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48 闘技会?

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「スー、ポン吉の言葉がわかるか?」
「アンアン言ってるだけなのです。プリちゃんはどうですか?」
「何となくな」
「やっぱりプリちゃんなのですっ。ポン吉も良かったのですっ」
「アンアン(そう思う)」

 本当はしっかりわかるけど、フレアバードの時に羨ましがられた記憶があった。ちょっと遠慮気味に答えたけど要らない気遣いだったらしい。
 スーはティムをした自信があるからだろか、意外にもさっぱりした反応だった。
 だけどこういう部類の言葉が当然わかると思われたのなら逆に困る。現にわからない時もある。

「デカい時は全然わからないぞ? 何が違うんだ?」
「アアン。アンアアーン(知らない。でも主のおかげ)」

 短い尻尾をバタバタさせているので喜んでいるのはわかるけど、こいつとはスー以上に会話が成立しない。
 もともと狼なのだから、高望みはするべきではないのだろう。

「とりあえずスーの誤解は解けたとして、討伐隊が来るというのはどうすればいい? このままだと使い魔登録どころじゃないだろう」
「ポン吉がこんなに小さなワンちゃんになったら登録はいらないので、それは構わないのです」
「アン(狼)」

 豆柴の抗議は無視して、言われてみればでっかくて危険視されるからの登録だ。普通にワンコだとこちらの世界でも飼ってるし、牛や馬にも必要ないのと同じ。

「でも町にはプリちゃんの用がありますが心配ないのです。スーにいい考えがあるのです」

 すっかり忘れていたが、ここへは俺のために来ていた。
 襲われた時にはとても助かった頑丈過ぎる体。恐ろしくて試せないが、樫の特性によるとしたら燃えやすくもなっているかもしれない。
 魔法でもアイテムでも構わないので、本当に燃えやすくなっているなら克服する術が欲しい。
 結局、町の守備隊から大目玉をくらったものの、スーの作戦が上手く行って町へ入ることができた。でかいポン吉は、すべて幻影魔術によるもので苦しかったが押し通した。

 魔法も使えない俺がやったと言い張るのだから、説明もあやふやで挙勤不審になってしまう。しかし、プリーストが使える数少ない防御魔法に幻影魔術があったこと。若い女の子の二人旅なので身を守るために仕方ないことなど、善意で納得してくれたと勘違いをしていて、あとで非常に面倒なことへ巻き込まれるとは思ってもいなかった。
 更にもう一つ目論見通りにならないことがあった。

 町へ入った俺達というよりポン吉が注目を浴びることは結局止むことはなかった。
 豆柴ポン吉、かわいすぎっ。
 これまでは、いかついオッサンとかが譲れと言ってきたのに、今はその辺のおねーさんとか有閑マダムっぽいのが次々やって来る。相手にするのが面倒になってくるほどだ。

「ポン吉、その辺にしょんべん掛けてやれ」
「アン(いいの)?」

 化粧臭い手でべタベ夕と触られたポン吉も気分を害していたのだろう。嬉しそうに尻尾を振る豆柴を見て、ゴーサインを出しそうになったがなんとか踏み留まった。

「冗談だよ」
「アン(残念)」

 町へ入って冒険者ギルドヘ向かうだけなのに、何人声を掛けてきたやら。
 うんざりした俺達がようやく冒険者ギルドヘ辿り着くと、魔法都市との名前は伊達ではない。冒険者ギルドは魔道ギルドと並んで建っていた。他の町ではあまりないごとだが、明らかに魔道ギルドの建物のほうが立派だった。一方は白亜の石造りで三階建て。もう一方は普通の木造の二階建て。
 魔道ギルドのほうが大きいのはマジックアイテムの鑑定や販売をするスペースが併設されて利益を上げているからだと、ポン吉の使い魔鑑定のために一度来ていたスーに教えられた。

 クエストを受ける気はないので本来は行く必要がないのだが、初めての町なので何でも情報が欲しい。そんな時は冒険者ギルドが一番役に立つ。
 俺達は町の入口の騒ぎでかなりの有名人になっていたらしく、ギルドヘ入った時から注目されていた。
 何か話が聴ければと受け付けの女性職員へ声を掛けたところ、そのままニ階の個室へ通されて暫く待たされた。
 待遇は違うけど、前にも似たようなことがあったので嫌な予感がする。以前は木の質素な椅子だったが、今はフカフカクッションの応接セット。
 部屋中を物珍しく見ているスーの隣で身を固くしていると、立派な髭と丸いメガネが印象的な壮年の男がやって来て俺達の前へ腰を降ろした。驚くほど大きくはないが、そこそこ均整のとれた体から冒険者かと思ったら元冒険者だったらしい。ギルドの副局長をしているノーマンと名乗り、この部屋へ案内をしてくれた若い女性職員はミリーと紹介された。
 ノーマンは俺達が名乗ろうとする前に一枚の紙を机の上に置くと、挨拶もそこそこに用件へ入った。

「プリさんとスーさんですね。早速ですが三日後から開催される闘技会へ参加してください
「わかりましたのですっ」

 俺も驚いたけど、ノーマンは掛けたメガネがずれ落ちそうなくらい呆気にとられ、聞き間違いではないかと念入りに確認するほどであった。

「あの、スーさん?」
「スーは強くなりたいのですっ。もってこいのお話なのですっ」
「一応説明を――」
「犬丈夫なのですっ。スーの父様が出るのを何度も見ているのです」
「で、では、参加ということで」
「はいなのですっ」

 そして自然に俺へ視線が集まる。
 聴かれるまでもなく出たくない。戦う必要性を感じないし、勝てる気もしない。
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