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第七章 勇者するより旅行だろ・・・?
第九十五話 これが本当の肉体改造ってか!
しおりを挟むラーグ・バランデル辺境伯ことブラングルヘン辺境伯の領地に来て二日目の朝を迎えた。
「・・・」
昨日見た天井だ。
のそりとベットから身を起こし、あたりを見回す。窓から光が射し込まれる。身を照らす光が眩しいが、そろそろ起きねぇとまずい。
ーーいや、もうアウトだろ
黙れ小僧。
この年になって、寝坊とか言えるか!てか、お前この世界でも自我あんのかよ!
ーー自立性がました今のオレに不可能はない
うぜぇ・・・。
てかそれなら、なんで昨日空気だったんだよ。え、なに?ボッチかよ。
ーーボッチではない。最近実体を手に入れた。颯馬の仲間とコンタクトを取った
・・・勝手に何してるんデスカネ。
ワタシアナタノシュジン。その話聞いてないヨー。
ーーまぁ、相談するほどでもあるまい?
しろよぉ!寂しいじゃねぇかよぉ!仲良くやろうぜ!俺たち一心同体じゃないか!お前が死ねば俺も死ぬんですけど!?
ーー残念だな。黒田の中でも特異なアンタもオレも死ねん。消滅という道がなくなった以上、安心できるな
・・・一生共にいるんだから仲良くしよーよ。
未来の嫁さんよりもお前との方が長い付き合いなんだから。
ーーそういえば、颯馬と白金の愉快な仲間たちがこんどこちらの世界に遊びに来るそうだ
あ、無視ですかそうですか。
てかあの人らが来んのか・・・。問題児しかいねぇんだよな・・・。二人しかまともに育った子がいないなんて・・・結構あの人たち仲間いるのにね・・・。
ーーそして、『アルディウス』が既にこの世界に来てる
・・・あぁ・・・ロリコン紳士ね、はいはいはい。
アルディウスってのは、颯馬さんと白金の仲間。正直、化物の一員と見ていい。てか、仲間全員そう見ていい。あの人達に常識なんていらないです。風呂覗き騒ぎで怒った女性陣に対して、男どもが逆ギレかまし、星一つ消えるような喧嘩をしたような人たちだからな。
自由組の問題児たちとやってることが変わらん。ひどいもんだ・・・。
しかもアルディウスと来たか・・・。特殊性癖軍団の中でも特に愛の強い変態だ。愛でるだけではすまない可能性もある。こちらに来るのも、新たなロリを発掘するためだろう。
ーーやつが来れば、この世界の戦争もさらに面白くなる
はぁ・・・。
キアラさんが来てくれんかね。あの人いないとほかの奴らは止まらないんだよ。
あぁキアラさんも颯馬さんの仲間ね。俗に言うレズビアンさんなんだが、常識はある。少なくとも他のアホを止めるだけの常識は抱えてくれてる人だから。一番まとも。
ーーんじゃ、俺また遊んでくるから
勝手にしろ。・・・アルディウスが無茶しないように少し監視してくれ。
ーー分かった
ロリコン紳士に捕まる人が増えなければいいが・・・。しかも、あの人美形だからなぁ。虜になる幼女が多かったりする。
さてさて、どうしましょうか。
早めに接触してもいいんだが・・・。
「ま、どーにかなるか!」
こういうことは忘れよう。楽観視最高。
「ちょっと楓!まだ寝てるの!?魔法使いの人たち待ってるよ!」
あ、やべ。
寝坊してたの忘れてた。現在時刻、昼の11時でございまーす。訓練の時間は9時スタートの予定でした。
「すぐ行く!もうちっと待っとけ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
はい、着替えて魔法使いたちの前にいます。
何人か兵士じゃねぇのもいるが、気にしない。冒険者かなんかだろ。無名の教官に教えをこうとはな。力に飢えてるのか、才能ないのか。
「んじゃ、暫く臨時教官になる『黒田』だ。よろしく」
『よろしくお願いします!』
・・・なんでこんなやる気なんだ?
