12 / 138
第一章 召喚されたからって勇者はしない
第十二話 楓vs漆黒竜
しおりを挟む〈全長は約五十メートル。個体名は『漆黒竜』レベルは2600です。成竜となった竜種五体のうちの一体ですね。出来れば殺さずペットにしたいところですね〉
レベル2600か……。すげーな。向こうの世界でも類を見ない化物じみた殺気。まさか異世界生活二日目でこんな同類に出会えるとはなっ!
世界眼!こいつ服従させるぞ。俺のペットに相応しいじゃねぇか。
走って会長のもとへと向かい、肩を叩く。
俺を見て驚いていたが、そんなことに反応してるほど俺は暇じゃない。
「会長。少しの間この子を頼む」
「え、あ、うん・・・?」
気絶したマリーを会長に受け渡し、後ろに下げさせる。こっからは俺も本気。久々に殺らせてもらおうか。
戦闘系恩恵シリーズ『反射』『肉体強化』『神威』『血液操作』
便利系恩恵シリーズ『変身』を使う。
『神威』肉体や恩恵の力を昇華させる。使った後は割と疲れるのであまり使わない。
『血液操作』体内、体外にある血液を操作できる。体外の血液ならば自分のものでなくても動かせる。
「『神威』『反射』『肉体強化』『血液操作』」
神威と肉体強化により肉体強度は極限まで上がっている。その状態で血液操作を使う。体内に流れる血液循環速度を爆発的に上げるためだ。
「さぁ……始めようか。蜥蜴野郎」
まずは伊野を回収する。モグモグされているが癒し手にもなれる伊野なら生きているはず。
超速で漆黒竜の顔の横に移動。そのまま思いっきり殴る。俺の存在に気付きながら反応出来なかった漆黒竜は驚愕し、伊野を放した。
地面スレスレで伊野を回収し、会長のもとに戻る。
「光輝くん!!!」
伊野の取り巻きが一人。音才『音科真紀子』love伊野光輝代表者。強い弱いといった力ではないが、伊野への愛はぶっちゃけ怖い。伊野をクラスの中心にまで持ち上げたのも音科だ。
「音科。伊野を頼むわ。再生を使ったが暫くは目を覚まさないだろう。んじゃ看病よろしくちゃん」
伊野を音科にポイして漆黒竜に向かう。
「ありがとう・・・黒田くん」
はいはい。どいたまっせ。
少しあいつらとも話したいし、漆黒竜には少しの間退場してもらおうか。
異空間の創造。なにもない世界の創造。その世界への入口をやつの後ろに設置。そして高速キック。吹き飛ばして異空間へととばす。
「んじゃ、俺行ってくるわ。会長その子返して」
「え?あ、うん。はい。」
よしいこうか。本気の勝負やで!!!
「ま、待て楓!」
吉岡さんよぉ……普通呼び止めんのは会長じゃろがボケェ!
お前に言われても俺は戻る気がおきねぇよ!
「実は一人別場所に転移されたみたいなんだ。何度もすまんが回収してきてくれないか?」
止めるわけじゃねぇのかよ!!ちょっと期待した分恥ずかしいわ!
そういえば伊野、吉岡、会長、音科、影の薄い影宮。うん五人しかいねぇ。六人って聞いたから確かに足りないな。
「どっかいったのって誰?」
「……お前名前言ってもわからんだろ。学校あんまり来ねぇし」
「念のためだよ」
「……『神谷瞬』」
なるほど、わからん。知らねぇよそんな人。名前的に男だとは思うがそれ以外の情報がでてこねぇ……
「うん。わかった。いたら回収してくるよ」
「なんか心配だが……頼んだわ」
「んじゃお前らはもう戻れ『転移』」
俺がそう言うと五人の姿は消えた。戸塚の所に転移させた。ここはあいつらにはまだ早いだろうしな。あいつらにはキマイラよりちょい弱いぐらいが丁度いいだろう。
さて漆黒竜を倒しにいきますか。ペット化したいから殺さないよ?
バフ状態のまま腕を横に薙ぐ。空間に亀裂が走り、その先にある世界への門が開く。実際は丸い穴みたいなもんだが。
中では先の漆黒竜がこちらを見据えてまっていた。
「待たせたな。黒蜥蜴」
マリーを床に寝かせておく。何重にも守護をかけて。過保護くらいが丁度いいのさ。
――何者だ貴様。その威圧感、やつらに似ているが違う。なぜだか、異界の匂いがする。勇者か?その割には強すぎる気がするが。
「すごいなお前。そんなことまで分かるのか。だが俺は勇者じゃない。巻き込まれ民だよ」
――そうか。異界の者ではあるのだな。貴様は本当にやつに似ているな。異界最強の巻き込まれ民とやつも言っておったわ。
漆黒竜はグハハと笑っているが、俺から言わせれば「で、なに?」って感じだ。こいつの話についてけない。
「その巻き込まれ民は知らんが、取り敢えず戦おうぜ。こちとらくそ雑魚としか戦ってなくて地味にイラついてんだよ」
これまで戦った盗賊も、キマイラも弱い。弱すぎた。この世界への期待が薄れてくるぞ。
――そうかそうか。悪かったな。この世界のものは極端でな、弱いやつは本当に弱いんだ。それにしても貴様相当強いな。儂も殺されそうだ。
またもグハハと笑う漆黒竜。こいつ頭おかしいわ。殺されそうだグハハはおかしいだろ。
だが安心しろよ漆黒竜。
「殺しはしないさ。半殺しにするだけだ」
――面白い。いくぞ人間。貴様の力をみせてみよ!!
