上 下
44 / 66
2章レルス王国編

治療

しおりを挟む
「魔力が回復しないって言う病気治してやろうか?」

「えっ?治るの?王国のどんなに優秀な医者でも治すどころか原因もわからなかったというのに?」

「あぁ。多分治せると思うぞ。少なくとも原因はわかってるわけだし。ただ治すには…」

「タイチ~~!!!」

来たな。

「ルアっ!」

そもそもの話、なんでエマがゲートを通ってここに来ることができたのか…。これには理由がある。俺の部屋には魔法陣を書いていた。部屋のドアを開けたらゲートが開くように。なぜこんなものを作ったか?簡単だ。ルアが俺を襲ってくることがあるからだ。

寝ぼけたまま俺の布団に入ってくることだってあった。ルアが隣の部屋で寝ていてもこっちに来る可能性を否定できない。いつ来ても俺がすぐ戻れるように魔法陣を設置した。まさかエマが来るとは思わなかったけど。

「あれっ?ここ帝国だっけ?一番最初の場所だよね?」

ゲートで繋いだ先はラギルダンジョンから出たすぐの場所。ゲートは魔力でマークした場所ならどこでも飛ぶことが出来る。だから、出てすぐにこの場所をマークしたのだ。いつでも帰って来れるようにな!

「正解だ!」

「あっ…。エマちゃん…。もしかして…邪魔した?」 

「いいや、全く。むしろルアが来てくれて助かった。」

「少しは否定しなさいよ…!」

そんなこと言われてもなぁ。別に盛る訳でもないんだし。それにエマの病気を治すのにルアは必要だし。

「ルア、今からエマの病気を治す。手伝ってくれないか?」

「もちろんだよ!エマちゃんはタイチの嫁仲間だからね!」

そんな仲になっていたのか…。あとは俺次第ってか?というかルアが認めてる状態で俺にはどうしようもないけど。そんなことは後回しだ。

「よし!それじゃあ説明するぞ。エマの病気の原因は…簡単に言うと魔力溜りっていうとこか。」

「「魔力溜り?」」

「あぁ。魔力は身体中を流れているんだろ?」

「うん、そうだよ」とルアが同意してくれる。

「その魔力が流れている回路がつまってるんだよ。魔力でな。」

魔力を血液、魔力が流れている回路を血管と考えたら分かりやすか。だから、魔法の威力も弱くなる。回復するのにもどこかで流れなくなるから回復も遅くなる。

「原因はわかってもどうやって治すのよ?」

ま、当然の質問だな。

「俺は魔力を大量に流せば詰まっている部分の魔力が流れるんじゃねぇかな?って思ってる。これに関しては確証はないな。まぁ、治せるかもしれないぐらいに考えてくれ。」

「でも、どうやって魔力を流すのよ?」

「魔力操作を使う。」

魔力操作は己の魔力をコントロールするスキルだ。ならばそれを上手く利用すれば相手に魔力を流せるかもしれない。ただ、相手の体に触れなければならないが。

「でも、それならタイチだけでできるでしょ?なんで私まで?」

「まぁ、予想だけど俺の魔力を流して詰まっている部分が流れる。それならエマの体にとんでもない魔力が流れることになるだろ?俺の予想では魔力が暴走するか、とんでもない威力の魔法が発動すると思うんだよ。だから、そうなった時に…」

「私の魔法で相殺するため…。」

「それ、私は大丈夫なの?」

「そういうこと。反魔法なら何とかなるかもしれないからな。多分エマは大丈夫だと思うけど、とんでもない痛みはあるかもな。だが、覚悟を決めたんだろ?なら、これぐらい乗り切って見せろ。」

反魔法に魔法を消すような効果があるかもしれないという期待がある。無理でもどこかに飛ばしてくれればいい。ここは帝国だから問題になることもないだろうし。

エマにはとてつもない痛みがある。そもそも自分の許容量以上の魔力を注ぐのだ。そんなもの苦痛に決まってる。風船に許容以上の空気を入れるとわれる。今からすることはそれと似たような事だ。

「ええっ!生半可な覚悟じゃないわ!私が変わる最初の試練よ。それぐらい乗り切ってやるわ。」


「わかった!反魔法なら解決できるよ!」

「よし、それじゃあエマ!