辺境伯になんか吹き込まれたか?まぁ、やりやすいしそれでいいか。
「初めに、お前らの魔法力、魔法の属性量を見てくからな」
『はい!』
「模擬戦をするぞ。俺対全員だ。遠慮すんな。お前ら程度で傷がつけれるはずがない」
『はい?』
「いやだから、殺す気で来いよ?」
それくらいじゃねぇと威力も何も見れやしないからな。一人ずつとかやってらんねぇよ。どれだけいると思ってんだ。100人は下らねぇぞ。魔法が希少価値とか言ったのどこの王だよ。
「あ、あの!本当によろしいのですか?」
「なにが?」
「私達は宮廷魔導師クラスも何人かいます。怪我をしてしまうかも・・・」
「しねぇよ。とりあえず、お前。俺に最強魔法うて」
「ええぇ・・・」
納得してねぇが、いちいち説明するのもめんどいからね・・・。
んで、嫌々ながらも、宮廷魔導師クラスの少女が杖を構える。
「〈劫炎に呑まれ、彼方に消えよ〉『破滅の黒炎』」
わーいすごーい。
強そうな黒い炎に包まれるが、熱くない。むしろ適温。なんだろうか、お風呂に入ってる気分だ。
外からキャーキャーと悲鳴が聞こえるので、そろそろ弾き飛ばそう。
「『失せろ』」
黒炎が跡形もなく消える。
まるで何も無かったかのように静かな時が再び訪れる。
「え・・・あ・・・」
魔法を放った少女がドヤ顔で立っている俺を見て唖然としている。
ま、これが強欲の理不尽さよな。俺に攻撃なんざ意味がない。俺に傷を付けたければ、肉弾戦か翔太を呼んでこい。
「分かったか?お前らの魔法はこんなもんだ。俺に傷一つ付けられやしない。分かったらさっさとうってこい。評価してやるよ」
何人が笑みを浮かべただろうか。その真意を知ろうとはしないが、ああいったのはよく見る。・・・覇王の笑みと似ている。自分以上を見つけた時の覇王にそっくりだ。
風の斬撃、高圧水光線、光の剣、闇の波動、火の龍
ほんの一例だが、これらが弾幕を作っている。だがしかし、俺にそんなものきかん。
結界に魔法を当てさせ、それらを解析していく。この世界ではそれなりに強いかもしれないが、マーリンの魔導を知っていると燃費の悪さが目立つ。
弾幕は一時間くらいで消えた。
まだまだだな。
「よし、終わったな。解析結果を知りたいやつから俺んとこに来い」
所々で、「化物・・・」とか「変人・・・」とか「頭おかしい」とか声が上がってるが、気にしない。だって俺大人だから。
初めに解析結果を聞きに来たのは、黒炎を放っていた少女だ。
「少女よ」
「はい」
「お前には無駄があまりない!」
この少女だけはね。
「ありがとうございます」
「だが、如何せん威力が弱い。魔力量が少ない。その割に工夫が見られない」
「・・・」
「威力も魔力量も努力次第だ。増やし方は分かるか?」
「分からないです。・・・というか、そんな方法があるんですか?」
「何言ってんだよ・・・。あるに決まってるだろ?」
威力と魔力量は体内を回る魔法回路に少なからず依存している。威力が高いやつは、魔法回路が広く、魔力量が多いやつは魔法回路が長い。それに、これは抜け道なんだが、魔法回路は体内だけじゃなくてもオッケーだったりする。自分の持っている杖や服、アクセサリーなんかにも魔法回路を通せる。
組み合わせ次第ではかなり強くなれる。
「ちょっと瞑想してみな」
「・・・分かりました」
地面に座り、目を瞑る少女。
手を合わせて、集中を始める。
「自分の魔法回路がどう流れているかわかるな?」
「はい」
「俺が今からそれをいじる。少し違和感があるはずだ。それから意識を逸らすな」
少女の頭に手を置き、魔法回路を長く複雑、かつ広く繋げていく。ストローをホースに変えるぐらいの変化を起こす。体内の隅々までそれを回していく。指の先まで繋げなければ勿体ないからな。
ちなみにこれは、マーリンが魔法を使っていた時に見つけた技術だ。
こじ開けて、パイプをさらに長くする。
「あっ・・・ん・・・あぁ・・・ふ・・・」
うるせぇ・・・。黙っててくださる?集中出来ない。吐息がエロい。少女のくせに・・・これではアルディウスホイホイではないか・・・!