「そのセリフ、種族だけ変えて返してやる!!」
手始めにさっきと同じくらいの速さ、強さで漆黒竜に拳を向ける。
漆黒竜はさっきのはなんだったのかと思わせるほど軽く身を翻らせ、避ける。その状態のまま、尻尾を俺に叩きつける。
普通ならそのまま叩きつけられてさようならなのだが、そこはやはり俺。異常な肉体強度と守護を持つ俺はそれを受け止めつつ、反射で力を倍以上にして返す。
反射により漆黒竜の尻尾は弾け飛んだ。
――ぐっ!!
一瞬苦悶の表情を見せたが、すぐさま態勢をととのえ牽制の黒いブレスを放ってくる。
流石は竜種。ますます気に入ったぜ。
俺は放たれた黒ブレスを分解しようとする。だが、かなり強いらしく、分解の力が弾かれた。ならば戦闘系恩恵シリーズ『消去』!
『消去』なにもかもを消し去る。消すものに制限はなく、星だろうと、世界だろうと消してみせる。一日の使用可能数は三回まで。それ以上は体の一部を代用すれば使用可能。
あと二回。ちょいブレスはやばいな。今の威力で守護を抜けるとは思えないが、これ以上の可能性も考えられる。
「面白い!面白いぞ漆黒竜!!」
――貴様は本当に強いな人間!!よろこべ!今のに対処してみせたのは貴様で三人目だ!!
本気で強いぞこの蜥蜴。久々だわこの感じ。人生の中でも五本の指に入る争いだわ。楽しくて仕方がない。
昨日世界眼に使い方を聞いたあれも使ってみるか。こいつはそれに値する!
「呼び声に応えろ黒刀『月姫』!!」
召喚されたのは一本の刀。刀身が黒く、柄の端にある頭の部分には鈴が付けられている。
俺が武器を使うのは珍しいのだが、この刀はかなり有能らしい。一つはこの刀はその刀生の中で浴びた血の量により斬れ味が増す。二つ目は刀で空を斬ると
シャラン
――ガッッ!
鈴の音が聞こえた敵を切り刻むのだ。
目に見えない攻撃。音を聞けば否応なしに切り刻まれる。
さぁどうする漆黒竜。
――貴様…その刀なにかあるな。刀は一度しか振っていないのに儂は今二十六回斬られた。
「ヒントをやるよ蜥蜴」
俺はもう一度刀を振るう。
また切り刻まれる漆黒竜。
――ぬぅ。わかったぞその刀、音を頼っておるな。ならばーー
そう言って漆黒竜は自分の耳に指を入れ、爆発を起こした。鼓膜を耳ごと吹き飛ばしたのだ。
……まじかこの竜・・・やべぇはこいつ。二度目で気付くとは思わなかったし、なによりこいつ躊躇なくいったな。ん?でも待てよ?こいつ俺の声聞こえないんじゃ・・・仲間に引き込めないんじゃ……
「おい!聞こえるかクソ蜥蜴!」
――なんだ貴様。急に儂をクソ呼ばわりしよって。年長者にたいして失礼じゃぞ
「聞こえてんのかい!!耳どうした!?」
――耳なら吹き飛ばしたろ。お前の表層心理を読んどんじゃよ。お前の話す内容くらいなら儂でも読める
なんだそれ!?もう完全にファンタジーじゃねぇか・・・。
・・・ここ異世界か・・・。諦めるしかないか。
――そんなことはよい!避けろよ人間!
「チッ!魔法か!!」
四方八方から槍状の黒い塊が飛んでくる。
月姫ここで壊したくないし。あれを使おう。
「はっ!クソッタレがッッッ!!!『神威』!!」
神威の二つ目の使い方(応用編)。なんかよくわからんけどオーラっぽいやつを出し操る秘技。黒いオーラをぶん回して全ての槍を落とす。
――今のも落とすか。貴様なかなかに化物よのう。だが、そろそろ本気を出してくれんか?
あれ・・・もしかして俺今煽られてる?……むっかつくわ。
ええよええよ。やったろうやんけ。
「言っちまったなら覚悟しろよ。蜥蜴」
一度俺にかかっている全ての恩恵の力を解く。
「肉体にかかっている全ての制限を解除。作られた人間の皮も別空間に隔離」
顔を除く右半身の皮が全て剥がれ、機械となった部分が顕になる。
左半身は腕から徐々に黒くなっていき、やがて左半身全てを覆った。
ある戦いで右半身を失い、改造を繰り返した機械仕掛けの右半身。
ある者から受け継いだ人でない左半身。
――貴様本当に人間か?まるでそれでは……むっ!
漆黒竜が何か言っているが、どうでもいい。俺の姿と漆黒竜の姿が消える。
俺は漆黒竜のいた場所に立ち、漆黒竜は遥か後方に吹き飛ばされていた。
「立てよ。久々のフルパワーだ。加減を間違えたらすまんな」
ーーーーーーーー
はたつばです。
なんか最終話みたいな雰囲気ですけどまだ二日目ですからね。
まだまだ続きます。なんか二人とも強すぎーになりました。
バトルを書いてると厨二病の血が騒ぐのです
0
お気に入りに追加
2,576
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる