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第54話

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 いきなり私達の前に現れた仮面兵士が、ロランに突進する。
 とてつもない速度に驚くけど、ロランは平然と攻撃を払い蹴り飛ばす。

 魔力を籠めた蹴りによる一撃は、ロランの魔力も相まって必殺の一撃となる。
 この一撃で大半の生物は意識を失ってもおかしくない威力だけど、兵士は吹き飛んだだけだ。

「耐えたか……悪いけど、シエルを抱えよう」

 そう言ってロランが私を抱えて、仮面兵士から距離をとろうとする。
 私を巻き込まない為の判断で、それほど危険だとロランが認識していた。

 そして――ロランの動きが止まり、私は驚いてしまう。

「……えっ?」

「そういうことか」

 ロランはすぐに私を離して、接近してくる仮面兵士の攻撃を受け止めていた。
 
 恐らくロランは高速移動の魔法を使ったけど、それを仮面兵士が封じる。
 封じたことによる硬直の隙を突いた一撃によって、あのロランに攻撃が通っていた。

「どうやらこの敵は飛行を含む移動魔法を封じる魔法。そして扱う魔法を近接の身体強化魔法に特化することで……俺本体を潰す気のようだ」

 ロランは膨大な魔力が宿っていて、回復魔法も極めているから魔力が切れない限りやられることはない。
 それでも物理攻撃を行い回復魔法を使わせることで、他の魔法の威力を弱めいている。

 距離をとられないためか移動魔法だけ封じることに特化して、後は全て身体能力の強化に魔力を回している。

 仮面によって魔力が強化されていることもあって、仮面の兵士はロランと戦うことができていた。

「これは完全に俺と戦うために特化されている……仮面で洗脳することで、俺に対する恐怖も消しているようだ」

 私はロランと仮面兵士から離れながら、2人の戦闘に驚いていた。
 仮面兵士の動きが尋常でなく――ロランが殴り飛ばされてしまう。

「ダメージを受けたのは7年以来だな……拳に込めた魔力で回復魔法も効きづらくしている辺り、マクスウェルが本気で消しに来たようだ」

 私はロランの力になりたいと考えているけど、敵の強さの次元が違う。
 そんな中――ロランは笑みを浮かべて、仮面兵士の拳を受け止めた。

「俺を潰す以外の命令がないのなら、問題ない」

 そう言って――ロランは仮面兵士に魔力を流し、仮面を破壊する。
 
 マクスウェルが対ロラン用に準備していた仮面兵士でも、戦闘になったのは数秒程度だった。
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