そんなこと考えつつ、魔法回路を広げていると、あることに気付く。
この少女は炎の魔法ばかり使っていたのだが、氷も扱えることに。冷と暖を操る魔法っぽいのだ。炎の扱いは上手いから、氷もそこそこ使えるはずだ。
「はい、終わりだ」
「あ・・・あん・・・はっ!お、終わったんですね・・・」
「・・・お前な・・・集中しとけよ」
「し、してましたよ!」
嘘つけ。
「もう一回魔法回路を見てみろ。一応ゆっくりやれよ。急激な変化に酔うかもしれない」
長さも広さもだいたい10倍くらいに増やしたからな。ながくなるってことは、それなりに魔法回路の循環が速くなるはず。今まで通りの気分でやると、吐く。
「うべべべべべぇ・・・」
言わんこっちゃない。
吐瀉物を消し去り、少し待つ。
「・・・で、出来ました!」
「お疲れさん。黒炎をもう一回撃ってみ。俺じゃぁ変化に気付けんだろうから・・・『創造』」
人形を用意してやった。
「〈劫炎に呑まれ、彼方に消えよ〉『破滅の黒炎』」
黒き炎が爆発する。まるで花火だな。消えない黒い炎が人形を飲み込み、燃え続ける。規模も予想通り10倍だ。しかし、魔力の減少をあまり感じないのか、少女は頭を傾げている。
周りでへばってた連中も爆音に目を向けると、顎が地面に付きそうなほど口を広げている。
ま、これでスタートラインにはたっただろうな。
「ふ、ふごいでふよぉ!黒田さん!凄すぎます!どうなってるんですかァ!?」
テンション爆上げ状態の少女。
「魔力量と威力は魔法回路を弄れば上がる。他にも工夫すればまだ上がる」
それを聞いた者共が我先にと俺の前に並び始める。
まさかこれ全員分の魔法回路を設定しろと?
『よろしくお願いします!』
・・・しょうがない。自分の撒いたタネだ。責任を持とう。
強欲を併用すればそこまで長くはかからないはずだ。
・・・なんて思ってた時期が私にもありました。
魔法回路の設定は思いのほか早く終わったのですが、その後が長かった。魔法に関する質問を嵐のようにされたので、それの処理にとんでもなく時間を費やした。実演してたから余計にね。
「今日はここまでな。各自俺が言った宿題を考えておくように。明日になったら自分で研究しろ。質問は受け付けるし、壁に当たったら解決のヒントも教えてやる」
『はい!ありがとうございました!』
最初から素直だったが、さらに素直になった。目がキラキラしている。なんでも、学園で教えてくれるよりも遥かに深い内容だったとか。中にはこの世界では解明していないような内容もあったそうで、えらく騒がれた。
・・・そんなん知らんし・・・。
ま、これで俺の方は楽になるだろ。明日からは自由研究状態だし。今日ほどの労力は必要ない。暇を見つけたら少しずつ各地を見て回ることにするか。
「楓ー!助けてー!」
この声は・・・奏汰か・・・?
あいつが困ることといえば・・・また誰か殺したのか・・・?
