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第6話
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数カ月が経って――私は、小犬となったリオウの分身と一緒に新しい生活を送っている。
分身の肉体が本体と離れすぎるとお互いの状態を知ることができなくなるようだから、私達は問題ない距離にいた。
私とリオウは国内の村で、回復魔法使いとして問題なく生活することができている。
最初は宿に泊まっていたけど……周辺のモンスターをリオウが倒して、私が怪我をした人達を回復魔法で治療していると、庭付きの屋敷を村長から貰うことになっていた。
貰った屋敷は私とリオウが住むだけだと大きすぎる気がしたけど、村長はそこまで私達に感謝しているようだ。
屋敷の居間で、私は膝の上に乗っているリオウを撫でながら話す。
「家を出た時はどうなるかと思ったけど、なんとかなったわね」
『そうですね……この村の周囲はモンスターが多かったので、回復魔法使いが必要な場所だと思っていました』
そうリオウが言ったのは、この村に来たのはリオウの提案だからだ。
屋敷を出て私達は国内の好きな場所に行けたから、リオウの行きたい場所に向かっている。
魔界から来たとされる魔力を持った化物「モンスター」に対抗する為、野生動物は魔力を宿すらしい。
その中で稀に膨大な魔力を宿す動物が生まれることがあって、その動物は聖獣と呼ばれる。
この村の近くでリオウは生まれたこともあるけど、回復魔法を使う私のことを考慮してくれている。
「モンスターが多いから私の回復魔法が役立って、リオウがモンスターを倒して村は平和になっているわ」
『はい。周辺のモンスターは、私の敵ではありません」
聖獣リオウはこの国でかなり有名なようだけど、私の膝に乗るリオウは両手で抱えられるほどの小犬だ。
「村の人達はリオウは私が魔法で強化していると思っているみたいだけど、見た目のせいね」
白くもふもふとした毛玉のような小犬で、今のリオウは物凄く愛嬌がある。
戦闘では全身を駆使した体当たりでモンスターを一撃で倒すけど、傍にいる私の力だと村の人達は考えているようだ。
『私は体が小さすぎるので、誰も聖獣だと思うことはなさそうです』
鳴き声も可愛く、リオウの分身体は村の子供達に人気があった。
リオウと話をして、私は気になっていたことを尋ねる。
「そういえば、本体は大丈夫?」
『問題ありません……ラミダ達は様々な手段を使って私を従わせようとしていますけど、全て無視しています』
そう言って――私は、リオウから屋敷にいる本体について聞く。
どうやらラミダ達は、王家や他の貴族達に「今は聖獣の調子が悪い」と言い張って誤魔化しているようだ。
聖獣リオウはファグト男爵家が有名になった理由でもあるから、誰にも懐かなくても追い出したくないらしい。
リオウの発言がわかるのは私だけで……リオウの本体に対する発言から、ラミダ達は未だに聖獣は強いだけの動物だと思っていそう。
高級な食事で懐柔を狙ったけど失敗していて、今では何かに興味を持たないか必死に試しているようだ。
『哀れな連中です……アミリアを捜索する案も出たようですけど、ラミダが却下していました』
「ラミダとしては嘘がバレたくないからね……捜索されたとしても、戻る気はないわ」
元家族がどんな手段をとったとしても、私を追い出したから聖獣リオウが懐くことはない。
このままだとファグト男爵家は没落しそうだけど、家を捨てた私には関係なかった。
分身の肉体が本体と離れすぎるとお互いの状態を知ることができなくなるようだから、私達は問題ない距離にいた。
私とリオウは国内の村で、回復魔法使いとして問題なく生活することができている。
最初は宿に泊まっていたけど……周辺のモンスターをリオウが倒して、私が怪我をした人達を回復魔法で治療していると、庭付きの屋敷を村長から貰うことになっていた。
貰った屋敷は私とリオウが住むだけだと大きすぎる気がしたけど、村長はそこまで私達に感謝しているようだ。
屋敷の居間で、私は膝の上に乗っているリオウを撫でながら話す。
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『そうですね……この村の周囲はモンスターが多かったので、回復魔法使いが必要な場所だと思っていました』
そうリオウが言ったのは、この村に来たのはリオウの提案だからだ。
屋敷を出て私達は国内の好きな場所に行けたから、リオウの行きたい場所に向かっている。
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その中で稀に膨大な魔力を宿す動物が生まれることがあって、その動物は聖獣と呼ばれる。
この村の近くでリオウは生まれたこともあるけど、回復魔法を使う私のことを考慮してくれている。
「モンスターが多いから私の回復魔法が役立って、リオウがモンスターを倒して村は平和になっているわ」
『はい。周辺のモンスターは、私の敵ではありません」
聖獣リオウはこの国でかなり有名なようだけど、私の膝に乗るリオウは両手で抱えられるほどの小犬だ。
「村の人達はリオウは私が魔法で強化していると思っているみたいだけど、見た目のせいね」
白くもふもふとした毛玉のような小犬で、今のリオウは物凄く愛嬌がある。
戦闘では全身を駆使した体当たりでモンスターを一撃で倒すけど、傍にいる私の力だと村の人達は考えているようだ。
『私は体が小さすぎるので、誰も聖獣だと思うことはなさそうです』
鳴き声も可愛く、リオウの分身体は村の子供達に人気があった。
リオウと話をして、私は気になっていたことを尋ねる。
「そういえば、本体は大丈夫?」
『問題ありません……ラミダ達は様々な手段を使って私を従わせようとしていますけど、全て無視しています』
そう言って――私は、リオウから屋敷にいる本体について聞く。
どうやらラミダ達は、王家や他の貴族達に「今は聖獣の調子が悪い」と言い張って誤魔化しているようだ。
聖獣リオウはファグト男爵家が有名になった理由でもあるから、誰にも懐かなくても追い出したくないらしい。
リオウの発言がわかるのは私だけで……リオウの本体に対する発言から、ラミダ達は未だに聖獣は強いだけの動物だと思っていそう。
高級な食事で懐柔を狙ったけど失敗していて、今では何かに興味を持たないか必死に試しているようだ。
『哀れな連中です……アミリアを捜索する案も出たようですけど、ラミダが却下していました』
「ラミダとしては嘘がバレたくないからね……捜索されたとしても、戻る気はないわ」
元家族がどんな手段をとったとしても、私を追い出したから聖獣リオウが懐くことはない。
このままだとファグト男爵家は没落しそうだけど、家を捨てた私には関係なかった。
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