどのように描いているのか、よく分かりました」
「それはよかったです。で、次の仕事は」
「シュリアさん、少し休んでください。働きづめではないですか。たまにはお昼寝をしたり、お散歩をしたりして、休むことも大切ですよ」
「なるほど、では昼に寝て、夜は帝都の裏社会に探りを入れてきましょう」
そういう意味ではない、と言いたいのであろう。クイーンは目を丸くしたが、しかし何も言わず、にこにこと笑った。仕事をしたい、と張り切る者を無理に止めることもあるまい。
シュリアが退出したあと、教国代表団の唯一の文官と言っていいエミリアに善後策を諮った。この日は会談2日目ということで、ちょうど帝国の今後の政体について話を始めることになる。
「合衆国は帝国を民主化させることを目論んでいる、ということですか。さすがブラッドリー大統領、食えない人物です」
「そうね。でもここはあえて彼の希望をかなえるのがいいかと思う」
「まさか、帝国の民主化をお認めになるのですか?」
エミリアは容易に肯ぜられなかった。理由はこうである。
まず、オクシアナ合衆国流の民主共和主義は急進的な一面がある。かの国はかつてローレンシア帝国という、現在の合衆国領全域、レガリア帝国の一部となっている旧コーンウォリス公国、そして王国の植民地となっている旧ブリストル公国領、これらにまたがる広大な領土を持つ古典的専制国家の一部であったが、飢饉と重税への不満が近代民主主義思想の勃興と結びついて革命運動が起こり、そのなかでスタンリー・グリフィスという革命家が率いる武力蜂起が最も拡大し、中途まで成功した。結局、ローレンシア帝国をすべて吞み込むまでには至らなかったが、その領土の半ばほどをかすめ取って独立することとなり、その流れで誕生したのが現在のオクシアナ合衆国である。すなわち、合衆国の源流は民衆が自ら武装して民兵となり、その民兵の力によって革命を起こし、王を倒し、王制を破壊し、身分のない平等な社会を築くという理想にある。
こうした思想は危険であった。ロンバルディア教国やオユトルゴイ王国、スンダルバンス同盟の王らは警戒を強めた。当然であろう。合衆国流の革命手段による民主共和思想などが広まりを見せたら、王朝にとっての脅威になる。実際、オクシアナ合衆国の隣国である当時のバブルイスク帝国は、合衆国による「革命の輸出」の影響を受け、結果として王朝は滅んだ。もっともこちらは革命運動自体は合衆国の例と類似しているものの、脱皮したあとの新国家の姿は民主主義ではなく社会主義であったが。
いずれにしても、民主共和思想が広がるのは、王制を敷く教国にとっては好ましくない。まして、隣国であるレガリア帝国が民主化すれば、思想の潮流が変わり、教国へと影響が波及するかもしれない。
もう一つの理由としては、帝国の新体制に対する影響力の問題である。帝国が民主化すれば、思想的には教国よりも合衆国に近しい。直近はともかく、将来的には教国の影響力が薄れ、合衆国へとすり寄っていくことが予想される。国家の運営に関しても、同じ支配体制を採用する合衆国の助言や指導を受けることは多いであろうし、場合によっては新帝国が合衆国の事実上の傘下に入ってしまう懸念がある。
少なくとも、帝国の民主化を狙っている以上は、合衆国にそうした野心があることは念頭に置いておかねばならない。
だからこそ、この件で安易に合衆国に譲歩するようなことは避けるべきだ、とエミリアは考える。
しかし、彼女が危惧する程度のことを、クイーンが検討材料に入れていないはずもない。
クイーンは、エミリアに自身の意図を伝えた。
会談の再開とともに、今後の帝国の統治体制について議することとなった。つまりこの日、新たな帝国の国家としての中心核、その成分が決定されることになる。
議論が紛糾することが予想された。
「我々のすべては、エスメラルダ女王とブラッドリー大統領の話し合い次第で決まる。ただただ、見守るほかはない」
会談の直前、帝国の全権であるモルゲンシュテルン臨時首相は諦観したように側近に漏らしている。帝国の新しい姿を決めるのは、帝国人ではない。戦勝国が決める。どのような結論が出ても、彼らは従うしかない。
議題の冒頭、多くの者が予想したように、ブラッドリー大統領は自国と同様の民主共和主義を採用することを提案した。新しい帝国の指導者を決め、新国家の行く末を決めるのは、まさに人民自身であるべきで、それを最も過不足なく体現できるのは民主主義である。また君主や貴族といった存在を含む旧態依然とした身分社会はこの際、明確に否定し、人民自身が権力者として君臨する市民社会こそが新たな国家像にはふさわしい、と説いた。
