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予選オーダー

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 大会予選まで一週間を切った。
 授業が終わると俺は道場へ通い詰めた。この練習を始めた当初に、熊沢から受けた冷たい視線の口惜しさは今でも忘れない。それをバネに体を必死に戻してはきたが、稽古をずっとサボっていた俺にはかなりきつい練習が続いている。

 大和たちは、筋を通すために部活を優先することを大先生に命じられていたので、部活の練習が終わってから来ている。
 熊沢は、大先生から『やっと六段へ昇段する気になったか』と冗談を言われるほど顔を出して、嬉しそうに俺をしごいている。
 時々制服姿の柳四段が大慌てでやって来て、熊沢を引っ張って帰るのはもう見慣れてしまった。

 現在の段位は、俺が中学三年から三段のままで、大和は四段、田所先輩は三段で、高橋と新川も三段になっている。実力的にも大和が一歩抜きんでているのは悔しいが事実だ。
 熊沢がいなければ大和と組手をすることが一番多い俺には、否が応でもわかっている。
 それでも昔は俺のほうが強かったと言いたくなるが、また熊沢にバカにされそうなので口にはしない。
 今日の練習を終えて汗だらけの道着を着替えていると、若先生が息を切らして更衣室へと入って来た。

「大輔と柳君と相談をして、第一試合のオーダーを決めたから発表する。泣いても笑っても君たちしかいないことを肝に銘じておくように」

 今回は純粋に大会へ出るためだけに結成されたチームなので、全員が試合へ出られるレギュラーになる。他の団体から見たらズルいかもしれないけれど、逆に言うと補欠人員もいないので、欠員は即大会棄権となるので絶対に許されない。
 若先生の言葉の意味は、本当に大会へ出ることを改めて実感させられ、俺たちに緊張が走った。

「先鋒、支倉大和はせくらやまと
「はい」
「次鋒、田所丈一郎たどころじょういちろう
「は、はい」
「中堅、白石雅久しらいしがく
「……はい」
「副将、高橋智也たかはしともや
「はい!」
「大将、新川透しんかわとおる
「はい」
「ひとまず第一試合はこれで様子を見て調子次第で入れ替えることも十分ある。まさか道場の看板を背負って出るのに、第一試合で負けるなんて思っていないよね?」

 にこやかな笑顔の銀縁眼鏡の奥にある細い目が笑っていない。若先生は本気だ。
 このオーダーからすると、俺、大和、田所先輩、高橋、新川の順の評価になっているのがとても気になるが、入れ替わりもあるくらいの差なのだろう。
 上位の者は驕らず、下位の者は腐らず、どちらも鍛錬を続けろということか。
 だが俺はこの大事な試合で中堅を任されたことに、中学の時以上の震えを感じた。
 もう一度、やり直す機会が与えられたのだ。
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