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第三章 御一行様は冒険者になるようです
第四十五話 竜の試練
しおりを挟む◇第三者視点
人型の種族と竜とが共生する地域。世にも奇妙な地域だ。
プライドが高く、人間を「雑種」「下等生物」などと呼ぶ竜がその雑種、下等生物とともに暮らしているのだ。奇妙としか言いようがない。
「ようこそ!勇者様方!!」
その小さな辺境の村に現代人達が訪れた。
三つの国の勇者。
一つ目は勿論ネメシス王国。
二つ目は豚王がおさめるあの帝国。
三つ目は魔法国家『ミステラ』。
ネメシスは異界の勇者。帝国は武の勇者。ミステラは魔法の勇者。
武と魔法の勇者には生まれた時から星の印が鎖骨の下あたりに刻まれているという。生まれた時から選ばれた勇者というわけだ。
「けっ!なんでこの俺様がこんなチンケな村に来ねぇとならねぇんだ」
武の勇者『カール・イービナー』は村の土に唾を吐く。
筋骨隆々の彼は勇者として育ってきたので、こう傲慢な男になってしまったようだ。
「今日は宜しくお願いしますね。光輝くんに村の皆さんも」
「うん。よろしく、ミルくん」
『ミル・サテサライト』はカールを無視して伊野光輝と村の入口にまで迎えに来てくれた女の子に挨拶をする。
「はい。宜しくお願いしますね!勇者の御三方にお会いできて嬉しいです」
「感謝しな、女。なんなら今晩俺のベットまで来てもいいんだぜ」
下衆た笑みを浮かべ、村の女の子を気味の悪いニヤニヤとした目で見ているカール。
しかし、残り二人の勇者、伊野光輝とミル・カイバーはとことん無視をする。
「では早速ですが、案内をお願いしても宜しいですか?」
あくまで丁寧な口調を崩さないミル。それを見て同意するように伊野光輝も「お願いします」と声をかける。
「はい。分かりました。私の名前は『リミナ』といいます。宜しくお願いしますね。これから村長の元へとご案内するので、私のあとをついてきてください。はぐれたら危険ですのでしっかり着いてきてくださいね」
そう聞いて伊野光輝とミルは警戒を強める。
村総出で攻撃されるとは思っていないが、自分たちを良しと思わない竜たちもいるだろうと彼らはすぐさま理解したからだ。
ルンルンで歩くリミナのあとを横に並んで付いていく光輝とミル。その後で頭の後ろで腕を組んでカールが歩く。
人や竜を見かける度にお辞儀をしていく光輝とミルは竜からの警戒を解かれていくが、カールは鋭い視線と鋭い殺気を送られ続けている。
「光輝くんは異界の勇者なんですよね?得意な魔法とかってあるんですか?」
「僕は光魔術の専門家だね。近接、遠距離、守りも回復も。何でもできるよ。ミルくんは?魔法国家って言うくらいだからやっぱり強力な魔法を使うのかな?」
「強力かは分からないけど、一応そうだよ。僕は多重魔法師。いくつも属性を持ってる魔法師だよ」
「凄いなぁ……。僕ら魔術師は複数属性を持てないからね。羨ましいよ」
「魔法師も手に入れるのは簡単ではないですよ?そういえば魔術って魔法とは違うベクトルなんですか?」
「うん、違うよ。簡単な違いとしては、魔術は最初から詠唱がないってことかな。どれだけ複雑な術式を使っても、登録しておけば、待ち時間もほとんど無いんだ」
「それ便利ですね!僕ら多重魔法師は時間がかかって仕方が無いんですよ……」
「アハハ。どんな能力もメリットデメリットがあるから」
例外もあるけどね、と付け足して笑う光輝。
会話が終わったのを見計らい、リミナが振り返る。
「皆様着きましたよ!ここが村長が住む家です!今日はここでの会談となります。御食事も用意させていただきますので、それまでは談笑でもしていて下さい」
勇者の目の前には大きな大きな家がある。
全体的に大きな家が多い村だと思っていたが、目の前のそれは他のものとは比べ物にならないくらい大きい。
「大きな家だね……。これには流石に僕も驚いたよ……」
「それは勿論ですよ!この村を統べる長と竜の住まいですからね。これくらいでなければ示しがつきませんから!」
感嘆の声を漏らす光輝にそう言うと、リミナはドアを開けて勇者達を手招きする。
「さささ、どうぞこちらへ!」
その言葉に従って中に入る光輝。それに続いてミルが入り、ミルはドアをパタンと閉める。それを蹴破るカール。
武と魔法の勇者は極端に仲が悪いらしい。
蹴破られたドアは無残にも家の床を滑り、二つの影の間で見事に止まった。カーリングであれば褒められるところだが、この家の主達はそうはいかないらしい。
ーーいきなりなご挨拶だな勇者共……