服を脱いでくれ。」

「変態!!!」

「うぉっ!」

急にエマが殴りかかってきた。

「スケベ!」「クズ野郎!!」

「んな事言ったって俺に背中見せるぐらい我慢してくれ!」

急にエマの暴行が止まった。

「あぁー背中…。背中なのね。まぁ、それなら許可するわ…!でも、どうして背中なのよ?」

…?なんで急に大人しくなってんだ?

「背中に魔力が溜まってる場所があるからだよ。」

そもそもどうして俺がエマの病気が分かったのか。これは俺の義眼が関係している。エマを最初に見た時にエネルギーの塊があるのが物理眼で捕えることができた。最初はそれがなにか全くわからなかったが、話を聞いて魔力だとわかった。

物理眼でこの世界の人を見るとエネルギーが循環していることが分かる。そのエネルギーは魔力だと俺は予想している。

「…?どこだと思ったんだよ?」

「背中だと思ってたわよ!えぇ、思ってたわ!」

「……!!そういうことか。俺にどこ触られると思ってんだ??えぇ??背中じゃなくてもっと別の場所想像してたんじゃ…」

「うるさいわね!最初から背中だと思ってたわよ!見せるのに抵抗があっただけよ!」

顔が真っ赤になって反抗されてもなぁ。これ多分俺の考えが当たってるな。

「もっと違う場所だと思ってたくせに。例えば胸とか……」

「ちち、違うわよ!どこ想像してんのよ!変態!」

当たったな。明らかに同様してる。俺がそんなところ触るわけないだろ。今の所は…。ルアの胸は触りたいと思ってるけど。

そのルアは俺たちの方を見てクスクスと笑ってる。それに気づいた俺たちはちょっと恥ずかしくなってこの話題を切り上げた。本音を言うともう少しいじりたかった。

エマも用意出来て、ルアも配置に着いた。

「さて、それじゃあやるぞ。エマ、耐えろよ?」

「もちろんよ!」

俺は右目を閉じて左目の義眼だけでエマを見る。そして、魔力が溜まっている場所を正確に把握し、エマの背中に右手を置く。

「…魔力操作」

俺の魔力を右手に集中させ、そこからエマに魔力を流す。

よし!第1段階成功!! 

