上 下
54 / 66
2章レルス王国編

亜人③

しおりを挟む
「悪い、遅くなったな。暖めなおしたカレーだ。まずは食え。ゆっくりな。」

「「あ、ありがとうございます…。」」

姉弟2人ともカレーを受け取ると感動しながら食っていた。亜人たちは今まで何を食って生きてきたのか気になるところだな。

「もう、大丈夫なの?」

ルアが隣からコソッと聞いてきた。さっきはあんなぶざまな醜態を晒したからな。

「あぁ。大体はな。明日には治ってると思う。」

「そっか…。私に出来ることがあれば言ってね?」

「…!おお。」

ルアもエマも同じことを言ぅんだな。そこまで俺は隠しているつもりは無いんだが。

「なら、全部終わったら軽~く回復魔法でもかけてくれないか?」

「うん!分かった!」

それにしてもこれから時間魔法を使う時は用心しよう。特に今回の魔法はちょっとヤバすぎた。

これを戦闘に上手く使えば役に立つと思うんだが、リスクが大きすぎるからなしだな。  

「あの…ごちそうさまでした…。」

「あぁ。全員に配ってるから気にするな。」

「私はミラと申します。」「俺はレオン!」

「以後あなたに私の生涯の忠誠を誓います。」

急に姿勢を整えて何を言うかと思ったらまさかの忠誠を誓われてるんだけど。どうして?というかルアは笑ってるんだけど?なんで笑ってんの?

「いや、別にそんなことしなくていいぞ。他の亜人と、同じようにしてくれればいいから。」

「…!わかり…ました…。では何かあればすぐにお申し付けください。タイチ様、ルア様」

「お、おぅ。」

ということでミラから忠誠を誓われた。よく分からないが結果としてはいい方だな。

俺はミラの状態を確かめたら姉弟とは別れた。

「ねぇ、タイチはどうして亜人にこんなことしてるの?ちょっとらしくない感じがする。」

失礼な…とは言いきれないな。

「あぁ~。まぁ、仲間を増やすって意味ではこうしておいた方がいいだろう?」
 
城では恐怖で従わせようとした。それでは裏切りに会いやすくなる。別に従わせるつもりはなかったし、あそこでのみやり過ごせれば何でも良かったんだがな。今回は懐柔だ。俺は恐怖を与える方が向いているから懐柔するのは確かに違和感を感じるのかもしれない。

「ん~。そうなんだけどさ?ミラちゃんみたいにタイチが傷ついてまでやるのは珍しいなぁって思って…。」

そこに気づくのかよ。確かにあれは仕方ないで済ませれた部分かもしれない。

「まぁ。気が変わっただけだ。俺とルアは無敵だろ?それを証明したかった。」

「ふふっ。なるほど~!」

ルアは笑顔で俺の腕に抱きついて来た。何か嬉しいことでもあったのかね?

さて、あと一仕事するか。





俺はもう一杯カレーをそそいで1人で俺を刺したガキの亜人の元にむかった。俺の宣誓が終わったあとアイツはずっと壁にもたれかかったまま動こうとしていなかった。

「よう。元気そうで何よりだ。俺が作ったカレーでも食え。」

俺はガキの前にカレーを置いて隣に座る。

「……いらない。」

俺の方をちらっと見たらすぐに自分の足元に目を落とした。

「食わなきゃ生きることも出来ねぇぞ。」

「……獣に生きる資格あるのかよ。」

「獣じゃないって言ってるだろ?」

「……俺は獣だろ。」

「心があるんだ。お前は獣じゃない。亜人だ。」

「……あんたは俺を恨まないのか?俺はあんたを殺そうとして刺したたんだぞ。」

「あのナイフをやったのは俺だ。刺されたのは俺の責任だ。そそもそも俺は死なねぇ。俺は目的を果たすまでは死ぬつもりは無いからな。だからお前のことも恨んでいない。」

まぁ、未だにあのクソ帝国と勇者は許してないがな。生涯許すつもりは無い。アイツらが何をしようとも絶対に許さん。

「死のうとか考えるなよ?」

「…!?」

やっぱりか。何となくこんなことを考えてるんじゃないかと思ってたんだ。だからわざわざカレーを持ってきた訳だが。

「お前の親はお前を守るために死んだんだ。その命を自分で捨てるのは侮辱もいいところだぞ?」

「……じゃあどうすればいいんだよ?」

「知るか。自分で考えろ。生きてれば辛いこともある。お前みたいな経験してる奴もいる。そんな中でどうやって生きるかを考えろ。」

「……俺には出来ないよ。」

「チッ!移動するぞ。ガキ。」

俺は無理矢理ガキとカレーを移動させる。

「何すんだよ!?それとガキじゃない!レイだ!」

「うるせー。まだガキで十分だ。オラ!」

「うわっ!」

俺はガキを投げてミラとレオン姉弟の元に入れる。

「えっ?ご主人様!?」「あんた何やってんだよ!?」 

ミラからの呼び方がタイチ様からご主人様に変わってる…。これはダメだな。

「レオン!ご主人様に向かってなんて口の利き方!」 
「いたっ!いや、だって!」
「いや、別に気にするな。ミラも俺の事ご主人様って呼ばなくていいからな。」
「分かりました!ではタイチ様と呼びます。」

あぁ、うん。もうそれでいいや。これ以上は言っても変わらないだろうし。

「お前らって親とかいるの?」

「いえ、いません。死にました。」 

やっぱりそうか。まぁ、2人だけ奴隷になったって聞いた時から何となくそうじゃないかなって思ってたんだが。

「そうか。なら、このガキのこと頼むわ。何とかカレーでも食べさせてやってくれ。」

「はい!お任せ下さい!!」

何となくだがあのガキとミラ姉弟の相性はいいと思う。ガキと同じように姉に庇ってもらったレオン。ガキの親と同じように弟を庇ったミラ。そのふたりと一緒にいればまァなんとかなるだろ。

俺は3人に背を向けてルアとエマの元に歩いていたら、

「あの…タイチさま…。」

「ん?シファか。」

エマと勉強していたシファと出会った。ということはエマも今はルアといっしょにいるということだろう。

「シファって親とかいるのか?」

ちょっと気になって尋ねてみた。奴隷市場でも兎の亜人は見た気がしなかった。カレー取りに来た時も1人だったし。

「い、いえ…病気で…。」

「そっか。ちょっとこっち来てくれないか?」

「は、はい!」

俺はシファをさっきの3人組の所に連れていった。身寄りのない子供4人組。仲良くなったらまぁいい感じに収まるだろう。

「「おかえりー!」」

いつの間にかルアとエマのところまで戻っていた。2人とも俺を見た瞬間に飛びついて来たから一瞬反応が遅れてしまった。

「おう。ただいま。」
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ
ファンタジー
【小説家になろう】さまにて作品を先行投稿しています。 俺、畑中幸司。 過疎化が進む雪国の田舎町の雑貨屋をしてる。 来客が少ないこの店なんだが、その屋根裏では人間じゃない人達でいつも賑わってる。 賑わってるって言うか……祖母ちゃんの頼みで引き継いだ、握り飯の差し入れの仕事が半端ない。 食費もかかるんだが、そんなある日、エルフの女の子が手伝いを申し出て……。 まぁ退屈しない日常、おくってるよ。

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

スキルを極めろ!

アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作 何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める! 神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。 不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。 異世界でジンとして生きていく。

処理中です...