「かかか……。確かに丁寧な挨拶とは言い難いな。此度の勇者はあまり頭が宜しくないのかも知れぬ」
一体は巨大な翠色の竜。
一人は異常に魔力の濃い爺さん。
二つとも尋常ならざる覇気を持っている。
「そーんちょーう!勇者様連れてきたよぉ!」
リミナが軽い調子で勇者達を指さす。
「僕は伊野光輝といいます。今日は良い会談になることを楽しみにしています」
「ミル・サテサライトといいます。僕もそうですね。貴重な時間です。いい経験となることを心待ちにしてますよ」
「俺に竜をよこせ」
あくまで傲慢な態度を変えないカール。
それに対して舌打ちをするミル。勇者という括りとして自分までカールと同じ評価を受けるのはいただけないのだろう。
ーー開口一番、竜をよこせときたか。我等の村でそう言った態度はご法度だぞ。全ての竜の因子を敵に回すのと同じだ。
勇者の近くにいるリミナも獰猛な牙を見せ、苛立っているのがよく分かる。
光輝もミルも負けるとは思わないが、全て敵に回すというのは厄介だとお互いに顔を見て、そう判断する。
「すまない。僕らも会ったばかりなのだが、武の勇者はどうにも礼儀を知らないらしいのです。気に触ったのならすみませんでした」
「僕からもすみませんでした。そこの脳みそ空っぽ野郎が邪魔なら私達が殺しますが、いかがいたしましょう」
「アァ!?んだテメェら!俺が勇者だと知っての狼藉かこの野郎!!」
ガンを飛ばし、大声を上げるカールだが
「黙れよ、くそがき……」
伊野光輝が本気の殺気を送る。普段の彼からは想像もできない表情。死線を何度も超えてきた最強の光魔術師の本気の殺気だ。普段は押し殺している凶悪な性格も少しばかり顔を見せている。
その殺気は威嚇には十分だったようで、カールを気絶させた。
しかしそれだけには留まらず、リミナ、ミルの本能に恐怖を与え、竜と長にも自分の強さを見せつけることとなった。
(なにをすればこんな殺気が身につくのか……。相も変わらず異界の勇者というのは馬鹿げておるわい……)
ーー小僧。それ以上は辞めておけ。戦場に出たこともない子供が長時間受ければ死ぬぞ
「殺しても構いませんよ?要らないものは捨てるのが基本です」
ニコリと笑を浮かべる光輝。
やはり異界の者は頭がおかしいようだ。
ーー必要ない。そこで寝ている者はそのまま置いておけ。勇者二人は奥のダイニングで飯にしよう。着いてこい
「はい。ではそうしましょうか」
部屋内を満たしていた濃密な殺気が消え、穏やかな笑みを取り戻した光輝。
冷や汗でびっちょりとなったミルとリミナも平静を装いながら、部屋の奥へと向かう。
カールは寝たきりの状態で、村の人々に連れ去られていった。どこへと引きづられて行ったのかは秘密としておこう。
竜と長に連れられて向かった先は和の雰囲気がするダイニングであった。
それ程大きくないが、お店にありそうな机と、畳の上に置かれた四角い座布団が心地の良い空間を演出している。部屋自体はかなり大きいので、寂しく見えないこともないが。
「ここは……?食事場というのなら、あまり見慣れない形ですね」
ーーそうだろうな。しかし、異界の勇者ならば多少見たことがあるのではないか?
「ええ。私達の故郷では少し前までこういった形式でご飯を食べていました。懐かしいですね」
木製の机や椅子を撫でて、故郷を思い出す。
自分以外の全員が椅子に座ったのを確認して、光輝も指定された座布団に座ることにした。
「さてさて、此度の勇者よ。要件を聞いていこうかのう。ま、想像はつくんじゃがね 」
「先ほどアホが言っていたように、騎竜を貸していただきたいのです」
ーーふっ。そう言うと思ったぞ。一応候補は出してある。その中から選ぶといい。しかし、優先するのは竜側の意見にして欲しい
「もちろんです。僕達は頼みにきた側ですからね」
ーー助かる。……せっかく作ってくれた飯を冷ますのはよくない。早めに食べてしまおう
和系の料亭料理が並んでおり、どれも装飾のこった料理。勇者二人と、村の二人がこの料理を美味しそうに頬張っている。そして、同席する大きな竜はこんがりと焼けた大きな肉にがっついている。
飯時の会話などは特になく、黙々と食べる面々。時折こう言う「美味」であると。
そして全員が飯を食べ終わった頃に……
ーーそれでは長よ。彼らを案内しようか
「じゃな。いい時間帯じゃろう。ついてまいれ勇者よ」
よっこらしょっと重い腰を上げ、長と竜が家の外へと出る。それを追うようにしてミル、光輝、リミナと家を出た。
「先程言っていた騎竜の候補元ですか?」
ーーそうじゃ。しかし、楽に得られると思うなよ?
