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第2話

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 パーティが終わって私は屋敷に戻り、部屋でお父様とお母様に今日の出来事を報告する。
 
「そうか……バルターは最低だな。婚約破棄は仕方ない。むしろ奴との関係が切れて清々する」

 お父様がバルターに怒り、婚約破棄は仕方ないと言ってくれる。

 私の家族は、仮面をつけている私でも愛してくれた。
 バルターに報復したいけど……家族に迷惑がかからないことが前提だ。

「シエルの魔法は十分凄いのだから、明日から学園には行かなくてもいいんですよ」

 明日からの魔法学園での日々を不安に思っているようで、お母様が心配しながら提案する。
 お父様も賛同して、私を眺めて話す。

「そうだな……特にダリアは、間違いなくシエルに関わってくるだろう」

 ダリアは侯爵家の令嬢で、バルターの新しい婚約者だ。
 明らかに私を敵視していて、学園で暴言を何度か吐かれたことがある。

 発言からダリアがバルターに好意を持っていたことは知っていたけど……新しく婚約者にするとは、思っていなかった。

 明日から新学期がはじまる魔法学園でダリアが私に暴言を吐いてくることを、お父様とお母様が心配してくれる。
 確かに行きたくないと思ってしまうけど、私は学園に行かなくてはならない理由があった。
 
「大丈夫です。今まではバルターのせいで諦めていましたけど、この仮面を外す方法を調べようと思っています」

 私は顔が半分隠れている仮面に触れて、明日から魔法学園に行く理由を話す。
 魔法学園は設備が充実していて……調べれば、この仮面の外し方が判明するかもしれない。

 この仮面を外そうと考えたことは何度もあるけど、調査することは禁止されていた。
 今までバルターが「魔法の実力が元に戻るかもしれないから、仮面を外そうとするな!」と、私に命令していたからだ。

 バルターは私の魔法の凄さを知っていて、力を手放したくなかったから外すための調査を禁止してくる。
 魔法学園で仮面の見た目からくる悪評を知り実力を隠させながら、私の力は手元に置いておきたかったようだ。

 それでも私が周囲の生徒達に蔑まれている姿を何度も見て、バルターは限界がきたのかもしれない。
 婚約破棄を受けたのだから、もう仮面を外しても問題ないに決まっている。

「そうだな。バルターの奴が婚約者として役に立てとシエルに命令してきたが、もう守る必要はない……私も調べておこう」

「お願いします。私も、学園で仮面の調査をいたします」

 お父様は私の仮面を外したい一心でそう言ってくれているけど、私は少し違う。

 ――仮面を外した私の魔法が凄ければ、バルターは後悔するに違いない。
 
 バルターは仮面を外すと魔法の力が弱まると言っていたけど、その時は必死に学ぶだけだ。
 これは真っ先に思いついた最初の報復で、とにかく私は仮面を外すことを決意する。

 そして翌日――私は学園で、仮面を外すことができていた。
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