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第44話

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 私は杭を持って倒れているドリアス殿下を眺めて、唖然としていた。

「キャシー様!」

 アルクが心配してくれて、私は頷く。

「私は大丈夫です……あの杭はなんなのでしょうか?」

 凶器だと思うけど、とてつもない魔力を感じ取っている。
 魔法道具の類いだと思うけど、先端を突きつけられるまでは気付けなかった。

 恐らく魔力を込めると作動していたと思うけど、どんな力を持っているのかがわからない。
 この時の私、パーティ会場のほとんどの人達は――倒れているドリアス殿下に注目していた。

 そして侯爵家の貴族が、私の横を歩いている。
 ただ騒動が起きたから集まった野次馬だと、私は考えていた。

 小さな男の子だったのに――いきなり青年の姿になって、私に杭を突きつける。

「――えっ?」

 ドリアス殿下と同じ杭――咄嗟にそう考えたけど、対処することができない。
 私の意識は目の前で抑えられていたドリアス殿下に向いていて、完全に無防備だった。

 小さな男の子――侯爵家の男子で、野次馬だと思い込んでいたこともある。
 完全に虚を突かれた私は対処できず、肩に鋭い杭が刺さろうとしていた。

 そして――

「――なんだと!?」

 謎の青年が叫び声をあげたのは、私に杭が刺さらなかったから。
 魔法道具の杭は――私を庇って、アルクの腕に刺さっていた。
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