それからずっと、過去の勇者や竜の扱い方講座が続いた。
やはりこの世界の住人は話し出すと止まらないらしく、ひたすらに長い。ミルはうんうんと頷きながら聞いているのだが、光輝は暇すぎて体内の魔力を練って遊んでいる。だが、遊んでいると気付かれないように、表向きは真剣なのが彼の軍経験の長さを物語っている。長い話の暇を潰す技術も一流なのだ。
「話はこれくらいでいいじゃろう。ここじゃよ。ここが『竜の試練』。中で騎竜の候補となっている者達がおる」
薄暗い洞窟が口を広げている。数は九つ。そのいずれからも腹をすかした竜たちの鳴き声が聞こえる。
ーー中にいる者達は生き物を食いたくて仕方が無い連中。ようは、村に入れないような奴らだ。そいつらを見事手懐ければ、連れて帰ることを許可する
「わかりました。では僕は早速……」
伊野光輝は迷わず左から二番目の洞窟を目指す。
「……僕も行きますか」
対するミルは「どれにしようか」とひたすらに悩んだ末に、中央の洞窟に入ることとした。
ーーなぜ勇者達は自ら苦難の道へと進みゆくのか……
「じゃな。中でも気性の荒い二匹のもとへと向かうとはのう」
ーー異界の勇者は『サティウス』。魔の勇者は『グーレンティウス』。
死ぬかもしれない、そう竜と長は語り合う。以前の勇者も苦難の道を行き、死人が出ているのだ。今回は、異界の勇者、魔の勇者、武の勇者、三人であったが、前回は六名。その前は八名であった。その中で生還者は共に三名。全滅がありえる状況なわけだ。
溜息を吐く一人と一匹に声をかける者が一人。そしてそれに従うように歩く一つの影。
「あれ?ミルくんはまだ帰ってきてないんですね」
異界の勇者『伊野光輝』である。
時は遡り……
◇伊野光輝視点
僕らの目の前には九つの洞窟がある。暗く、中は見えない。
しかし、先程からチラチラと聴こえてくる音がある。
ーー金髪の勇者よ……。聞こえているのなら左から二番目の洞窟へと来てくれ。貴公と話がしたい
多分僕しか聞こえてないんじゃないかな?
ほかの人達は無反応だし。なら、僕も他の人には聞こえないように話をしよう。
光魔術を使って、声が辿る道筋を作る。声が外に漏れないように音波を調節していく。
……こんなものかな?
〈あーあー。聞こえるかい?〉
ーー!?貴公は人間なのに念話が使えるのか!
〈よし、聞こえてるみたいだね。これは念話じゃないよ。そういった事ができる人達もいるけど僕は出来ない。異界の力でね。魔術というのを使ってるのさ〉
ーーふ、ふむ……。よくわからないが、こちらに来てくれると言うことで宜しいのか?
〈うん。構わないよ。僕の力も完璧じゃないからね。誰かに聞かれてるかもしれないから、一旦切る。そちらに行くことは約束するよ〉
ーー感謝する
……スカウトってやつかな?
楓くんだったら「御指名頂きましたァ!」って言うような展開だ。異世界で、しかも竜にご指名頂くとは……。ここに来たこともそうだけど、分からないものだなぁ……人生って。
翠竜さんの話が終わって、選択の時が来た。……勿論左から二番目の洞窟に向かいますよ?当たり前じゃないか……。ハハハ。めんどくさいとかは思っていないよ。楓くんじゃあるまいし。
「わかりました。では僕は早速……」
というわけで、指定された洞窟へと向かう。
中は暗い。光魔術で照らすと、そこには大きな大きな竜がいた。翠竜と変わらないほどの巨体。竜と呼ぶに相応しい形をしている。
ーー儂のもとへと来てくれたこと、感謝する。名を聞いても宜しいか?
