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第9話

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ラウド視点

 時間は、キャシーとの婚約破棄が決まる前まで遡る。

「お前よりクノレラの方が好きだから、俺との婚約を破棄してくれ」

 俺は婚約者キャシーを城に呼び出し、部屋に入ってすぐ婚約破棄を言い渡す。
 キャシーに一目惚れした俺は、去年王子の立場を使い強引に婚約する。
 そして――今ではクノレラの方が魅力的だと、俺は確信していた。

「……半年前のことが、原因なのでしょうか?」

「あの時のキャシーは運がよかっただけだと、今までのことからわかっているが……きっかけでは、あったのかもしれんな」

 キャシーの発言を聞き、俺はは半年前の出来事を思い返す。

 学園に現れた狂暴な魔物を、キャシーが抑える。
 キャシーの実力で抑えることができたのなら、俺だって抑えることができただろう。

 表彰されるのは、キャシーではなく俺であるべきだった。
 そう考えた時――俺は、傍にいたクノレラに惹かれるようになる。

「この俺に意見するのも気に入らなかった――やはり俺は、お前よりクノレラの方が好きだ!」

 クノレラは授業では初級魔法の失敗をしていて、キャシーより失敗する回数が多い。
 それなのに俺は、なぜかクノレラに惹かれていく。
 そして俺は、キャシーとの婚約を破棄したかった。

「そうですか……わかりました。この件はお父様に報告いたします」

「ふん。どうして俺はお前なんかに惚れたのだろうな……去年の俺が理解できん」

 俺としてはキャシーに婚約破棄を言い渡して欲しかったが、聞く気はないようだ。
 婚約破棄の後はお互い関わらない誓約書を用意させて、俺はクノレラを婚約者にしようと決意していた。

 そして――俺は、婚約破棄したことを後悔することとなる。
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