1 / 34
0章
第一話 3人の少年少女
しおりを挟む
「"ゼノン"!そっちに行ったよ!」
「え?えぇ??うわぁ!」
「オラァ!!」
「あ、ありがとう…。"アルス"」
「へ!情けねぇな!!泣き虫ゼノン!それより…、おぉーい!見てたか!"ミオ"!かっこよかったろ!!」
「アルス!大丈夫!?今治してあげるからね!」
「ぼ、僕は大丈夫だよ。ミオ…。」
「チッ!そんなやつほっとけよ!避けれなかったゼノンが悪い!」
アルスという少年の忠告を無視して、ミオはゼノンを治療する。
少し傲慢で高圧的なガキ大将のような悪ガキで赤髪で将来はイケメンになるような顔のアルス、少々男勝りだが優しい金髪で天使のような可愛さを誇る女の子のミオ、そしていつもその2人の影に隠れているひ弱な黒髪のゼノン。
ゼノンはよくアルスにいじめられていて、アルスのことが苦手だった。
7歳になる3人の少年少女は近くの森でイノシシを討伐していた。
討伐中にイノシシが進行方向を突然変えてゼノンを襲ってきたのだ。ゼノンは避けることも出来ずそのまま怪我をしてしまった。とはいえ、イノシシも小さかったので大きな怪我はなかった。
ゼノンを倒して油断したイノシシをアルスが仕留めたのだ。それをアルスはミオに自慢しているが、そんなことよりゼノンの方が心配なミオは魔法でゼノンを癒していた。
「ミオ!!そんなやつ回復させることねぇって!それより俺が仕留めたイノシシ見ろよ!すげぇーだろ!特別に触らせてやってもいいぜ!」
「"俺が"じゃなくて私たちがでしょ!それに私見たんだからね!アルスが後ろから石投げてイノシシにゼノンを狙わせたところ!」
「な!?で、でもそうしなかったらミオが怪我してたぜ!」
「私は大丈夫よ!」
「ご、ごめんね…。ミオ…。僕が弱いから…。」
「いいのよ!気にしないで!ゼノンが弱いのは仕方ないもん!だから私が守ってあげる!」
(仕方ない…かぁ)
ミオのその言葉に少しだけ傷ついてしまうゼノン。でも、それは周知の事実であった。
「だってゼノンの魔法、成長魔法なんて言う雑魚魔法だからな!ハッハッハ!村の人達も聞いたことないって笑ってたぜ!」
この世界の人達は生まれながらに魔力を宿し、その魔力を使用することで魔法を使うことが出来る。しかし、使うことができる魔法は生まれながらに人によって決まっている。これを属性と言う。つまり人は生まれた時から決められた1つの属性の魔法を使うことが出来るのだ。
火、水、土、風の4大基本属性と光、闇、聖の少し珍しい三大属性に分かれる。それ以外にも属性はあるのだが、基本的にはそれらは基本属性から派生されたものであまり戦闘向きとは言えないことが多かった。
例えばミオなら聖魔法、アルスなら光魔法、そしてゼノンは成長魔法である。
7歳でも初級程度の魔法なら誰でも扱うことが出来る。ミオならちょっとした怪我を癒す魔法を使える。それでゼノンを回復させているのだ。アルスがイノシシを倒したのも光魔法を使っている。
しかし、ゼノンは上手く魔法が使えなかった。出来るのは植物の成長を少し速める…これぐらいだった。と言っても種が発芽するのが1日ぐらい早くなるみたいな微妙な効果だが。もはや魔法の効果と言えるかも怪しい。
「気にしないでいいからね!ゼノン!私はゼノンがすごいって知ってるもん!」
「チッ!ほら、早く教会に戻ろうぜ!」
ミオがゼノンを励まし、アルスはイノシシを持ちながら村の教会の方へと歩き出した。
「………」
「ゼノン?どうしたの?」
ミオは1番後ろで立ち尽くしているゼノンに声をかける。
「ううんなんでもない。何か声が聞こえたんだ」
「へぇ~。鳥さんがいたのかな?」
ゼノン、アルス、ミオの3人は捨て子で同じ施設に拾われた。拾われた順番としてはゼノン、アルス、ミオの順だ。
この世界では7歳になる少年少女は教会から加護を授かることが出来る。そして、ゼノン達が加護を授かるのは明日なので今日はその前祝いとして3人でイノシシを狩っていた。
加護とは神からの祝福のようなものでそれによって人生が決まると言っても過言じゃない。加護を授かることでスキルを習得することが出来たり、身体能力や魔力が大幅に上昇したり…と、沢山の恩恵がある。
加護には「勇者の加護」などというとてつもなく珍しいものから「村人の加護」まで多種多様なものがある。
7歳になる子供は皆様々な夢を見ながらこの日を楽しみにしているのだ。
「「「しすたー!ただいまー!」」」
「はーい!おかえりなさい。あら?そのイノシシはどうしたのかしら?」
ゼノン達を優しく迎えてくれたのはこの施設で親代わりをしているシスターリルと呼ばれる修道士である。ゼノン達を拾ってから今までずっとみんなの母親代わりをしてくれている。基本的にはリル先生と呼ばれている。
「へへ!すごいだろ!俺が狩ったんだぜ!」
「俺が、じゃなくて私達がでしょ!」
アルスはわざとらしく「俺が」の部分を強調するが、ミオがそれを訂正する。ゼノンはリルから発せられる僅かな怒気を感じて、2人を宥めていた。アルスとミオが喧嘩してリル先生を困らせたと思っているからだ。
しかし…
ゴツン!!
