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第10話

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 翌日、私は馬車に乗ってプラントモンスターの調査を行おうとしていた。
 ゼロア様と執事ワンドも同行すると言っているけど……馬車の中で、私は2人に呟く。

「あの、調査は私が勝手に行おうとしているだけで、成功するかもわかりません」

 敵は新種のモンスターで、冒険者ギルドが調査しても不明のままだった。
 恐らく長い期間調べなければいけないし、対処できるかもわからない。

 それなのに……ゼロア様が、執事ワンドを同行してくれる。
 嬉しいけど失敗した場合が不安になると、ゼロア様が微笑む。

「私は領主として、シーラ様と一緒に行動すべきだと考えただけです」

「今までの被害場所から、今後現れる場所の推測は一応できています……シーラ様が動かなくても、ゼロア様は領民のため推測地点に向かっていました」

 ワンドから被害の出た場所、それによる今後の推測場所は聞いている。
 位置と時間は少しズレるみたいで被害は出てしまうようだけど、ゼロア様は力になるため今まで向かっていたらしい。

 そして――私が調査のために向かっていた場所と同じだから、ゼロア様とワンドは同行したようだ。
 危険だと言っていたのに、ゼロア様は自分が危険な目に合ってでも領民達を守るため行動している。

「プラントモンスターは地面から鋭利で長いツタを出して生物を仕留め、大地に引きずり取り込もうとします」

 ワンドの説明を聞いて、私は頷き返答する。

「攻撃を受けて負傷すると本体はツタを切り離すから、本体の詳細は今までわからないということですね」

「そうなります。ツタの場所さえわかれば、人を襲う前に対処できるかもしれません」

 プラントモンスターの被害は年月が経つ度に増えているようで……成長しているのは間違いないらしい。
 それでもモンスターである以上どこかに核となる本体がいるはずで、その核さえ破壊すれば討伐できるはずだ。

■◇■◇■◇■◇■

 目的地に到着して――私は、大地に宿る魔力の流れを調べていた。
 
「魔力の流れを調べるのは高位の魔法ですけど……シーラ様は扱えるのですね」

 興味深そうに尋ねるワンド様に対して、私は頷く。

「はい。何か異常事態が起きた時、原因を知る為に必要だと考えていました」

 この魔法は、プラントモンスターによる異常事態を対処するため役立っていた。
 そして大地の魔力を調べていくと……地面の奥にツタの魔力を感じて、私は呟く。

「ワンドが教えてくれた被害場所と周期による推測は合っています……プラントモンスターのツタがこの大地の下に存在して、数日すれば近くの村を襲撃します」

 周辺には幾つか村があって、どの村を襲うかがわからないから……推測止まりのようだ。
 1つ提案したいことがあった私は、ゼロア様とワンドに話す。

「これから私が魔力によってツタを動かし、この場で戦おうと思っています」

 この場でツタを対処すれば、この周辺の村は被害を受けない。
 そして私がツタに干渉することで……本体の位置が、わかるかもしれない。

 そう考えた私は、ゼロア様に提案していた。
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