白色の竜。穢一つないその真っ白な姿は、見るものを魅了し、堕落させるほど美しい。
「僕の名前は『伊野 光輝』。一応、光魔術師最強と呼ばれていた男だよ。君は?」
ーー儂の名前は『サティウス』。穢れなき希望の光を操る竜。そう昔は呼ばれていた。今はただのか弱き暴れ竜だがね……
「か弱くは見えないけど?」
ーーいや、汚れた世界の光を浴び過ぎてな……。今ではもう操ることの出来る光も少なくなってきている。そなたをここに招いたのもそれが理由でな。儂に、もう一度希望を生み出す光を見せてはくれないか?
僕の光は薄汚く、穢れきっている。人々が僕を勇者だと評価するのは、その光が綺麗ではないから。完璧な白に人は寄り付かない。嫉妬に焼かれ、その者を叩き落としたくなってしまうから。
「僕の希望は自分勝手なものが多い。だからこそ勇者でいられる。君の求めている光は僕には出せないと思うよ」
ーー儂は貴公の真っ直ぐな光に縋りたいだけなのだ。儂は光を操る竜とあるが、儂自身が光を発することは出来ない。貴公からは真っ直ぐな意思を感じる。例えそれが世界を滅ぼすことになっても儂はそれを『穢れなき光』と呼ぶだろう。頼む。儂を、折れることの無い一つの道に縋らせてはくれないだろうか……!!
頭を下げるサティウス。プライドの高い竜種とは思えない。
僕の持つ意思ね……。今の僕にあるとすれば、『ぺネイトさんを必ず守りぬく』ことぐらいしかないかな。……私欲しかないけど大丈夫かな?
「僕が信じているのはただの一人。例えその子が嘘をついて、僕を、国を、世界を壊したとしても、僕にとっては彼女の言葉が絶対だ。彼女の言葉と他大多数の言葉が相反していようが、僕からしたら彼女が真実で、他の大多数が嘘つき。……そんな汚れきった光で良いならば、ついてくるといい。僕が道になろう」
ーーっ!その言葉を待っていた!!これから宜しく頼む、『光輝』と呼んで良いか!?
「もちろんだよ。宜しく、サティウス」
すると、僕のMPがゴソッと抜かれる。
「うおっ!?」
ーー入ってくる……。これが、光輝の光。儂は光輝に一生ついて行こう!例えこの命が尽きようとも!地獄の底から光輝を救う策を考えよう!!
サティウスがバサッと大きな二つの翼を広げると、強い光が洞窟内部を照らす。
……びっくりしたぁ……。急にMP抜かれるし、発光するし……。
ーーふう……。全盛期の力が溢れてきた。……いや、それ以上だな。体は小さくなったが、力は数十倍に膨れたはずだ。ありがとう、光輝!!
確かに小さくなった。三分の一くらいに。竜って伸縮自在なんだね……。
「よし、契約でもしとく?」
ーー契約とな?
「うん。君が僕の従竜である限り、僕が君に光を与える。そういう契約。お互いを信じれるようにね」
ーー破るとどうなる?
「光を失う」
ーー……なるほど。光竜たる儂、光魔術師なる光輝。互いに失う物は大きいな……
ニコリと笑って契約を勧める。
僕からしたら超がつくほど好条件だけどね。……光魔術師が明るい光だけを操るといつから錯覚していた?この力について詳しく知らないどっかの研究者が、勝手につけたのが『光魔術』。ま、それのお陰で助かった場面もあったけどね。
ーー受けよう、その契約。それに、儂は貴公に永遠付き従うと言ったろ。光輝が裏切っても儂は絶対に裏切らないぞ
契約魔術が簡単に受け入れられたので、その決意が本当だと思っておこう。
「そっか。それならいいや。ここでずっと話しててもなんだし、そろそろ外へ向かおう」
ーー了解した。
そうして、僕は勇者らしい騎竜を手に入れることが出来た。
◇ミル視点
はぁ…はぁ…はぁ……
ーーこんなものか……此度の勇者も。なぜ俺の所に来る奴らは毎回毎回弱いんだよ
強い……。
それに、最初の一撃を不意打ちで貰ったのが痛い。
僕は今、翠竜と似たような色をした竜と戦っている。名前は『グーレンティウス』。かつて、疾走竜と呼ばれていた空を高速で飛び回る竜。
多重魔法師の僕との敵としては相性が悪すぎる。でも、是非とも味方につけたい竜だ。
「〈我が身に高速と炎舞の強化を〉『速炎』」
自前の杖でグーレンティウスの攻撃を流しつつ、炎と強化の複合魔法を使う。
速炎の効果時間はそこまで長くない。その間になんとか攻撃魔法を当てないと!!
ーー小賢しいわァ!!
