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第25話

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バルター視点

 夜になって、俺は部屋で1人頭を抱えるしかない。

「ロランは相当怒っているに違いない……ダリアどころか婚約者の俺に、クースラ家に矛先が向いてもおかしくないだろう」

 一番悪いのは、明らかにダリアだ。
 ロランが仮面を外してくれたとシエルが言った時点で納得していれば、こんな目に合っていないはず。

 それなのにプライドが高く、ロランがシエルに協力するわけがないと考えていた。
 勝手にロランがそんなことをするわけがないと決めつけ……ロランは全て聞いていた。

「不快になって当然だ。まさか俺の新たな婚約者が、あそこまで愚かだとはな……」

 貴族なら誰もが、ロランの凄さと活躍を知っている。
 この国が平和なのは間違いなくロランの力によるものだ。

 学園に入る際、俺は両親から「ロラン様を不快にさせるな」と言われていた。
 学年が違うし会うこともないはずと考えていたのに、こんなことになるとは思っていない。

「ダリアに謝罪させるしか……いや、謝罪をしてもロランが許すとは思えない」

 ロランのダリアに対しての発言を聞く限り、謝罪はシエルに行わなければならない。
 ダリアはシエルに対しては絶対に謝らず――俺も元婚約者、それも伯爵令嬢という下の立場であるシエルに頭を下げたくはない。

 そこまで考えて――俺は閃く。

「そうだ……原因はシエルにあるのだから、俺がシエルに命令をすればいいだけだ!」

 シエルは俺の命令を常に聞いていたから、今回も命令すればいい。
 そうすればロランも納得するに違いないと、この時の俺は考えていた。

 シエルに謝りたくないと考えて、それなら今までと同じように命令すればいいと閃いてしまう。

 その結果――最悪の事態になることを、この時の俺は想像していなかった。
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