「ンっ!んぅ!痛い…!!痛い!!グッ!!うぅ!グウッ!!痛いぃ!!!」

集中しろ…!一切の油断をするな。

「キャァァァ!!!」

「あと少し……!!!」

それを続けること体感で2分ぐらい。

「よし!!!エマ!すぐに簡単な魔法を使え!」

エマは未だに苦しんしでいる。この調子では魔法は使えないか…!すると、すぐに魔力の暴走が始まった。

自身を魔力で覆って、ひたすらに魔力の塊を周囲に吐き出す。

「ちっ!」

俺もルアもそれを避ける。当たると普通にダメージが入るからな。それもかなりの威力だ。

「ルア、いけるか?」

このままではエマの魔力が尽きるまで続くだろう。そうなるといつまで続くか分からない。その間ずっとエマは苦しむことになる。

「いけるよ!エマちゃんの所まで行ければだけどね!」

「OK。なら、真っ直ぐ進め。」

ルアが反魔法を使うとエマに魔力の塊がはね返る。そうなっては苦しみが続くだけだから、ルアは今も避けているのだ。

「わかった!行くよ!」

ルアがエマに向かって走り出す!俺はルアに向かう魔力の塊をずらして当たらないようにする。

無反撃カウンターゼロ

ルアが魔法を唱えるとエマの魔力の暴走が、終わった。

俺はエマの元に駆け寄って倒れないように支えよう…と思ったが、気を失っていたのでお姫様抱っこをする。

「エマ、エマ!」

無理矢理エマを起こす。まだエマには過剰の魔力がある。

「ん…んぅ。キャッ!」

「1度だけ魔法を使ってくれ!簡単なものでいい!」

「わかった…!」

そこから詠唱を唱えて使った魔法はファイアーボールだった。ただ…俺の予想よりはるかに巨大なファイアーボールだった。大きさだけでいえばルアが使ってた蒼黒炎並の大きさだった。俺の魔力のせいということもあるが、エマの魔力量と、センスも関係しているだろう。

「マジかよ…!ルア!」

魔法は真っ直ぐにルアの元に向かう!

無反撃カウンターゼロ

さっきと同じ魔法で巨大なファイアーボールを消す。

とてつもない魔法だな。どんな魔法の効果も消すの?魔法に関しては最強だな…!

「ルア、周囲の火事も消してくれないか?」

「了解!」

ファイアーボールで燃えた木も水魔法で消化してくれた。

エマは既にぐっすりと眠っている。魔力も正常値まで戻っている。それを確認した俺はゲートを開いてエマをベッドに寝かせた。

それが終わるとすぐにルアの元まで戻った。

「さっきの魔法すげぇな…!」

「そうでしょ!でも、あの魔法はあんまり使うことが少ないよ?消すぐらいなら相手に返した方がいいからね!」

胸を張って自慢してくるがあの魔法は本当にすごい。

「確かに実戦ではそうかもな…。」

実際にダンジョンの中では使ってなかったわけだし。

「けど、多分あの魔法はおれの時空属性でも、真似出来ないと思うぞ?」

「まぁ、そういう意味では私だけの魔法ってことでいいかもね!それよりタイチ!ずるい!」

急にルアが怒ってくるが、なにも心当たりはない。

「え?何がだよ?」

「私やってもらったことない!あれ!エマちゃんにやったやつ!」

お姫様抱っこの事か…。確かにルアにはやったこと…あるな…。あれ?あるな。確か…王都に入ってすぐの夜にやったな。

「どれのことだ?」

「魔力操作でエマちゃんに魔力あげたやつ!」

「いや、あれ結構苦しいぞ?それをやりたいのか?」

「でも、自分の魔力量の限界までなら苦しくないんでしょ?むしろ気持ちいいんじゃない?エマちゃんだって最初は…。」

まぁ、確かにルアの言う通りだけど、気持ちいいかどうかは知らないぞ?個人の感想だろ。

「分かった。それじゃあルア。手を貸してくれ。」

「…エマちゃんは背中で私は手なんだ…。」

「いや、別に肌に触れれば問題ないんだけど。」

エマの場合は背中に魔力溜まりがあったからっていうだけの話だし。

「まぁ、いいよ。それじゃあやってみてよ。」

「行くぜ。魔力操作…。」

「んっ…。アッ…。」

とても艶めかしい声が聞こえてくるのですぐに中断した。

ルアの方を見ると顔も赤くてとても色っぽかった。

「んっ。ハァハァ…。ありがとう…。気持ちよかった…。」


ルアにキスをしてから、エマとは別の部屋で2人で夜を明かした。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ
ファンタジー
【小説家になろう】さまにて作品を先行投稿しています。 俺、畑中幸司。 過疎化が進む雪国の田舎町の雑貨屋をしてる。 来客が少ないこの店なんだが、その屋根裏では人間じゃない人達でいつも賑わってる。 賑わってるって言うか……祖母ちゃんの頼みで引き継いだ、握り飯の差し入れの仕事が半端ない。 食費もかかるんだが、そんなある日、エルフの女の子が手伝いを申し出て……。 まぁ退屈しない日常、おくってるよ。

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

スキルを極めろ!

アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作 何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める! 神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。 不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。 異世界でジンとして生きていく。

処理中です...