しかし、そんな考えも杞憂で終わった。
駆け足で奏汰のもとに寄ると、筋肉マン達にもみくちゃにされていたのだ。
「いや、わけがわからん」
「いやなんか、騎士団長と戦ってたら他の騎士に囲まれちゃって・・・」
「今に至ると・・・」
「そーゆーこと。助けて欲しいです」
騎士共を訓練所の端っこの方に転移させる。一mほど高いところから積み重なるように落としたので、下の方は重そうである。
「いや・・・助かったよ・・・。ああいったことは女の子からされるから嬉しいのにね・・・」
「確かにあの筋肉に押し潰されるのはな・・・」
「どうせなら柔らかい方がいいのにね」
「・・・欲を言えば?」
「明日香の胸に埋もれたい」
「・・・埋もれるほどないけどな」
「だね」
頑張れ、奏汰。
騎士たちも頭が冷えたのか、奏汰と近くにいた騎士様のもとに戻ってくる。
騎士様はその騎士御一行を連れて、奏汰と俺の元に。訓練着がかなり汚れているので、相当しごかれたんだろうな・・・。可哀想に・・・。
「奏汰殿、今日はありがとうございました。楓殿も魔法師たちを鍛えてくださったようで」
「騎士様もお疲れさん。奏汰って強いだろ?」
「はい。鬼神化が少しうまく使えるようになったのですが・・・やはりまだまだですね。赤子のように扱われてしまって・・・」
そりゃね・・・。
鬼人にも慣れてない人間が、鬼神に信仰されるほど位の高い鬼の王である奏汰に挑もうとするのがおかしい。そもそも、怒鬼に指南されるなんて有り得ないことで、それこそ鬼神達がどれだけ頭を下げても了承されることないことなのだ。
余談だが、鬼には位があり、最も位が高い鬼は『王』として見られる。その下が神、次に騎士、そして人だ。騎士と神、神と王の間には埋めることの出来ない差がある。
王として世界に認められてるのは現在三体。
怒鬼、血鬼、王鬼
この三体だな。もう会うこともないだろうが、ほかの二体も化物として名高い。
血鬼は吸血鬼に似ている。血を操り、生物を狂わせることが喜びの変人だ。実はカールと仲が良かったりする。
王鬼は統率者で、幾つもの鬼の世界、国を持っている。血鬼も怒鬼もまとめあげるのは苦手なので、王鬼に任せっきりで、それゆえに二体とも王鬼には手を出さない。そして、鬼の世界に危機が訪れれば、たまに助けに行ったりもする。
地味に仲良しだったり。
その下にいる神たちはこの三人を信仰している。
恐らくだが、この三人になにかがかれば、俺や翔太達のような格の高い化物にも果敢に挑んでくる。
宗教って怖いね。
そのさらに下にいる騎士や人も守護者として知っているため、三人が集める信仰は半端でない。民を纏める王鬼の好感度は100%だ。
話がそれまくったな。
そんなわけで、信仰対象にまでなる王達に一介の人間が剣を構えること自体不敬なわけだが・・・知らないので仕方が無い。
というか、鬼騎士がスキルに『鬼神化』なんて名前をつけたと知れば怒り狂うだろうな。巫山戯るな!みたいな。
「ま、焦らず頑張りな」
そんな話するはずないけどさ。鬼の世界に興味を持たれても困るし・・・。
「そういえば楓殿と奏汰殿。どちらの方が強いのですか?」
騎士様・・・それはあんまし聞いちゃ行けない質問だね。
この場に明日香がいれば、奏汰は絶対に負けは認めない。「肉弾戦なら勝てる!」と言うだろう。
「楓が勝つよ。それも余裕でね」
「反則技が今や二つだからな」
黒田夜兎から回収した『破壊』の力と俺が持つ黒田としての力『強欲』。この二つは現在最強クラスの力を誇っている。
防御、攻撃、回復。何でもござれ状態だ。負けるとは思えない。
「あら?私は奏汰もいい線いくと思うけど?」
貴様はっ!
「明日香!?・・・そ、そうだよね!僕が負けるはずないもんね・・・!能力なしの肉弾戦なら・・・」
フラグだったのかっ!
俺はサガンかっ!フラグ建築士だけは手に入れたくない力だったのに!強欲さんよー!こういう所欲しがるねぇ!
ぶっちゃけ面倒くさい・・・。
明日香も遊び半分だろうけど、奏汰はまじだからなぁ・・・。
「僕も王の一人として・・・!ごごごごご強欲おお王にいど、挑んで・・・」
やめろ奏汰!それ以上口にしてはならぬ!そこから先は闇じゃぞ!
自らボコられる未来を選ぶのはやめるんだ!というか、破壊されたこの世界を治すのが誰だか分かってんのか!
「が、頑張るよ・・・」
「本気かよ・・・!死ぬぞおい!」
「でも、明日香にかっこ悪い姿は見せられない。せめて当たって砕けた方が・・・」
目が本気だァ!
お前はいつも波乱を巻き起こすな、明日香さんよ!
「奏汰・・・楓に勝ったら・・・一つ、何でもお願い聞いてあげるわ」
お前バカじゃねぇの!?
「死ね、楓・・・」
慌てて上体を反らして回避。俺の顔スレスレを黒い鬼が放つ必殺の一撃が通る。
てか明日香ァ!てめぇ顔赤らめてんじゃねぇぞ!早く止めろぉ!