「イテ!」「イタ!!」「イツ!!」
リル先生の鉄拳が3人の頭に炸裂した。その痛みに耐えきれず3人ともしゃがんで頭を抑えている。
「あなた達朝も言ったでしょう!?明日は教会に行って加護を貰う大事な日なのよ!?それなのに前日にイノシシ狩りだなんて…。もし怪我でもしたらどうするのよ!?」
「だ、大丈夫だって!俺はへっぽこゼノンと違うからな!イテ!!」
「こら!アルス!家族を悪く言ってはいけません!ゼノンも怪我はない?」
「う、うん。ミオが治してくれた…」
「そう。ちゃんとお礼は言ったの?」
「あ、ありがとう…ミオ」
「気にしなくていいわよ。私達は家族だもん!」
アルスがゼノンの悪口を言うといつもリルはアルスを叩く。
この施設では家族のような関係で育てたられていた。今はリル、ゼノン、ミオ、アルスそしてアズレという施設の主てわ男の先生の5人暮らしだ。
「はぁ…。無事に帰ってきたから今回は何も言わないけど、次は許さないからね!」
「「「はぁい」」」
「よし!じゃあ今晩は猪鍋にしましょうか!手を洗ってらっしゃい」
「「わぁぁ!」」
アルスとミオは走りながら施設の中に入っていった。
「り、リル先生。僕、何か手伝えることある?」
しかしゼノンは中に入らず、リルを手伝う気でいた。
「ん~。じゃあ、お皿を準備しておいてくれる?でもお手洗いが先よ?」
「うん!」
仕事をもらったゼノンは施設の中に入ってリルに言われた通り準備を進めていた。
ゼノンは弱気で人見知りなところがあるが、本当は優しく他の人を気遣えるいい子だとリルやミオは思っていた。逆にアルスはゼノンのそういう所が気に食わない様子だが…。
「それじゃあ、今日も勇者様のお話をしましょう!」
猪鍋を食べ終えた4人はリルの提案で絵本を読むことになった。
『初代勇者の英雄譚』
この本のタイトルで人間族が読む代表的な童話である。
もちろんこの3人も例外ではなく何回読み返しても飽きることはなくいつも楽しみにしていた。
「むーかしむかし、人間族は悪ーい魔族に苦しめられていました。そんなある日、人間族のある村に1人の青年は神様から『勇者の御加護』と聖剣を授かりました。」
「うおぉー!勇者ー!!」
青年が神様から剣を授かった絵が書いてあるページがめくられて、魔族と勇者が戦っているページに切り替わる。
アルスは勇者の登場シーンで興奮しているようだ。ミオも目をキラキラと輝かせながら絵本を見ている。
「勇者様は仲間を集い魔物から民を守り、魔族を倒して行きました。そしてとうとう勇者様とそのお仲間は魔王を倒してしまいました。」
ページは勇者と魔王が戦うページに変わり、アルスもミオも何度も見ていながら手に汗を握るように勇者たちを応援して絵本を見ている。魔王は角を生やし、禍々しい姿をしていた。ただ1人それに剣を掲げ戦う青年が写っていた。魔王は赤い血液を操り、勇者は光に包まれている。ゼノンは下を向きながら絵本を聞いている。
これは現在のこの世界の情勢と似ている。この世界には魔族と呼ばれる種族、亜人または獣人族と呼ばれる種族そして人間族が共存している。魔族そして人間族は対立しており、獣人族はどちらにも属さない…と言うよりはどちらの国にも存在している。なので獣人族の国はない。
