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第一章 訪れた転機
#04 人善縁多が見る空
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珍しくコウが俺と同じ時間に起床していたので驚いた。
出勤しようとする俺に晩飯は不要かと尋ねてきたので、適当な返事をして自宅を後にした。
会社に着くと、まだドアノブに触れてすらいないのにオフィスの扉がそっと開き、中から上司である御倉課長が顔を出した。
「おはざす」
「わ! おはよう、人善君。驚いた、どこも痛くしなかったかい?」
「痛くしませんでしたよ」
三十歳を目前に控えた御倉課長。実年齢は二十八歳で、俺やコウの五つ年上だ。
仕事においては流石、若くして役職に就くだけあり完璧なのだが、時折こうして言葉の節々に天然さを感じるので敢えて俺はそれに触れるがやはり天然といったところか、全く動じなければ気付きもしない。
何事にも疎い御倉課長だが俺は嫌いじゃないし、寧ろどちらかといえば好きだ。勿論ライクの方で。
「どっか行くんスか?」
「うん、インスタントコーヒーを頼まれたから行ってくるよ。どうもストックが切れたみたいで。……というか人善君『行くんですか』だよ、まったくもう。いつも言ってるじゃないか、君は仕事は出来るんだから言葉遣いさえ気を付ければもっと評価が上がるのに、本当に勿体ない……」
「事務の子、今日休みスか?」
「え? あぁ、そうなんだよ。だから誰かが買いに行かなきゃいけないんだ」
話しを逸らされた事に気付かない御倉課長は困った様に眉を下げてそう言う。
「ふうん。俺、行くっスよ」
「ありがとう。でもいいんだ、こういう事こそ役職が行かなきゃね」
「……どういう意味スか?」
「あぁ、いや……その方が君たちはのびのび出来るだろう?」
冗談ぽく笑った御倉課長に、俺も軽く笑い返した。
――ヤベェ、全っ然面白くねぇわ。
「じゃあ人善君、後は頼んだよ」
「あ、ハイ」
「そこは『いってらっしゃい』だよ~!」
「……ハイハイ」
最後の声は去っていく御倉課長には聞こえない様にして、いよいよオフィスの扉を開けると何故か空気が重く感じたが、窓を見て納得する。
黒く低い雲が立ち込めていた。
――嫌な予感がする……。
俺は窓から目を逸らす。
――なーんてなっ!
出勤しようとする俺に晩飯は不要かと尋ねてきたので、適当な返事をして自宅を後にした。
会社に着くと、まだドアノブに触れてすらいないのにオフィスの扉がそっと開き、中から上司である御倉課長が顔を出した。
「おはざす」
「わ! おはよう、人善君。驚いた、どこも痛くしなかったかい?」
「痛くしませんでしたよ」
三十歳を目前に控えた御倉課長。実年齢は二十八歳で、俺やコウの五つ年上だ。
仕事においては流石、若くして役職に就くだけあり完璧なのだが、時折こうして言葉の節々に天然さを感じるので敢えて俺はそれに触れるがやはり天然といったところか、全く動じなければ気付きもしない。
何事にも疎い御倉課長だが俺は嫌いじゃないし、寧ろどちらかといえば好きだ。勿論ライクの方で。
「どっか行くんスか?」
「うん、インスタントコーヒーを頼まれたから行ってくるよ。どうもストックが切れたみたいで。……というか人善君『行くんですか』だよ、まったくもう。いつも言ってるじゃないか、君は仕事は出来るんだから言葉遣いさえ気を付ければもっと評価が上がるのに、本当に勿体ない……」
「事務の子、今日休みスか?」
「え? あぁ、そうなんだよ。だから誰かが買いに行かなきゃいけないんだ」
話しを逸らされた事に気付かない御倉課長は困った様に眉を下げてそう言う。
「ふうん。俺、行くっスよ」
「ありがとう。でもいいんだ、こういう事こそ役職が行かなきゃね」
「……どういう意味スか?」
「あぁ、いや……その方が君たちはのびのび出来るだろう?」
冗談ぽく笑った御倉課長に、俺も軽く笑い返した。
――ヤベェ、全っ然面白くねぇわ。
「じゃあ人善君、後は頼んだよ」
「あ、ハイ」
「そこは『いってらっしゃい』だよ~!」
「……ハイハイ」
最後の声は去っていく御倉課長には聞こえない様にして、いよいよオフィスの扉を開けると何故か空気が重く感じたが、窓を見て納得する。
黒く低い雲が立ち込めていた。
――嫌な予感がする……。
俺は窓から目を逸らす。
――なーんてなっ!
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