「落ち着け奏汰!冷静になってくれ!」
奏汰はそれでも聞きやしない。
突然始まった戦闘。明日香が騎士様と騎士共を避難させる。多分上空か、映像で戦いを見る気だろう。
あとで、お仕置きだからな!
鬼が俺に手を伸ばす。それを注視していると、突然背後から殺気が襲いかかった。慌てて振り返るが、怒鬼の強化された一撃が俺の顔面を叩く。
吹き飛ばされ、空気に張った結界で速度を減らして着地。
前回の戦闘よりも一撃が強い。明日香の『なんでも』を真にうけた奏汰の心はとてつもなく揺らいでいる。感情の変化により力が増し続ける怒鬼の種族特性により、奏汰の力は現在進行形で爆上げ中だ。
目が本気すぎる。肝が据わっている。殺る気満々だな。
とりあえず、周りに被害が出ないように強欲による結界をはる。
「仕方ないな。久々に殺ってやるよ」
こうなったら殺して止めるしかないからな。明日香への愛が強すぎる。伊達に300年片想いしてねぇわ。
強欲と破壊を展開する。
一応持っている『恩恵』は全て置いておく。使わない。使うだけ無駄だろうからな。
強欲による強化と、破壊による侵食。俺の体の中で渦巻く二つの力。強欲は賢者の石を取り込み、破壊は怒鬼の肉体を改造していく。
俺の肉体が今までの鬼と機械のスタイルから普通の人間に変わる。
しかし、肌が黒くなることと、血脈が赤い線として浮き上がってくるのは変わらない。この辺は能力というよりは黒田としての特性だからな。
右半身は強欲の魔手が既に控え、俺の体を守ろうしている。左半身からは黒い尻尾のようなものが生えており、禍々しさが伝わる。
今までは鬼と機械のハーフだったが、今の俺は完全に『悪役』へとジョブチェンしたのだ。
これこそ俺の体だな。
二人とまた生活出来ているから、こんなことが出来るわけだ。
さてさて、暴走鬼をどう討伐しようか。
この際だから、もう周りへの影響は気にしない。結界はあるしな。
奏汰の時空を裂くような強烈な右ストレートを左手で弾く。逃げようとした奏汰の体を尻尾と魔手が捕まえ、止まらせる。お返しとして、右ストレートを本気で撃ち抜く。
強欲と破壊により強化された拳は容易く奏汰を消し飛ばす。右ストレートの影響で結界が粉々に砕け、訓練所を破壊した。
「ふう。終わりだな」
奏汰だったものを地面にポイする。
左腕しか残っていないので、かなり可哀想なことになっているが、スグに復活させる。
「はっ!御褒美は・・・!」
「あるわけねぇだろ。むしろ、あとでお仕置きだ。・・・あすかと共にな」
「本当に!?」
「明日香とは別で仕置だ」
「人でなしめッ!」
なんで俺が非難されるんだよ。
騎士様や騎士共はソワソワしている。当たり前だが、化け物同士の争いを初めて見たからな。たいていの武人は少しでも真似しようとスグに鍛錬を始める。
騎士様たちもその症状が出てるな。
「奏汰。金輪際俺と戦うことは禁止するぞ」
「そんな!御褒美が・・・!」
「バカね。・・・えっちなお願いじゃなければ聞いてあげるわよ」
あほ。
「・・・ぐべバッちゃブルッ!」
ほれ。言わんこっちゃない。
胸を抑えたかと思えば、鼻血と吐血を同時に行い、その衝撃で三回転して、頭から地面に落下したぞ。頭が地面に埋まって植物化してるじゃないか。
「明日香、程々にな」
「・・・分かってるわよ。私はあなたも奏汰も・・・ね・・・」
「はぁ」
地面に生えていた奏汰を掘り起こして、往復ビンタでこの世に呼び戻す。
「戻ってこーい」
「はっ!膝枕わっ!」
「・・・後でやってもらえ」
「やった!」
いつからお前は常識人をやめたんだ・・・。お前までふざけはじめたら俺がまとも役を請け負わなければならなくなってしまう。・・・俺もまだまだ遊びたいのに・・・!
そんなこんなで二日目も終わりを告げた。
明日は魔法師の訓練をしつつ、気になることを解決していこうと思う。明日も忙しくなるぞ~。
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