かつてはあったのだが、戦争に敗れ崩壊してしまった。細かく分類すると人間族にも国があり、同じように魔族側にも国があったりするのだがそこまで詳しく言う必要は今はないだろう。
魔族は数は人間族に劣るが個の力は強く、また魔物という魔力を秘めた生き物を操ることが出来る。対して人間は数で対抗する…。これが現在の行われている争いの簡単な現状である。実際には国絡みや色んな問題があり複雑なのだが。
「そして勇者様はとうとう人間族に平和をもたらしたのです。
おしまい」
「うぉぉー!!やっぱ勇者すげぇ!!俺、勇者になりたい!」
「私は聖女になりたい!」
ミオとアルスは高らかに自分の夢を叫ぶ。明日、加護を授かるという期待と興奮が相まっている。
「ゼノンはどうなりたい?」
「ぼ、僕は……」
リルからの質問に関してゼノンは答えることが出来なかった。
「けっ!ゼノンか何にもなれねぇよ!せいぜい村人だな!オラァ魔族ゼノンなんて勇者の俺が退治してやるぜ!」
「いたい!!」
「こら!アルス!!」
アルスはゼノンに向かって突撃してゼノンを吹っ飛ばす。それを見ていたリルがアルスを叱る。
ミオもゼノンの元に走り怪我した所を治療する。
「あ、ありがとう…。ミオ」
「いいよ!私は聖女になるんだもん!ゼノンもやり返えしたらいいのに!」
「そ、そんな事…できないよ…」
「男なのに弱っちぃなぁ。大丈夫!弱くても私が守ってあげるからね!」
「う、うん…」
「弱虫ゼノンだな!女に守られるなんて情けねぇ!」
「こら、アルス!!」
アルスはリルに怒られそうになると走って逃げだした。
「大丈夫よ、ゼノン。ゼノンはゼノンが思う自分になればいいわ」
(僕が思う自分…。僕は……………)
「え?えぇ??うわぁ!」
「オラァ!!」
「あ、ありがとう…。"アルス"」
「へ!情けねぇな!!泣き虫ゼノン!それより…、おぉーい!見てたか!"ミオ"!かっこよかったろ!!」
「アルス!大丈夫!?今治してあげるからね!」
「ぼ、僕は大丈夫だよ。ミオ…。」
「チッ!そんなやつほっとけよ!避けれなかったゼノンが悪い!」
アルスという少年の忠告を無視して、ミオはゼノンを治療する。
少し傲慢で高圧的なガキ大将のような悪ガキで赤髪で将来はイケメンになるような顔のアルス、少々男勝りだが優しい金髪で天使のような可愛さを誇る女の子のミオ、そしていつもその2人の影に隠れているひ弱な黒髪のゼノン。
ゼノンはよくアルスにいじめられていて、アルスのことが苦手だった。
7歳になる3人の少年少女は近くの森でイノシシを討伐していた。
討伐中にイノシシが進行方向を突然変えてゼノンを襲ってきたのだ。ゼノンは避けることも出来ずそのまま怪我をしてしまった。とはいえ、イノシシも小さかったので大きな怪我はなかった。
ゼノンを倒して油断したイノシシをアルスが仕留めたのだ。それをアルスはミオに自慢しているが、そんなことよりゼノンの方が心配なミオは魔法でゼノンを癒していた。
「ミオ!!そんなやつ回復させることねぇって!それより俺が仕留めたイノシシ見ろよ!すげぇーだろ!特別に触らせてやってもいいぜ!」
「"俺が"じゃなくて私たちがでしょ!それに私見たんだからね!アルスが後ろから石投げてイノシシにゼノンを狙わせたところ!」
「な!?で、でもそうしなかったらミオが怪我してたぜ!」
「私は大丈夫よ!」
「ご、ごめんね…。ミオ…。僕が弱いから…。」
