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第22話

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バルター視点

 昼休み――新しく婚約者になったダリアが、俺の教室にやって来る。

 やけに慌てた様子でも冷静でいられたのは、学園内の噂で理由を知っているからだ。

 ――元婚約者のシエルが、仮面を外した。
 
 禍々しい仮面のせいで誰も凝視していなかったが、俺は仮面を着ける前のシエルを知っている。
 
 あの時のシエルは可愛く、仮面を着けていたとはいえ半分は見えていた。
 とてつもない美貌なのは推測できて、ダリアは焦っているのだろう。

「仮面を外れたシエルが美しくとも、魔力は並……侯爵家のダリアに敵うわけがないだろう」

 俺は思わず呟き、ダリアが正面までやって来る。
 息を切らして喋れない様子だから、先に安心させることにしていた。

「ダリア。君が焦っている理由は知っている……シエルを婚約破棄した時、俺が君に話したことを思い出せ」

 シエルの魔力を知らないのなら、きっと俺の話を忘れているのだと考えていた。

 もしシエルが仮面を外したのなら、それは魔法学園の宝物庫に忍び込んだに違いない。
 魔法道具を破壊した魔法道具を調べるよう申請すれば、シエルが使った証拠が出るだろう。

「シエルの仮面が外れているのは耳にした。今から宝物庫の調査を頼みに行こう」

 そう言えばダリアは安堵するし、シエルは犯罪者として学園を追い出される。
 元婚約者の存在は目障りだから、家ごと消してしまえばいい……計画通りだ。

 そう考えていたのに――ダリアが、俺に対して叫ぶ。

「バルター様、貴方のせいで私は破滅するかもしれません! どうしてくれるのですか!?」

「……なに?」

 この時の俺は、シエルがロランと関わっていることは知らなかった。
 そしてダリアから話を聞き――最悪の事態になっていると、焦るしかなかった。
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