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理由

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 最初に皇帝レクサンドを刺した女官は、スハウィンとの戦争で一人息子を亡くした。

 隣国の病院に入院していたのだが、帝国の爆撃を受けて入院患者も医療関係者も全員亡くなった。
 その知らせを受け取った女官は嘆いた。まさか病院まで攻撃しようとは……国外脱出という人道的措置すら無く、皆殺しとは。

 嘆いて嘆いて、涙が枯れるまで泣いて、彼女はレクサンド皇帝への復讐を誓った。

 戦時中の人手不足と、城の混乱もあって、女官が息子を亡くしたことを知る者も少なかった。





 開戦時の帝国側の言い分はこうだ。

『スハウィン東部の親ベレスティグ派が居住地域を念頭に【その地域住民がベレスティグに助けを求めているから、特別な軍事作戦を実施する】【スハウィン政府によって虐げられてきた人々を保護するためだ】

 確かに東部には親ベレスティグ派の住民がいる。過去に諍いがあったのも確かだ。だが帝国が言うような弾圧も虐殺も無かった。要するにその諍いが、口実として利用されたのだ。事実、諍いの仲裁に入ったベレスティグ大使と関係者が、その諍いでは死人は出なかった旨を公文書に記している。

『スハウィン政府によって弾圧された人を保護、そのためにスハウィンの非武装化をはかる』
『スハウィン領土の占領については計画にない』というウソの大義名分を高々と掲げて、帝国は侵攻を開始した。
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