「いいのよ!気にしないで!ゼノンが弱いのは仕方ないもん!だから私が守ってあげる!」
(仕方ない…かぁ)
ミオのその言葉に少しだけ傷ついてしまうゼノン。でも、それは周知の事実であった。
「だってゼノンの魔法、成長魔法なんて言う雑魚魔法だからな!ハッハッハ!村の人達も聞いたことないって笑ってたぜ!」
この世界の人達は生まれながらに魔力を宿し、その魔力を使用することで魔法を使うことが出来る。しかし、使うことができる魔法は生まれながらに人によって決まっている。これを属性と言う。つまり人は生まれた時から決められた1つの属性の魔法を使うことが出来るのだ。
火、水、土、風の4大基本属性と光、闇、聖の少し珍しい三大属性に分かれる。それ以外にも属性はあるのだが、基本的にはそれらは基本属性から派生されたものであまり戦闘向きとは言えないことが多かった。
例えばミオなら聖魔法、アルスなら光魔法、そしてゼノンは成長魔法である。
7歳でも初級程度の魔法なら誰でも扱うことが出来る。ミオならちょっとした怪我を癒す魔法を使える。それでゼノンを回復させているのだ。アルスがイノシシを倒したのも光魔法を使っている。
しかし、ゼノンは上手く魔法が使えなかった。出来るのは植物の成長を少し速める…これぐらいだった。と言っても種が発芽するのが1日ぐらい早くなるみたいな微妙な効果だが。もはや魔法の効果と言えるかも怪しい。
「気にしないでいいからね!ゼノン!私はゼノンがすごいって知ってるもん!」
「チッ!ほら、早く教会に戻ろうぜ!」
ミオがゼノンを励まし、アルスはイノシシを持ちながら村の教会の方へと歩き出した。
「………」
「ゼノン?どうしたの?」
ミオは1番後ろで立ち尽くしているゼノンに声をかける。
「ううんなんでもない。何か声が聞こえたんだ」
「へぇ~。鳥さんがいたのかな?」
ゼノン、アルス、ミオの3人は捨て子で同じ施設に拾われた。拾われた順番としてはゼノン、アルス、ミオの順だ。
この世界では7歳になる少年少女は教会から加護を授かることが出来る。そして、ゼノン達が加護を授かるのは明日なので今日はその前祝いとして3人でイノシシを狩っていた。
加護とは神からの祝福のようなものでそれによって人生が決まると言っても過言じゃない。加護を授かることでスキルを習得することが出来たり、身体能力や魔力が大幅に上昇したり…と、沢山の恩恵がある。
加護には「勇者の加護」などというとてつもなく珍しいものから「村人の加護」まで多種多様なものがある。
7歳になる子供は皆様々な夢を見ながらこの日を楽しみにしているのだ。
「「「しすたー!ただいまー!」」」
「はーい!おかえりなさい。あら?そのイノシシはどうしたのかしら?」
ゼノン達を優しく迎えてくれたのはこの施設で親代わりをしているシスターリルと呼ばれる修道士である。ゼノン達を拾ってから今までずっとみんなの母親代わりをしてくれている。基本的にはリル先生と呼ばれている。
「へへ!すごいだろ!俺が狩ったんだぜ!」
「俺が、じゃなくて私達がでしょ!」
アルスはわざとらしく「俺が」の部分を強調するが、ミオがそれを訂正する。ゼノンはリルから発せられる僅かな怒気を感じて、2人を宥めていた。アルスとミオが喧嘩してリル先生を困らせたと思っているからだ。
しかし…
ゴツン!!