グーレンティウスの素早い突進をなんとか躱すが、すぐに振り返ったグーレンティウスのブレスが僕の背中に直撃する。
「がァァ!!……〈吾、この地を眩しき光で満たす〉『光球』!」
目眩しにしかならないだろうけど……!一瞬でも怯ませれれば……!!
「〈絶望の先にある光ある世界を渇望する、無限に湧き出る亡者達を討ち、薙ぎ払わんとする力ある者。吾らはかの者らの意思を伝える使命があると知る〉『死滅促す帝王の光』!!」
詠唱完了!!
「ゴォフッッ!!」
グーレンティウスのブレスが再び直撃したが、詠唱さえ終わればこちらのもの。多重魔法師を舐めるなよ!!
壁の至る所から白い腕が伸びてくる。その一本一本から淡い光が漏れ出ている。浄化の光。悪しきものや、発動者に向かってくる魔法を撃ち落とす力がそなわっている。他にも、不壊の能力が備わっていたりする。
壁から伸びた腕がグーレンティウスの体を拘束する。魔法外で放たれるブレスは無効化できないので、それにだけは注意しておかねばならない。
ーーぬぅぅん!!!
暴れているが、そう簡単に解けるほど甘い魔法ではない。我が一族に伝わる伝統ある複合魔法だ。世界を紐解いたという先祖様。大賢者と呼ばれたお方が作り出した魔法。この間に数発は複合魔法を放っておきたい。
「〈悪しき王を滅するべく、吾が持つ全ての魔を集結させる。原典を再び我らが手中に……〉『破滅招く世界の鉄槌』!」
超特大のハンマーをグーレンティウスに叩きつける。
大賢者様には至らないが、そこそこの威力が出てるはず!
ーー確かに……以前の勇者共よりはまだマシかもせんなァァ!!!
……効いてる?本当に効いてるんですかぁ!
大賢者様!超魔法じゃないんですか!
ーーカァァ!食らえ勇者よ……グラァァァ!!
まず……極大のブレス……!!
速炎が切れた……!?まずい……当たる!!
「『分解』」
うがァ!!……ってアレ?
……消えた?一体何が……。まさか……大賢者様!!?
「……おい、勇者がいねぇじゃねぇかよ……。本当にここにいたのか?世界眼さんよ。……え、マジで!?勇者って異界の奴らだけじゃねぇの!?」
おいおいマジかよ……
そう言う若い男の人。
「あ、あの!あなたは大賢者様ですか!?」
大賢者様なら握手して貰いたい。出来ればサインも。
「ふざけんな。まだ魔法使いにもなってないわ!賢者飛び越えて大賢者とか舐めてんのか」
違ったようだ……。
まぁ確かに、こんな若いはずないか。数百年、数千年生きているとかっていう噂だし。
「それで?魔の勇者様よ、アレは敵か?」
「……味方です。というか味方になる予定です。というかあなたは誰ですか」
ーーグラァァァ!!
「『分解』。そうだなぁ……。異界の勇者の友人ってところかな……?」
なぜ疑問形。
「それよりもなんで味方に攻撃されてんの?さっきのブレス下手すりゃ死んでたろ」
「騎竜になってくれって言ったら『俺を倒してから言うんだな!』って言われました」
「……話が違うぞ世界眼。お前の話だと『襲われている』じゃなかったか?これだと『試練を課されている』で、自ら挑んでるじゃないか。……ドジっ子アピールを辞めなさい」
ーーグラァァァ!!
「『分解』」
……この人はさっきから一人で何を言っているんだろうか。
こちらは大ピンチなのだから一人芸は辞めて欲しい。
「それで、どーするよ世界眼。この男の試練ならば俺達が介入するわけにはいかんだろ。……なるほどねぇ。『再生』」
アレ?MP、HPが元に戻ってる……。外傷も全て……。
「回復だけはしてやった。介入しちまって悪いね。ま、後は頑張りな」
そう言うと、その男は消えていなくなってしまった。
……手伝ってくれるわけではないんだね。
「でも、回復はした。僕の最強の一撃で締めくくるとしよう!!」
そうして僕は、最後の魔法。大賢者様から授かった最強の魔法を発動させるのであった。
ーーーーーーーー
はたつばです。
……最近主人公視点書いてない気がするのははたつばだけでは無いはず。……この回閑話っぽくね?てか前回もじゃない?
ドラクエシリーズにハマって思うように書く時間が確保出来ない現状。……ゲームの魔力って怖いですね
次回更新は三月十日金曜日です。
次こそは楓視点を一回は入れたい……(強い願望)
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