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第3話

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 私は屋敷を出て、街の宿に泊まり――翌日、馬車に乗ってギアノ国から出ようとしていた。
 最低限の荷物しか持つことができず、お金もそこまで持っていない。

「……隣国の、レオンの住む森に向かえればそれで構いませんか」

 馬車の中で、これからのことを考えた私は呟く。
 私はこれから、森に暮らす青年レオンの元に向かおうとしていた。

■◇■◇■◇■◇■

 レオンと出会ったのは去年のことで――私は1人、屋敷の庭で魔法を試していた。
 常に増え続ける魔力は制御できず、私は魔法を扱うことができない。
 妹サレアは魔法使いとして活躍していたから、私が焦っていた時だった。

「貴方の魔力を利用する者がいる限り、魔法を扱うことはできません」

 そう言って――私の目の前に、美しい顔立ちをした美青年が現れる。
 金色の長い髪に奇麗な蒼い瞳をした美青年で、屋敷に侵入した人だけど怖くはなかった。

「あの、貴方は誰ですか?」

「私はレオンと申します……貴方と似た力を持ち、全てが嫌になって森に住んでいる者です」

 そう言われて、私はレオンの説明に驚くこととなる。
 隣国にある広大な森の奥に住んでいて、私の力に共感して興味を持ったようだ。
 レオンは私の力について話し、私も共感することができている。

「婚約者がいて幸せに暮らしている貴方には、私と同じ末路になって欲しくない……ルリサの力について、知っていることは全て話しましょう」

 レオンの正体は話さないことを約束して、私は自分の力について聞く。
 私の魔力は、全体の1割以上を使ってしまうと増加するようだ。
 今は様々な貴族が大地の魔力を魔法道具で利用しているから、このままだと私の魔力は増加し続けるらしい。

「魔力が増加し続けても暴走したり許容できなくなることはありませんが、危険と考え排除することを提案する者が現れるかもしれません」

 レオンが住んでいた国は、レオンを排除したことで滅びたようだ。
 どうやら私が国外に出ると、ギアノ国の大地に与えてた力が徐々に弱くなっていくらしい。
 数カ月もすれば力を完全に失い、様々な問題が発生するとレオンが話してくれた。

「もし何かありましたら、魔の森に来てください――私が、力になります」

 レオンが住む森は、レオンの力で魔の森と呼ばれる程に広大となっているらしい。
 かなり危険な森のようで、冒険者の人達が探索する場所にもなっていると私は聞いていた。

■◇■◇■◇■◇■

 今の私は魔の森へ向かっていて――今までのことを思い返し、呟いてしまう。

「私が消えたことで実害が出てから、ようやく妄言ではなかったと知るのでしょう」

 元父は私の妄言と考えていたけど、数ヶ月経つと後悔するのは間違いない。
 今まで私の魔力を利用して、十分すぎる利益が出たら危険と言い国外に追い出した。

 その結果――ギアノ国は後悔することとなるけど、自業自得だった。
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