「イテ!」「イタ!!」「イツ!!」
リル先生の鉄拳が3人の頭に炸裂した。その痛みに耐えきれず3人ともしゃがんで頭を抑えている。
「あなた達朝も言ったでしょう!?明日は教会に行って加護を貰う大事な日なのよ!?それなのに前日にイノシシ狩りだなんて…。もし怪我でもしたらどうするのよ!?」
「だ、大丈夫だって!俺はへっぽこゼノンと違うからな!イテ!!」
「こら!アルス!家族を悪く言ってはいけません!ゼノンも怪我はない?」
「う、うん。ミオが治してくれた…」
「そう。ちゃんとお礼は言ったの?」
「あ、ありがとう…ミオ」
「気にしなくていいわよ。私達は家族だもん!」
アルスがゼノンの悪口を言うといつもリルはアルスを叩く。
この施設では家族のような関係で育てたられていた。今はリル、ゼノン、ミオ、アルスそしてアズレという施設の主てわ男の先生の5人暮らしだ。
「はぁ…。無事に帰ってきたから今回は何も言わないけど、次は許さないからね!」
「「「はぁい」」」
「よし!じゃあ今晩は猪鍋にしましょうか!手を洗ってらっしゃい」
「「わぁぁ!」」
アルスとミオは走りながら施設の中に入っていった。
「り、リル先生。僕、何か手伝えることある?」
しかしゼノンは中に入らず、リルを手伝う気でいた。
「ん~。じゃあ、お皿を準備しておいてくれる?でもお手洗いが先よ?」
「うん!」
仕事をもらったゼノンは施設の中に入ってリルに言われた通り準備を進めていた。
ゼノンは弱気で人見知りなところがあるが、本当は優しく他の人を気遣えるいい子だとリルやミオは思っていた。逆にアルスはゼノンのそういう所が気に食わない様子だが…。
「それじゃあ、今日も勇者様のお話をしましょう!」
猪鍋を食べ終えた4人はリルの提案で絵本を読むことになった。
『初代勇者の英雄譚』
この本のタイトルで人間族が読む代表的な童話である。
もちろんこの3人も例外ではなく何回読み返しても飽きることはなくいつも楽しみにしていた。
「むーかしむかし、人間族は悪ーい魔族に苦しめられていました。そんなある日、人間族のある村に1人の青年は神様から『勇者の御加護』と聖剣を授かりました。」
「うおぉー!勇者ー!!」
青年が神様から剣を授かった絵が書いてあるページがめくられて、魔族と勇者が戦っているページに切り替わる。
アルスは勇者の登場シーンで興奮しているようだ。ミオも目をキラキラと輝かせながら絵本を見ている。
「勇者様は仲間を集い魔物から民を守り、魔族を倒して行きました。そしてとうとう勇者様とそのお仲間は魔王を倒してしまいました。」
ページは勇者と魔王が戦うページに変わり、アルスもミオも何度も見ていながら手に汗を握るように勇者たちを応援して絵本を見ている。魔王は角を生やし、禍々しい姿をしていた。ただ1人それに剣を掲げ戦う青年が写っていた。魔王は赤い血液を操り、勇者は光に包まれている。ゼノンは下を向きながら絵本を聞いている。
これは現在のこの世界の情勢と似ている。この世界には魔族と呼ばれる種族、亜人または獣人族と呼ばれる種族そして人間族が共存している。魔族そして人間族は対立しており、獣人族はどちらにも属さない…と言うよりはどちらの国にも存在している。なので獣人族の国はない。
かつてはあったのだが、戦争に敗れ崩壊してしまった。細かく分類すると人間族にも国があり、同じように魔族側にも国があったりするのだがそこまで詳しく言う必要は今はないだろう。
魔族は数は人間族に劣るが個の力は強く、また魔物という魔力を秘めた生き物を操ることが出来る。対して人間は数で対抗する…。これが現在の行われている争いの簡単な現状である。実際には国絡みや色んな問題があり複雑なのだが。
「そして勇者様はとうとう人間族に平和をもたらしたのです。
おしまい」
「うぉぉー!!やっぱ勇者すげぇ!!俺、勇者になりたい!」
「私は聖女になりたい!」
ミオとアルスは高らかに自分の夢を叫ぶ。明日、加護を授かるという期待と興奮が相まっている。
「ゼノンはどうなりたい?」
「ぼ、僕は……」
リルからの質問に関してゼノンは答えることが出来なかった。
「けっ!ゼノンか何にもなれねぇよ!せいぜい村人だな!オラァ魔族ゼノンなんて勇者の俺が退治してやるぜ!」
「いたい!!」
「こら!アルス!!」
アルスはゼノンに向かって突撃してゼノンを吹っ飛ばす。それを見ていたリルがアルスを叱る。
ミオもゼノンの元に走り怪我した所を治療する。
「あ、ありがとう…。ミオ」
「いいよ!私は聖女になるんだもん!ゼノンもやり返えしたらいいのに!」
「そ、そんな事…できないよ…」
「男なのに弱っちぃなぁ。大丈夫!弱くても私が守ってあげるからね!」
「う、うん…」
「弱虫ゼノンだな!女に守られるなんて情けねぇ!」
「こら、アルス!!」
アルスはリルに怒られそうになると走って逃げだした。
「大丈夫よ、ゼノン。ゼノンはゼノンが思う自分になればいいわ」
(僕が思う自分…。僕は……………)
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる