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第2話

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 私が家を出ると宣言すると、父は動揺していた。
 完全に予想外だったようで、取り乱しながら叫ぶ。

「シンディ! 家を出るとはどういう意味だ!?」

「そのままの意味です。これ以上、デーリカの面倒を見たくありません」

「なっっ……それは……」

 私の発言を聞き、父は困惑していた。
 引き留めたい様子で、説得できないかと明らかに悩んでいる。
 そんな姿を眺めながら、立場的にこの場で一番偉いオリドスが話す。

「何も気にすることはないだろう。むしろ、婚約者を変える際の理由が作りやすくなるというものだ」

「オリドス様の言う通りです! お姉様、いいえシンディが家を捨てたことにすれば、私は問題なくオリドス様の婚約者となれます!」

 家を出ると宣言したことで、妹デーリカは私を敬わなくていいと考えたようだ。
 私は今後を考えて、ここで暮らすより平民になった方がいいと確信して行動している。
 それに比べて……オリドスとデーリカは、今後のことを何も考えていなかった。

「ぐうっっ……確かにそうですが、シンディがいなくなるとどうなるか――」

 父はオリドスの発言を否定できず、苦そうな表情を浮かべている。
 私としては即座に屋敷から出て行きたいけど、オリドスには言いたいことがあった。

「――オリドス様は、デーリカのことが好きですか?」

「当然だ。シンディは何を言っている?」

 私の質問に、オリドスは困惑しながら返答した。
 これからも同じ返答ができるのだろうか考えるけど、無理に決まっている。
 ルザード伯爵家を捨てるから私には何も関係なくなるけど、これからの末路は気になっていた。

「この質問の意味は、これからわかります――それでは、失礼します」

 オリドス達の末路は、屋敷を出た後でも知ることができる。
 とにかく今は平民となって、部屋から出て行こう。

「ま、待てシンディ! 話し合おう!!」

 部屋を出ようとした私を、元父が取り乱しながら引き留めようとしている。
 強引に引き留められないのは、魔法の実力で差がありすぎるからだ。

 この場にいる全員が束になっても、私には敵わない。
 私が家を出ても問題ない程の力を持っていると知っているからこそ、この場で元父は引き留めようとしている。
 それでも私は、もうルザード伯爵家にいたくなかった。

「話すことは何もありません――さようなら」

 私は断言して、屋敷から出て行く。

 これでもう、デーリカの面倒を見なくて済む。
 とてつもない解放感があって、私は新生活を送ろうとしていた。
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