こうしたスピーチは2時間近くにわたって繰り広げられたが、その言説には教国の絶対王政主義を陰に陽に批判する文脈が多く含まれている。このため議場は徐々に緊張の度を高めた。さながら、交渉の場は教国と合衆国による思想的対決の場へと変容しつつあるように人々には思われた。
ただ、クイーンは不快そうな表情は一切見せず、実に真剣に様子でブラッドリーの言葉に耳を傾け、しばしば手元にメモをとり、そして要所で質問を挟んだ。多くは、民主主義の欠陥や危険性、思想や体制の意義に関する疑問であった。例えば、無知な人民や主体性のない人民が政治に参加することにより引き起こされる問題、すなわち衆愚政治の構造的欠陥や、国王や貴族の存在を否定し、人民に主権が存するという点では同じでありつつも、人民自身の選挙によって選ばれた代表者が権力を執行するという民主主義が、一部のエリートの手で多数の人民を支配し管理するというバブルイスク連邦流の社会主義に対しどう優越しうるのか、といった点である。
ブラッドリーはそうした切れ味の鋭い本質的な疑問に対し、ときには思わず舌を巻きつつ、冷静さを保って回答を示した。
一通りの質疑が終わり、トンプソン合衆国大統領首席補佐官の提案で休憩を挟み、再開して開口一番、クイーンは改めて考えを述べた。
「ブラッドリー大統領、先ほどは非常に有意義なご提案、ありがとうございました。とても興味深く拝聴しました。私としては、帝国の民主化に賛成です」
エミリアを除く議場の全員が、この言葉に驚愕の色を表し、低いどよめきが室内に広がった。
ブラッドリーやトンプソンでさえ、唖然としている。顔色に出してしまうというのは、よほど予想外のことであったらしい。
だが、両者はクイーンの次の言葉に警戒感を強め、身を乗り出して聞き逃すまいとした。
「ただ、私としては民主化そのものの方向性には異存はないものの、あまりに急進的に運用すると帝国に大きな混乱が及ぶ可能性があると懸念しています。立法、行政や司法の仕組みなど、大枠は以前の姿を踏襲しつつ、一部に変更を加えて新政権を発足させ、漸進的に改革を新帝国の人民の手で進めていくのがよろしいかと思います」
(つまり、民主化は了承するが、すぐには我が国の好きにはさせぬ、ということか)
ブラッドリーは注意深く思考を整理しつつ、真意を探るため問いを投げた。
「一部に変更を加えて、と陛下はおっしゃいましたが、どの部分を残し、どの部分を変えて新政権を始められるのがよいと?」
「あくまでも腹案ですが、まずは選挙制度とその運用方法が定まるまでは、政権首座としてモルゲンシュテルン殿に引続きお願いしたいこと」
モルゲンシュテルンは意外な展開に口を大きく開けた。彼としては、旧ヘルムス政権の重要メンバーの一人で戦争指導にも深く関わっていただけに、時期がきたらその罪を追及されるのではないかとすら思っていたところだ。
「またヘルムス体制で人民の抑圧やさまざまな犯罪行為に関わっていた憲兵隊や特務機関といった組織を解体すること。新政権の支配権が国土の全域に浸透するまでは、体制の安定化に我が国と合衆国が協力して尽力すること。といったあたりと考えます」
しばらく考えたあと、ブラッドリーは小さく何度か頷いた。
「いいでしょう。大筋で合意します」
この瞬間、帝国の命運は定まった。いくつかの変更を加えた上で、当面は従来の体制を維持し、そしてゆくゆくは民主共和主義国家への変貌を目指していく。
会談2日目の最後は新国家の名称が検討され、「ノルン共和国」に決められた。
ノルンとは、レガリア帝国領内の広い地域に伝わる神話に登場する、運命の女神のことである。帝国人民にとっては耳に親しんでいる名前である。
旧国名であるレガリアが外されたのは、そもそもレガリアが王権の象徴となる物、例えば王冠や権杖のことを指す言葉であり、共和政体に移行するにあたってふさわしくないと判断されたからである。
ただし国名の変更などについては、本会談の終了後、新政権の発足とともに布告されることとなった。
2日目は前日よりも長丁場となり、多くの参加者に疲労が見られた。
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