鬼の心臓は闇夜に疼く

藤波璃久

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悪意を喰らう1 (現在編①)

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「アタシさ、最近ストーカーされてんだよね」
マミが長い髪の毛をいじりながら言った。
「マジ? 最悪じゃん」
友人のナナはスマホを操作しながら相槌を打つ。
「バイト終わんの遅いし、暗い中帰んの怖いんだよね~。
あー、誰かボディガードしてくれる人いないかな?
主にイケメンで…」
ナナは思い出したように「あ~」と言った。

「じゃあ、うちのクラスの鬼山くんどう? 鬼山小太郎おにやまこたろうくん」
「おに…?」
「おーい、鬼山くん!」
ナナが呼ぶと、教室の端っこの席で、机に突っ伏している男子生徒が顔を上げた。
「あっ…なかなかイケメンじゃん」
「でしょ?」
マミの感想にナナは自慢気に笑う。
「…なに?」
眠りを邪魔された小太郎は、不機嫌そうに二人を見た。
ナナはマミの背中を押す。
「この子、B組のマミっていうの。私の親友。最近ストーカーされてるんだって」
「ストーカー?」
小太郎は、マミの顔を見つめた。マミの顔は赤くなった。
「それで?」
「ボディガードしてあげてほしいんだけど…」
ナナが言うと、マミは「ホントに困ってるんだ」と申し訳なさそうに言った。
「オレでいいの?」
「またまた~、鬼山くん細身のわりに強いんだって聞いたよ? 
男子が噂してたもん。体育で柔道やって、柔道部の主将負かしたらしいじゃん」
「え? すごい!」
ナナの言葉にマミが驚き、小太郎を熱い視線で見つめた。
「あ~、力加減ミスったんだよな…」
小太郎がブツブツ呟く。
「え? なんて?」
ナナが聞き返してくるので、小太郎は焦った。
「いや、ボディガードだっけ? 引き受けるよ」
「ホント? ありがとう」
マミは嬉しそうだ。
「そういえば、さっき、柔道部の主将くんが、これを置いていったよ」
ナナが小太郎に渡したのは、名前のみ空欄の柔道部の入部届け。
「あ~もう、シツコいんだから…」




 
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