3 / 3
再会
しおりを挟む一階から聞こえる物音でまた目が覚めた。
二度寝により眠気もなくなり、健康そのものになったように元気になった身体をグゥッと伸ばした。
さぁて、感動的な再会だ。
どうなるかなんて目に見えてるから、耳栓だけはしておこう。
「……はよ、母さん。朝飯、何?」
その日の朝。
歓喜なのか悲鳴なのかわからない声が丘上の一軒家から街中にまで響いた。
あまりの煩さにその日だけは目覚まし時計いらずだったとか。
「アドルフっ……!!貴方ね!何百年も寝ていたのよ!もっと!!こう……!ッなんか、あるでしょう!?」
「いやいやないない。俺的には寝て起きたくらいの感覚だからさ。実感がねーんだよなぁ……」
「お医者様はね、もう、目が覚めない、って……言っていたの……なのに……貴方は……」
「……凡人はそう言うだろーね。たがしかし!お生憎様、俺様は天才だからな。こんな魔術、ちょっちょいの……」
「だったら!!もっと、早く起きてほしかった……。ずっと、生きた心地がしなかったのだから!このッ……!!天才馬鹿!」
「……罵るか褒めるか一択にしてよ、母さん。……まぁ、結果オーライじゃん?」
「……ええ、もう、まったく……そうね。おはよう、お寝坊さん」
こうして、涙鼻水汗涙を垂れ流す感動的な再開を果たした訳だが……
残念ながら、話はここで終わらない。
勿論、父さんと我が弟にも俺の起床報告がいく訳なのだが、問題は弟だ。
奴は複雑怪奇だから扱いが難しい。
ヒステリックを起こした女よりめんど……いやいや、大変だ。
てか、俺が目覚めたなんて報告聞いたら秒で……「兄貴!!」きちゃった。
「……ん?んー……?いや、誰?」
「兄貴、酷いな!忘れちゃった?ハウハだよ!」
いやいやいや!聞いてないゾ!
誰これ!身長俺より高いじゃん!
あれ?モデル?どっかの雑誌に載ってそうな見た目なんだが、これが我が弟、ハウハ?
いや、ウソだ~!
これがあの子犬が怖くて泣きついてきたハウハ?
ヘラクレスオオカブトが腕に止まってぎゃん泣きしたハウハ?
ヤギに髪食われて泣いてたハウハ?
……改めて時間経過の恐ろしさを見たな。
いやてか、急に実感が、本当に長い間寝ていたとやっと今、理解した気がする。
「速かったな。寮からこの家は遠いと聞いてたけど……」
「そんなの僕の羽でひとっ飛びすれば一瞬だよ!それより、身体は平気?ずっと寝てたから悪くなってない?」
「あー……それはないなァ。むしろ、絶好調」
「……そう。それは、良かった!」
あー。これだよ、これ。この感じが苦手なんだよなぁ。
ウソも言ってないけど、本心隠してるこの感じがイヤだ。
俺だから気づくんだと思うけど。
これは俺が眠りにつくちょっと前から始まった。
一回腹割って話さないととは思ってはいるが、まぁ、後で……追々な……
それよりも、今大事な事は朝見た光景についてだ。
「……さて、もう充分喜んだな?それじゃ、本題だ。俺が寝てからどうなって何があった?」
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】王甥殿下の幼な妻
花鶏
ファンタジー
領地経営の傾いた公爵家と、援助を申し出た王弟家。領地の権利移譲を円滑に進めるため、王弟の長男マティアスは公爵令嬢リリアと結婚させられた。しかしマティアスにはまだ独身でいたい理由があってーーー
生真面目不器用なマティアスと、ちょっと変わり者のリリアの歳の差結婚譚。
なんちゃって西洋風ファンタジー。
※ 小説家になろうでも掲載してます。
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
私が魔王?いやいや、そんなわけないでしょ?えっ、本当なの?なら、『証明』してみなさいよ!
R.K.
ファンタジー
これは、不運にも『魔王』になってしまった女の子の物語。
「はあ~、おはよう。」
「おはようございます、魔王様。」
「・・・」
「誰?えっ、魔王?魔王ってどういうこと!!」
不運にも『魔王』になってしまった女の子が、どうにかこうにかして、魔王であることを信じようとしない、そんな女の子と、魔王に仕える魔人が織り成す異世界ファンタジー小説です!
面白そうでしたら、読んでいってください!
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる