妹の方がいいと婚約破棄を受けた私は、辺境伯と婚約しました

天宮有

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第1話

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「お前の妹ソフィーの方がいいから、今日でお前との婚約は破棄する」

 ジャカル侯爵家のレヴォク様が、いきなりそんなことを私シーラ・ホトルクスに言い出す。
 レヴォク様の屋敷に呼び出されたかと思えば、応接室で婚約破棄を宣言されていた。

 レヴォク様の隣には妹のソフィーがいて、私を呼ぶ前に来ていたようだ。
 ソフィーは婚約破棄を言い渡された私を眺めながら、楽しそうな表情を浮かべて話す。

「心配性なお姉様は備えるために様々な魔法を覚えていました。何かを企んでいてもおかしくありません」

 ソフィーは怯えているフリをしながら言い出すけど、私は覚えることができたから様々な魔法を覚えただけだ。

 私は魔法学園では主席の成績で、ソフィーの成績はかなり悪い。
 そして……レヴォク様の成績は中の上程度で、私と比べられるのが嫌だったのかもしれない。

 自分より下のソフィーを新たな婚約者にした方が、周囲の評判を落とさないとレヴォク様は考えたのでしょう。
 ソフィーと2人で話し合ったのか、私が悪いことにしたいようだ。

「お前の家族の承諾も得ている……覚えなくてもいいのに、危険な魔法を覚えすぎた末路だ!」

 お父様とお母様は、妹のソフィーを溺愛していた。
 見た目は身長以外あまり変わらないけど……お父様とお母様としては、小柄なソフィーの方が好きらしい。

 そんなことよりも……私としては、レヴォク様の発言に苛立ってしまう。
 この世界は何が起こってもおかしくないのに、備えたことが悪いことだと言わんばかりだ。

「何が起こってもおかしくないのですから、備えるのは間違いではないはずです」

「今は平和なのにか? そんなのは問題が起きてからでも間に合う……お前とは合わないんだよ!」

 呆れ果てた様子でレヴォク様が告げて、私も合わないと考えていた。
 婚約破棄できるのなら、それで構わない。

「そうですか……わかりました」

「お姉様は何も心配いりません。私がレヴォク様の新しい婚約者になるのですから」

 ソフィーがレヴォク様に抱きつき、勝ち誇りながら話す。
 レヴォク様も婚約者を私の妹に変えることができたことに、嬉しくなっている様子だ。

 こうして私は、レヴォク様から婚約破棄を言い渡されてしまう。
 その後――私は辺境伯ゼロア様との婚約が決まり、ホトルクス家を出ることとなる。

 この時はまだ、私の方が間違っていたのかもしれない。
 数ヶ月後――私の方が正しかったことが証明されて、私の家族、そしてレヴォク様は後悔することとなっていた。
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